と組めるのは、本当に嬉しいと思えるんだけど、説明された内容に複雑な気持ちを隠せない。

 もし、じーちゃんが俺とシカマル意外の奴をの手伝いに選んでいたら、そう考えただけでもぞっとする。

 勿論、俺やシカマルでもそれは同じだ。
 神と呼ばれる存在に、自分達が一体どれだけ役に立てると言うのだろうか……。

「だから、俺達のような能力を持っていない誰かの力を借りたい。忍術が何処まで通じるかも分からない。だけど、流石に俺一人だと何にも出来ねぇからな……心配しなくっても、二人には何の危険もないように頑張る…」
「そう言う意味じゃねぇだろう!!何バカな事言ってんだ!誰も俺達の心配なんてしちゃいねぇつーの!」
「そうだ!」

 複雑な気持ちのままの言葉をただ黙って聞いていた俺とシカマルは、言われたその言葉を遮って口を開いた。

 どうして、はそんな事が言えるんだろうか。
 俺達の気持ちを誰よりも分かってくれるのに、どうして肝心な事は全く分かってくれないんだろう。

「俺達の事なんて気にしなくっても大丈夫。そんなに軟には出来てない。何処まで役に立つのか分からないけど、出来るだけ足手纏いにはならないようにするから、だから、は俺達の事は心配しなくっても大丈夫だ」
「……ナルト…」
「力が半分しか使えねぇつーのに、何他人の心配してやがる!その為に火影様は、俺達を呼んだんだろうが!!」
「…シカマル……ごめん、そうだったな。うん、その為に三代目は、お前達を呼んでくれたんだよな……」

 ハッキリと言った俺達のその言葉に、が漸く笑顔を見せてくれる。

 の事だから、本気で誰も傷付く事無く自分の身も省みずに相手を助けるだろうと分かる。
 だから、じーちゃんは、俺とシカマルを呼んでくれたのだ。そう、例え『夜』を怒らせないための予防策だとしても……。

「それじゃ、志も一新ってことで、敵の本拠地に乗り込みますか」
「って、おい!何の作戦もねぇのかよ!!」

 そして、あっさりと言われたの言葉にシカマルが慌てたように口を開いた。

 そう言えば、が足を止めた場所って、確かに俺がこの前を迎えに来たその場所。
 確かあの時って、何もない空間から突然が現れて驚いた。そう、ボロボロの姿で……。

「う〜ん、作戦つーても、下手な作戦は相手に読まれちまうからなぁ……仮にも相手は神だし…俺は大丈夫だろうけど、ナルトとシカマルの考えは完全に読まれると思うぞ」

 あの時の事を思い出して、ぞっとする。
 もしも、後少しでも俺が来るのが遅かったら、はどうなっていたんだろう……。

 考えに浸っていた俺の耳に、が腕組みして考えるような仕草を見せながら説明した内容に、俺ははっとして意識を戻した。

「はぁ?!んだよ、それは!!」
「いや、だから、相手は一応神と呼ばれる存在だからな。人の心を読むのなんて息をするのと同じなんだよ」

 サラリと言われた内容に、俺とシカマルは、複雑な表情でお互いの顔を見合わせる。

 自分達の考えが読まれると言う事は、全て無意識に動かなければならないと言う事。シ、シカマルには、かなり難しいんじゃ……。
 こいつって、先に全部考えてから行動してるからなぁ……。

 本気で、俺達で大丈夫なんだろうか??

