「まさか、また二人と組めるとは思っていなかったなぁ……」

 俺が報告した内容で呼ばれた人物を見て、正直な感想を口にする。

 俺が報告した任務、どうしても俺一人では無理と言う事で、初めて三代目に暗部を数人回して欲しいと頼んだのだ。
 それに対して呼ばれたのが、目の前の二人。この里で、最強の暗部『光』と、里一番の策士『影』

「急に呼び出されて、組む相手がお前かよ……めんどくせぇ」

 俺の言葉に『影』の姿をしているシカマルが、盛大なため息と共に何時もの口癖。
 『影』の時でも、その口癖変わんないって、自分から正体教えているような気がするんだけど……。

 思わず大丈夫なのだろうかって、心配になってしまった。
「確かに、予想外な呼び出しだよな。それに、俺達3人を組ませるなんて、じーちゃん、理由は?」
「うむ……」

 『光』の質問に、三代目が複雑な表情を見せる。

 確かに、『光』の質問はもっともだろう。ナルトとシカマルはコンビを組んでいるのだから、まだ分かるが、俺に関してはこの二人と組んだのはたった一度しかないのだから。

 それも、つい最近の事。

 基本的には単体任務しか請け負わない俺と組むのは、元祖猪鹿蝶の誰かと言う決まり事みたいなものまであるのだ。

「言い難いってのなら、俺から言おうか?」

 俺が頼んだんだから、それが一番いいだろうと申し出れば、ただ頷かれた。
 それは、話せって事なのだろうと思って、二人へと視線を向ける。

「って、は、知っているのか!」
「『光』この姿の時は、出来れば『』って呼んでくれ……」

 驚いたように俺の名前を呼ぶナルトに、小さくため息をついてしまう。

「あっ、そうだった……ごめん」

 俺の言葉に、慌ててナルトが謝罪する。

 別に俺は正体がバレたとしても構わないのだけど、俺という存在事態を公に出す訳にはいかないので、一応暗部名を作っているだけなんだけどな。
 そんな理由だから、申し訳なさそうな表情で俺を見る『光』に、思わず苦笑を零してしまう。

「そこまで落ち込む必要ねぇって」

 ポンッと、ナルトの頭に手をやって、ニッコリと笑顔。
 それから、続けて口を開いた。

「三代目に暗部を数人貸して欲しいと頼んだのは、俺。でも、名指しはしてねぇからな」
「ああ、まぁ、お前の態度で、それは分かった。で、なんでだ?」

 俺の言葉に、シカマルが頷いて、話を促す。

「まぁ、前回みたいな状況って言えば分かるか?」
「ああ……そりゃまた、めんどくせぇなぁ……」
「って事は、また術者とか出てくるのか?」

 二人の様子を伺うように問い掛ければ、複雑な表情でシカマルが頭を掻き、ナルトは、不安そうに首を傾げながら問い掛けてくる。
 前回の任務の時は、人数だけの簡単な任務だったのだが、その任務に関わっていた術者と言う者の説明はしてあるからだろう、ナルトが素直に質問してくる。

「う〜ん、今回は、術者じゃなくって、神が直接関係してっかも……」
「って、そりゃ、まんまの仕事じゃねぇかよ!って、もしかして、この前の奴かよ」

 てへっと笑顔で言った言葉に、シカマルが声を荒げそして思い当たった事を、問い掛けてくる。

 そう言えばシカマルには、色々と手伝ってもらったみたいだからなぁ、知ってて当然か……。
 それに、内容は間違いなく『』の仕事だと言う事は否定出来ない事実だ。

 そんなモノに、木の葉の暗部を巻き込もうとしている俺は、かなり辛い事を頼んでいるって言うのもちゃんと分かっているともさ。
 だけど、今回の仕事は、『昼』や『夜』では手伝ってもらう事が出来ない。でも、一人で出来る内容でもねぇから、苦肉の策で三代目に泣き付いたってのが正直なところだ。

「それって、俺達でも、手伝えるのか?」

 少しだけ考えてから、ナルトが心配そうに俺を見てくる。

「勿論。本当は、お前等以外だろうと思ってかなりキツイ仕事になると思ってたんだけど、『光』と『影』に手伝ってもらえるんなら、かなり助かる」

 手伝ってもらうにしても、かなりの腕がなければ、キツイと思っていたのは本当。
 勿論、手を貸してもらうんだから、怪我なんてさせたくねぇってんで、キツイのは俺だけに関してなんだけどな。

