二人から長々と説教を受けて、本気で泣きたくなりました。

 なんで、俺は二人にこんなにも怒られているんでしょうか?

 いや、だって俺は間違った事言ってないよね?
 あそこで、長々と話をする方が大変だと思ったからそう言っただけなのに……

 すっごく理不尽だったんだけど、それを言うとまた怒られると思ったから、素直に二人の説教聞きました。

 どうして、こんなにも怒られているのか、最後まで納得できなかったんだけど






「で、ズーズーしくそこでが入れたコーヒー飲んでる君は、何のつもりで寛いでいる訳?」

 一通り説教し終わって満足したのだろうツナが、さらに不機嫌そうにリボーンさんに質問。

 えっと、何を飲むのか聞いたら『コーヒー』って言われたので素直に準備しました。
 けど、こんな子供相手にコーヒーを飲ましても大丈夫なのかとちょっとだけ心配なんだけど……

 カフェインは成長期の子供にはあんまり宜しくないって、聞いた事があるようなないような…うん、兎に角、あんまりよくない様な気がするんだよね!

「お前の入れたコーヒーは旨いぞ」

 俺の心配を他所に、リボーンさんが俺の入れたコーヒーを飲んで、誉めてくれる。

 えっと、さり気にツナの質問は無視なんですか、リボーンさん?

「えっと、有難う?」

 う〜ん、思わずお礼言っちゃったんだけど、ツナの機嫌がますます悪くなっていくんですよ、マジで!

 今も、リボーンさんの事を射殺す位睨んでます。
 ええ、本気で視線で人が殺せそうなぐらい……。

!なんでそこで御礼なんて言ってるの?!」

 そして、またしてもツナさんに怒られちゃいました。

 なんでって言われたら、何となくとしか返せないんですが……
 そう言ったら、また怒られそうだから、何も言わずに困ったようにツナを見たら、ため息をつかれちゃいました。

「兎に角、はそいつに近付かないで!ここに座ってて」

 ため息をついてから、ツナはお盆を持ってリボーンさんの傍に居た俺の腕を取ると、リボーンさんから一番離れた椅子へと座らされる。
 アレよと言う間だったので、一瞬何が起きたのか分からずに、ポカンとしてツナを見れば、既に俺とリボーンの間に座ってるし……何時の間に……。

 とり合えず、それでツナが満足するならいいかと、俺は持っていたお盆をテーブルに置いてその上に乗せてあったカップを両手で持ち、中のそれを一口飲んだ。

 ちなみに、俺のカップの中身はミルクティです!
 だって、俺はコーヒー飲めないからね!!
 後、ツナにもちゃんとコーヒーを入れて渡した。
 ツナのコーヒーは砂糖無しでミルク入り。ブラックは体に悪いから、俺がツナに入れるコーヒーは大抵コレ。

 ああ、やっぱりリボーンさんのにも、問答無用でミルクを入れた方が良かったかも・……。
 ブラックは、確か胃に負担が掛かるんじゃなかったかな?今、思い出したんだけど

「で、家庭教師さん、何度も言うけどウチには必要無いから帰ってくれない」

 コーヒーについて真剣に考えていた俺の耳に、トゲトゲしい口調で、ツナがリーボンさんを睨みながら、もう何度も聞いている台詞を口にする。

 それで、漸く意識を目の前の状況へと戻す事が出来た。
 ああ、ツナが知ったら、また怒られるんだろうなぁ……なんて、思いながら、もう一口ミルクティを飲む。

「オレも何度も言っているぞ。お前等には必要だってな。しつけー男はモテねぇんだぞ」

 でも、そんなツナの態度にも全く気にした様子を見せないで、リボーンさんは優雅にコーヒーを飲む。

 えっと、やっぱり言ってる事は、さっきから堂々巡りだと思うのは、俺だけだろうか?
 何時になったら、この不毛とも言える話が終るのか、俺には全然検討もつかない。

「あいにく、モテたいなんて願望はないから、ご心配なく」

 からかうように言われたリボーンさんの言葉に、興味がないと言うように返すツナのその言葉に思わず複雑な表情を浮かべてしまった。

 だって、ツナが女の子達から人気がある事を知っているから……。

 毎日ラブレターだって貰ってるし、呼び出しなんて日常茶飯事。
 でも、それなのにツナは誰とも付き合おうとはしないのだ。
 それはつまり、ツナには好きな人が居るって事なんだと思う。