「後、あいつの能力は、『風』。風神の力は、風の刃が全般だ。カマイタチには十分に気をつけろよ。下手すりゃ体が真っ二つになる」

 またしてもサラリと言われた言葉に、俺は呆然としてしまった。

 いや、それってサラリと言う事じゃないと思うんだけど……。
 多分、シカマルも同じように思ったのだろう、複雑な表情を見せている。

「……で、俺達は、どうやって手助けすりゃいいんだ?」

 そして、精一杯の言葉は、シカマルの口から発せられた。
 確かに、今の状態では完全に俺とシカマルはにとって足手纏いでしかない。

「……忍術にある物理攻撃を受け付けない結界を張ってもらいたいんだ」
「結界?それだけで、攻撃受けないのか?」

 シカマルの質問に、一瞬が考えるような表情をして口に出された言葉に、俺は意外だというように聞き返した。

 物理的な攻撃を受けないと言う結界は、色々ある。
 まぁ、それが大半と言っても間違いないないだろう。
 後は、声や姿を消す事の出来るモノや、忍術のみを受けないようにするモノなど、色々な結界の種類があるのは本当だ。
 だけど、それが神を相手に通じるのかと言われれば、正直言って自分には分からない。

「大丈夫。実は、忍術と呪術って似て異なるモノだ。結局は、人のオーラーってヤツが力の源だからな」
「オーラー??」
「俺の力はそのオーラー…う〜ん、気ってヤツを使う。それは、忍術にとってチャクラと同じ力なんだ」

 説明してくれるの言葉を、俺とシカマルはただ静かに聞く。

「気って言うのは、根本的には生命エネルギーと呼ばれるモノ。だからなのか、神や妖にも十分対応できる能力を持っている」
「まぁ、言っちまえばチャクラも生命エネルギーには違いねぇわな」

 から説明された事に、納得してシカマルが頷く。
 確かに、チャクラも自分達にとっては生命エネルギー。だから、使い過ぎてしまえば命を落とすことになってしまうのだ。

「だから、四代目の術によって九尾を封印する事も出来たんだよ」

 そして、例として上げられたその内容に、俺も納得する事しか出来ない。
 そうだよなぁ、九尾も神に近い存在なんだから、術が効かなきゃ俺の中に封印するなんて出来なかったと言う事。

「それ聞いたら、何とかできるかもって思えてきた……」

 説明に、思わずホッと胸を撫で下ろす。
 自分達の力が効力を持つのなら、何とか足手纏いにはならなくってすみそうだ。

「良かった。俺も、何時もの半分しか力出せないから、下手な攻撃は一切出来ない。だから、二人が張ってくれた結界の中で暫く温存させてもらう事になる……本当は、あいつの名前が分かれば何とかなるとは思うんだけど……」

 ホッとした俺に同じように安心したようにが笑顔を見せる。
 だけど、続けて言われたその言葉に、一瞬俺とシカマルは全ての動きを止めた。

「ちょっと待て!何だ、その最後の言葉は!!」

 ポツリと言われた言葉を聞き逃す事無く、俺よりも先にシカマルが声を上げる。

「な、なんだ?」

 突然のシカマルの態度に驚いたようにが聞き返す。

「名前が分かりゃ何とかなるって、どう言う事だ!」

 聞き捨てならないと言うように再度シカマルが質問。

「えっ、あれ?説明しなかったか??『荒神』にしてもそうだけど、力を持っている妖や神と呼ばれる者達は、名前が分かればその力を無効化出来る。だから、結界内に居ても、俺も十分な力を遣えるって……説明してなかったな……」

 シカマルの質問に答えながら、俺達の表情を読み取ってが苦笑を零した。

「なら、ちゃんと前準備して、名前を知ってから行動すりゃいいじゃねぇかよ!」

 の説明を聞いて、シカマルがもっともな事を言う。
 うん、俺も同意見だから、思わず隣で頷いてしまった。

「……そう出来ればいいんだけど、ここは木の葉の里に近い場所。前々からこの場所では神隠しの噂があったのは、シカマルが調べてくれたよな。……昨日、また被害者が出た。一族としては、知っている以上被害者が出た時点で、動かなきゃいけないんだ……例え何も準備出来ていなくっても……それに、昨日だけじゃなく、その前に幾つもの被害があったのは事実……面倒な事に巻き込んじまってごめんな……」