「お前等呼んでくれたのって、三代目の配慮だろう、助かった」

 ニッコリと俺達の遣り取りを黙って聞いている三代目に、笑顔を見せる。

「それって、『夜』を怒らせねぇ為の予防策じゃねぇのかよ……」

 素直に感謝の言葉を口にした俺に、ボソリとシカマルが呟く。

 ……それって、否定できねぇかもなぁ……。俺が怪我でもしちまったら、本気で『夜』が怒り出すだろうし……。

 チラリと伺った三代目は、被っていた笠で顔を隠す。
 そんな態度を見れば分かる、シカマルの言葉は図星だって事だな。

「まっ、何にしても助かったのは、本当だから、感謝するよ」

 三代目の様子を見てから思わず苦笑を零し、それでも素直に感謝する。今回は、本当に助かったのが正直な気持ちだ。

「それじゃ、早速仕事に行きたいんだけど、OK?」 

 そして、俺は二人へと問い掛ける。
 呼び出されて直ぐで悪いんだけど、今回は本当に余裕がない。
 今こうしている時間だって、かなりロスしている状態なのだ。

「って、何の説明もねぇのかよ!」
「それは、流石に困るな……」

 俺の問い掛けに二人からの抗議の声。そりゃそうだろう。まだ、何の説明もしてない。
 何故、ここに『昼』が居ないのかも、何で俺が忍びを雇ったのかさえも……。

「それは行きながら話す。目的地は、俺が帰れなくなったあの場所。今回は『渡り』も使えないから移動しながら説明する。ワリィ、今回は本当にぎりぎりなんだ。俺も下手な力は遣えない」

 『昼』が居ない以上、本当なら俺が渡りで移動すりゃ楽なんだけど、そのチャクラさえ今は余分な力になる。
 それに、今から向かう場所は、下手をすると弾き飛ばされる可能性があるから、そんな危険は冒せない。

「……そこまで、面倒なのかよ……あいつ等が居ない理由も、その辺にあるのか?」
「それも、行きながら話す。ごめんな、面倒な事頼んじまって……」
「気にする事ないって!俺達も、……『』の手伝いが出来て嬉しいからな」

 俺の名前を呼んで慌てて言い直すナルトに、俺はフワリと笑顔を見せた。

「サンキュ……」

 そう言ってくれて、本当に嬉しかった。

 でも、逆に二人を自分の仕事に巻き込んでしまった事に、複雑な気持ちは隠せない。
 出来れば、こんな悲しい神の存在を知って欲しくはなかったのに……。

「『影』には少し手伝ってもらったから、知ってると思うけど、今向かっている先に居るのは、俺達が『荒神』と呼ぶモノ」

 移動しながら、俺は二人に今回の内容を説明する。
 足はしっかりと動かして、木の上をそれなりのスピードで移動して行く。

「『荒神』って、確か…人々にその存在を忘れられて、荒んでしまった神だったよな」

 俺の説明にナルトが思い出したように口を開いた。
 最近、ナルトも俺ん家の禁書読み漁ってるから、この辺の説明をしないでいいのは楽かもしれない。

「そうだな。まぁ、悲しみに捕らえられてしまって、自分と言うモノを見失ってしまった存在。それが『荒神』……数週間前、俺が閉じ込められてしまった結界内に居たのが、それだな……『影』にあの土地の歴史は調べてもらったんだけど……ヒントになるようなものは何もなかった」
「ああ、確かに、お前の役に立ちそうな情報は何もなかったな……」

 俺の言葉に、シカマルがため息をつく。

 色々調べてくれたけど、何も見つけることは出来なかった。
 俺も、家にある書を引っ繰り返したけど、やっぱり同じ。

「『荒神』を静めるには、一度封印するしかない。だけど、自分よりも力のあるモノの結界内では、俺は半分の力しか出せないんだ」

 スタンと音をさせて、俺は大きな木の枝でその足を止める。

「なっ!!そ、それじゃ、どうやって封印するんだ……」

 俺が足を止めた事によって、ナルトとシカマルも同じようにその足を止めた。
 そして、俺の言葉にナルトが困惑した表情で質問してくる。

「うん、だから、誰かの力を借りなければ出来ないんだ」

 質問された言葉に、俺は少しだけ困ったような表情を浮かべながら返事を返した。

「それなら、余計に俺達じゃなくって、あいつ等の方が役に立つんじゃねぇのか?」

 伝えた俺の言葉に、シカマルが納得できないと言うように聞き返してくる。

「そうなんだけどな……俺と違って、『昼』と『夜』は、自分達よりも強い相手の前では、全くその力を失ってしまうんだ」