『昼』の姿がなくなってから、面倒臭そうにしているシカマルと、既に任務に向かう準備をしているナルトを見て苦笑を零す。

 本当に、二人とも両極端だよなぁ、なんて思いながらも、小さくため息をついた。
 なんで、俺が係る任務って、こんなに面倒なモノが多いんだろう……絶対に、シカマルも同じ事を思っているのに違いない。
 自分でもそう思うんだから、間違いないだろう。

!』

 そんな事を考えている俺の耳に、『昼』の声。
 その慌て振りを見ても、やっぱり相手に動きがあったって事だろう。何せ、準備はバッチリと言った様子だったのだから当然だろう……。

「お疲れ!その様子からすっと、行動に出たと思って間違いないな。全く、後一日ぐらい待ってくれりゃいいのに……」

 お約束の展開に、俺は盛大なため息を付いてソファから立ち上がる。分かっていたけど、何で今日なんだ?!後一日だけでも待ってくれりゃ、予定通り行動できたと言うのに……。

「本当に、てめぇが係る任務つーのは、めんどくせぇのが多いよな」

 盛大なため息とともに、シカマルが言った言葉は、絶対にそう思っているだろうと先程考えていたものだった。
 言われると思っていただけに、予想通りの言葉を耳にして小さくため息。

「ってもなぁ、俺の所為じゃねぇし……だから、お詫びも兼ねて俺も参加してるんだから許せ……で、二人とも行けるようなら、直ぐに出るぞ」

 自分の忍具を確認して、二人へと視線を向ける。

「俺は、大丈夫」
「ああ、行きたくねぇが、仕方ねぇからな……めんどくせぇが、俺も何時でもいいぜ」

 俺の問い掛けに、二人は立ち上がり印を組む。その印と共に、その姿が暗部最強と言われている『光』と『影』へ変わる。
 本当に、鮮やかな変化に、俺は笑みを浮かべて、自分も『』へとその姿を変化させた。勿論、ここでは面を付ける事はせずに、それは腰のベルトへと固定させる。

「『昼』、渡りを頼む」

 準備を整えて、俺は今戻ったばかりの『昼』へと声を掛けた。

『分かった』

 俺の言葉に、『昼』が瞬時に道を作ってくれる。それを目で確認してから、『光』と『影』に視線を向ければ、俺の視線を受けて、二人が頷く。

『もう!折角が夕飯作ったのに!!』

 そんな俺達に、『夜』の声が聞こえて来て、思わず苦笑を零す。
 そうだよなぁ、折角ストレス解消に作った料理をナルト達に食ってもらうつもりだったのに、本当に面倒な任務だよなぁ。

「まぁ、仕方ねぇよ、今日中に終わると思うから、夜食には間に合うだろう……それじゃ、『夜』は留守番を頼むな」

 苦笑を零しながら、頬を膨らましている『夜』の頭を優しく撫で、何時もの言葉を口にする。

『なんで!ボクだって、今回は手伝ったんだよ』

 何時もなら、笑って送り出してくれる『夜』なのに、今回に限って反論の言葉が返って来た。

 なんでって言われても、『夜』には忍の任務に係って欲しくはないから。そう思うのは俺の我侭。
 本当は、『昼』に手伝ってもらうのだって躊躇いがあるのだ……。それを一度言ったら、長々と説教を食らっちまったけど……。
 シカマルの親父さんや、誰かとペアを組む時意外は、俺の隣に居てくれる『昼』。それは、俺を心配してくれているからだと分かっている。
 『昼』は、まだその性格からも、忍者としての自分をも認めてくれていると知っているから、まだいい。だけど、『夜』は……。

『我侭を言うな。お前には、この屋敷を守る義務があるはずだろう』

 『夜』の反論の言葉に何も返せない俺に代わって、『昼』が少しだけ強い口調で『夜』を咎める。

『ずるい、『昼』ばっかり、と一緒に居るの……』
「ごめんな、でも『夜』には、『お帰り』って、俺の事を出迎えてもらいたいんだ」
……』

 綺麗な『夜』の性格を知っているからこそ、俺の醜い姿を見て欲しくないって思う。

 寂しそうな瞳で見詰められて、俺は困ったように笑う。
 もう、俺は普通の術者じゃなくって、忍者としても沢山の人をこの手に殺めて来た。
 払い屋である俺が、その元凶作ってんだから、笑えねぇよな……。

『分かった。でもね、傷付いて帰って来たりなんかしたら、ボク闇坂の城主を殺しちゃうよ』

 困ったように見詰める俺に、ニッコリと『夜』が怖い事を口にする。
 いや、本当にやりそうだから、笑えねぇかも……。

「あ〜っ、今回の任務の依頼主なんだから、殺すんじゃねぇぞ!」
「ああ?何だ、今回の任務は闇坂の城主が絡んでんのかよ…なら、もっと早くに奇襲にも気付け、バカ」
「うっ、悪かったな!噂に疎いんだよ、俺は!!」
「威張れる事じゃねぇだろうがよ!」

 怖い事を言う『夜』に、慌てて言えば呆れたようにシカマルがため息をついて、文句を言われた。
 確かに今回のミスは、間違いなく俺の落ち度だから文句言われても仕方ねぇんだけど……闇坂なんて興味ねぇから、知らなくっても良いんだよ!!大体、俺の嫌いな諜報任務なんて、任せる三代目が悪い!

『話は終わったようだな。器のガキも呆れているようだし、そろそろ行くぞ』
「了解!」

 俺とシカマルの言い合いに、呆れたように『昼』が介入してくるのに、元気に返事を返す。
 確かに、ナルトが呆れているのが分かって、俺は苦笑を零した。

 本当に、これから任務に向かうって言うのに、こんなに緊張感がなくって良いんだろうか?
 まぁ、それが俺ららしいって言えば、問題ないかもしてないけどな。
 そして、ゆっくりとした足取りで、『昼』が作った道へと足を進める。

 これから始まる任務の為に……。

『行ってらっしゃい!気を付けてね、みんな!!』

 後ろから聞こえてくる『夜』の声に、ただ手を振って返した。

 向かうのは、怒涛渦巻くであろう、その地。