 申し訳なさそうに謝罪するに、俺もシカマルも何も言えなかった。
 それが、の仕事だと言われてしまえば、自分達には何も言えない。

「悪かったな、事情も知らねぇで、余計な事言っちまって……」

 シカマルも、素直に謝罪する事しか出来ないのだろう。
 素直に謝ったシカマルに、はただ困ったように笑みを見せた。
 その笑みは暗闇の中でも、浮かび上がるように見える。

「…作戦って言う訳じゃないんだけど、ナルトは今『夜』に呪術を習ってるんだろう?」

 そんなの笑みに見惚れていた俺の耳に、質問が投げ掛けられハッと我に返る。

 確かに初めてと任務を共にしたあの時から、少しずつではあるけど呪術について教わっているのは事実。
 忍術と違っているけど、何処か共通点のある呪術を勉強するのは、最近俺の楽しみの一つだ。

「……少しだけだけど…」
「『夜』が言ってた。出来た生徒だって……だったら一つだけ試したい術があるんだけど……俺が使えれば簡単なんだけど、今の俺は余計な力は使えない。だから俺の代わりに、ナルトが術を組んでみないか?」

 言われた言葉が一瞬理解出来ず、思わずをマジマジと見詰めてしまう。

 えっ、何か、俺が術を組むって言わなかった。えっ?それって、俺に簡単に出来る事なんだろうか?

 確かに『夜』に呪術を習っている事は否定しない。
 だけど、だからと言ってみたいに簡単に呪術を使えう事が出来ないのだ。
 まぁ、今は何とか小さな式神を作り出す事位は出来るようになったけど……。

「む、無理だってばよ!!」

 思わず動揺して、表の口調で完全否定してまう。

「式神が作れるようなら大丈夫。才能がある証拠だ。シカマルは、それさえ出来なかったんだから」

 思いっきり否定した俺に、が安心させるように笑顔を見せてくれた。
 そして、言われた内容に俺は思わずシカマルへと視線を向ける。シカマルは、そんな俺の視線を面白くなさそうに顔を逸らす事で避けた。

「呪術を使えるかどうかは才能も関係してくる。忍術もその辺は同じだけど、チャクラがあればある程度使える忍術と違って、呪術は持って生まれた素質が重要だからな。式が作れたって事は、才能があるって事だ」

 確かに『夜』は、シカマルには才能がなかったと言っていた事を思い出して、何となくの説明に納得してしまう。
 俺に呪術が使えるのは、もしかして九尾が封印されている所為かもしれないけど……。

「俺が才能ねぇのは、分かってんだ!んなの事より、ナルトが呪術を使えるとして、結界内じゃ能力が半分になるんじゃねぇのかよ」

 考え込んで居た俺の耳に、シカマルが面白くなさそうに自分の事を認め、その後心配事を口にする。その言われた内容に、俺もハッとして思わずを見た。

「それは心配ない。ここに居る神より、ナルトの中に居る九尾は確実に上のクラスだからな」

 俺とシカマルが見詰める中、ニッコリと笑顔で言われた事に、思わず複雑な表情を見せてしまう。
 そっか、やっぱり九尾ってそれだけの力を持っていたって事なんだ……一応、木の葉の守り神だったんだよなぁ……。

「ああ、九尾って、そんなに位上だったのかよ……」

 シカマルも俺と同じ気持ちだったのだろう、呟かれたその言葉は俺が考えている事と殆ど同じだった。

「分かって貰えたら、チャレンジしてみるか?」

 納得した俺達に、は満足そうに頷くと、あんまり嬉しくない笑顔で俺へと問い掛けて来る。
 その笑顔に、俺は今直ぐにでも逃げ出したい気持ちになってしまった。

 だって、それって、すっごい重要な役になるような気がするんだけど……。
 逃げ出したい気持ちが本音だけど、の役に立つならと、俺は意を決しが言うその術の印を教わる為に自分でも情けないと思えるが、弱々しく頷いて返した。