 だって、ツナに振られた女の子達の話は噂に疎い俺でもちゃんと知っている。
 ツナが告白して来た女の子達に言う言葉は何時も同じ。

 自分には、好きな子が居るからと言うその言葉。

 俺には好きな女の子なんて居なくて、今でも俺の一番好きな相手はツナだけなのに……
 でも、ツナは俺以外の誰か好きな人が居る訳で……。

 だとしたら、その相手から告白されたらツナはやっぱり断らずに付き合う事になるんだよね。
 そうしたら、ツナには俺よりも大切な人が出来る訳で……当然、恋人と一緒に居るのが普通になる。
 そうなったら、一緒に居られる時間は少なくなってしまうんだよね。

 って、そんな当たり前の事なのに、何で俺は泣きそうになってるんだよ!

「そうだろうな、好きなヤツが隣に居てくれりゃそれでいいんだろう……」

 自分の考えた事に泣きそうになっていた俺は、リボーンさんが何かを言ったその言葉を聞き逃して、首を傾げた。
 えっと、なんて言ったんだろう?

「その通りだよ……ふーん、どうやら読心術まで使えるみたいだね……また厄介な」
「まぁ、俺の特技の一つだかんな」

 意味が分からずに首を傾げた俺に、ツナがギロリとリボーンさんを睨み付ける。

 って、読心術使えるの?!
 本当に普通の子供じゃないんだ、リボーンさんって……。

「おい、お前!オレにさん付けしなくてもいいぞ、普通に呼べ」

 感心したように頷いていた俺に、リボーンさんが声を掛けてくる。

 言われた意味が分からないんだけど、えっと、さん付けするなって……俺、心の中でしか名前呼んでないんだけど……。

 いや、確かにツナが読心術使えるとか言っていたのは聞こえてたんだけど、えっ、それってずっと俺の心読まれてた訳??
 そ、それはそれで、恥ずかしいんだけど!

「心配すんな、ずっと読んでる訳じゃねぇぞ。今は、お前等の様子を正確に観察しているだけだ」

 って、また読まれた……
 いや、うん、読まれるのは別にいいんだけど、それに返事を返されると恥ずかしいんです。
 俺の一人突っ込みも、聞かれてる訳なんだよね……。

 自然と顔が赤くなるのが自分でも分かって、慌てて自分の顔を両手で隠す。
 それに意味がある訳じゃないんだけど、何となくこれ以上読まれないようにする為の行動だけど、本気で意味ないんだろうなぁ。

で遊ばないでくれる。それよりも、さっさと本題に入ってくれると有り難いんだけど」

 そんな俺を、リボーンさん改めリボーンから見えないように体を前に乗り出したツナが口を開く。

 えっと、本題って……リボーンがここに来た理由って事だよね?
 それって、俺達の家庭教師をする為なんじゃないの?

「話が早くて助かるぞ。オレの本当の仕事は、お前等をマフィアのボスにすることだ」

 一人意味の分からない俺を無視して、ツナの質問にリボーンがニヤリと子供らしからぬ笑みを浮かべて口を開く。

 えっ?何、マフィア?ボス??
 俺等って、俺とツナをマフィアのボスにするのが、リボーンの仕事な訳??

 いや、それ、マジで有り得ないんですけど……
 だって、ツナの夢は、医者になる事だし、俺はボスになれるような器じゃない。
 それに何よりも、俺は抗争に巻き込まれたりしたら、一番先に死んじゃう自信がありますから!

「そんな事だと思ったけど、興味ないから帰ってくれる」

 リボーンの言葉に頭の中で否定していたら、ツナが爽やかな笑顔でキッパリと拒絶した。

 うん、そうだよね。
 だって、ツナの夢は医者になる事だし、愛読書は医学書だもん。

「お前等に拒否権はねぇぞ。オレはある男からお前等を立派なマフィアのボスに教育するよう依頼されてんだ」
「んじゃ、その男に言っといてくれる。オレももマフィアのボスになるつもりはないから」

 俺が口を挟む間もなく、ツナとリボーンの間で睨み合いが始まってしまう。

 えっと、何かツナにはリボーンが言ってる事が分かってるみたいなんだけど、俺には何が何だかさっぱり分からないんですけど……。
 俺に分かっているのは、リボーンが誰かに言われて、俺とツナをマフィアのボスにする為にここに来たと言う事だけ。

「言ったはずだ、お前等に拒否権はねぇぞ。お前が嫌なら、弟だけでも連れていく。ボスは一人でも問題ねーからな」

「俺?」

 突然矛先が自分に向けられて、思わず首を傾げる。
 確かに、ボスなんて立場なら二人も要らないんだろうけど、俺がボスになったら抗争に巻き込まれて一番最初に死ぬ自信があるから、無理です。
 いや、自慢にはならないけど、断言出来る、本気で!簡単に死んじゃうから!!

を連れて行くと言うのなら、赤ん坊でも容赦しないからね」

 ガタンと椅子から立ち上がり、ツナがリボーンに向けて本気で殺気を放つ。
 ツナの本気の殺気は正直言って、恐いって言うか寒いって言うのか、かなり勘弁してもらいたい。
 既に、部屋の温度が一気に下がったように思うのは、俺の気の所為じゃないだろう。

 でも、そろそろ一人置き去り状態の俺にも分かるように説明してくれると非常に有り難いんですけど……。

「……えっと、でも、俺はなんて言うか、まだ状況が全く見えてないから、説明してくれると嬉しいんだけど……」
は知らなくてもいい事だよ!」

 どうしたものかと、口を開いた俺に、ツナがそれを赦さないと言うように返してくる。
 でも、リボーンは俺等だと言っているのだ。
 だったら、俺にも関係ない事じゃない。
 それどころか、俺を連れて行くと言っているのだから、当事者になってしまう訳だ。
 何も知らずに行き成り連れて行かれるのも、どうかと思うから、説明して欲しいと思うのは決して間違いじゃないだろう。

「でも、リボーンは、俺にも関係あるみたいに……」
「そうだぞ。お前にも関係してる事だ。なんなら、オレが説明……」
「説明する必要はないよ!お前がここから出て行ってくれれば、全て問題なくなる事なんだからな」

 俺の言葉にリボーンが口を開いたのを、ツナが最後まで言わせずに遮ってしまう。

 えっと、堂々巡りなんですが……。
 ツナは、俺には知られたくない。
 リボーンは説明してくれる気があるみたいなんだけど、それをツナが許してくれない。
 このままだと、全く話が進まないんですけど……。

「ただいま」

 どうしたものかと考えている中、突然聞えて来た声に顔を上げる。
 ああ、母さんが買い物から戻ってきたんだと思ってチラリと時計を見れば、確かに戻って来ても可笑しくない時間が過ぎていた。

「お帰り」

 どうしようかと考えたけど、荷物を持っているだろう母さんの手伝いの為に、俺は慌てて立ち上がり、自分では精一杯のスピードで玄関へと向う。

 その時に、ツナとリボーンをその場に置き去りにしてきたのは、その空気に堪えられなくなっていたのも理由の一つ。

「ただいま、ちゃん。そう言えば、お客様いらしゃらなかった?」

 玄関に顔を出せば、凄い荷物を持った母さんが、俺に質問してくる。

「お客?」

 えっと、家庭教師なら一人来てるんですけど……。
 お客と言えば、お客様だよね?
 でも、母さんが、リボーンの事を知っているとは思えない。

「えっと、誰か来るの?」
「ええ、手紙を貰ってたんだけど、それにね、イタリアから男の子が来るから面倒見てやって欲しいって……それが、今日だったのを思い出しちゃったのよ」

 えっと、母さん、その手紙は一体誰から貰ったんですか?
 イタリア・男の子と言う単語から俺は連想された相手を思い出して、ため息をついてしまう。

 ああ、ツナが怒っていた理由が、何となく理解出来てしまった。

 母さんに手紙を出した相手は、ツナが何故か毛嫌いしている俺達の父親……。

「多分、来てると思う……」

 今、その相手は、綱吉さんと睨み合ってます。とは言えずに、俺はもう一度深いため息をついた。