シカマルやナルトに説明しながら、頭では別の事を考える。
50人もの術者を相手にどう対応するかを……。
術者と手を組んでいる抜け忍の集まりは、本当に稀な事だ。
しかも、こんな大人数が一箇所に集まる事など、有り得ない事と言ってもいい。
それなのに、こんな砦が出来ていると言う事に、疑問を感じずにはいられない。
自分が調べた事からは、その答えも見つからなかった。
頭と言える人物にしても、そこまでの器があるとは思えない。そんな事を考えると、裏がある可能性も否定できなくなる。
「でだ、ナルトがこっちから行く。は、地下に居る術者を……?」
シカマルの作戦とも言える内容を聞きながら、考え込んでいた俺は名前を呼ばれてその意識を戻す。
「大丈夫、話は聞いてっから…………シカマル、聞いてもいいか?」
「ああ?面倒じゃねぇことなら、いいぜ」
途切れてしまった会話に、苦笑を零しながらシカマルに問い掛ければ、何ともらしい言葉が返されて思わず笑ってしまう。
「もしかした、すげぇ、面倒な事になるかもしれない」
「………これ以上に、めんどくせぇのかよ……」
だから、自分が考えた事がどうなるかを考えた答えを言えば、ダルそうにシカマルが頭を掻く。
本当に、めんどくさい事になるのは、否定できないんだよな。
だって、俺には、今回調べた事だけが全てだとは、どうしても考えられない。
「で、は何を聞きたかったんだ?」
嫌そうな顔をしているシカマルに代わって、ナルトが質問してくる。それに、俺は一瞬言葉に困って、考えてから慎重に自分が考えた事を口に出す。
「……この任務、裏があるような気がするんだ……」
「裏?お前が、下調べしたんだろう?」
それでも、それしか言えなくって、素直にそう言えば、シカマルが眉間に皺を寄せた。
まぁ、確かに今回の下調べは俺がしたのは認める。だけど、それは何時ものように、要塞の規模を重点的に調べたもの。
後は、その中にどれだけの人間が居るのか、またどれだけの力を持っているかを調べたもの。
それによって、この任務のランクも決まり、それを出来る人間が厳選されるのだ。
「……調べている時から、ずっと違和感があるんだ。勿論、調べた事に間違いはないと断言できるんだけど……」
一つ一つを考えながら、ゆっくりと言葉にしていく。
そう、調べた事に間違いはないとそう言い切れるのに、拭えない違和感。
「まず気になっている点は、術者が忍と手を組んでいるこの状態」
「何で、それが可笑しいんだ?」
呟いた俺の言葉に、ナルトが不思議そうに問い掛けてくる。
この中で術者について一番理解していないのは、ナルトだろう。だから、その質問も納得出来る。
「中途半端な力を持つ術者って言うのは、プライドが高いんだ。特殊な力を持っている自分が、一番だと思っているからな。だから、下っ端で遣われるなんて事を、一番嫌う。なのに、集まって居る術者は、砦の守りに専念している。そんなに境遇がいいとも思えないのにだ」
それが、ずっと疑問だった事。
自分が一番良く知っている。人間は、人に無い力を持つと勘違いしてしまうのだ。自分が、一番優れていると。そんな事絶対に間違っていると言うのに、術者の端くれは、そんな勘違いをしている奴が多い。
悲しい事だけど、自分の金儲けの為にだけ力が遣われるようになる。
それが、自分の能力を停滞さっせる事になど気付きもしないで……。
「あ〜っ、確かに、否定できねぇな……お前の話を聞いてっと、頭になっている奴にそこまでの力があるとも思えねぇからな」
俺の説明に、シカマルが盛大なため息と共に、俺が考えていたもう一つの疑問点を口に出す。
そう、もう一つ考えていた事。
それは、頭になっている人物が、どう見てもそこまでの力があるようには見えない事。
そんな奴に、プライドの高い術者がついている事がどうしても納得できない。
「それも、疑問に思った点。だから、総合的に裏があるんじゃねぇかと考えちまったんだよ」
シカマルの言葉に同意しながら、盛大なため息をつく。
『……確かに、お前達の言う通りだな』
今まで黙って話を聞いていた『昼』が、小さく頷きながら話に加わってくる。その声に、俺は『昼』へと視線を向けた。
何かを考えるようなしぐさを見せている『昼』を見ながら、その続きの言葉を待つ。
『……もしかしたら、あいつ等の目的が同じ物と考えてみてはどうだ』
そして、言われたそれに、俺は考えるように腕を組んだ。
確かに、目的が一緒であると言うのなら、その可能性も否定できない。
さらに、それを煽っているのがあの頭だとすれば……。
「一番可能性は高ぇみてーだな…けど、それじゃ答えになってねぇ。その目的も分かんねぇ事には、理由としては低い」
頭の中で考え付いた答えと同じ事をシカマルが言葉にする。
自分が考えたものと同じ事だったから、俺は同意するようい頷いた。
「その目的って言うのが分かれば、いいのか?」
「分かれば早いってのが、答えだな。つーても、それが今回の任務にどう関わりを持つかも分からねぇ」
盛大なため息と共に、ナルトの質問に返事を返すシカマルを見ながら、俺も小さくため息をつく。
目的と言う事が、何を意味するのか。
『そう言えば、あの砦の中で、城の話が何度か出ていたよ』
「城?」
考え込んでいる俺の耳に、『夜』の声が聞こえて、俺は問い掛けるように聞き返した。
『うん。闇坂城って名前。あそこの城主が自分達を馬鹿にしただの術者達が言っているのを聞いたよ』
思い出すように言われた内容に、ナルトが不思議そうに首を傾げた。
「闇坂城?あそこの城主は頭が切れるって噂だ。俺も、悪い印象は持っていない」
「ナルトは、知っているのか?」
言われた内容に、俺はナルトへと問い掛ける。
「何度か護衛任務を……単体だったから、シカマルは知らないと思う」
「ああ、俺は知らねぇ……だけど、闇坂城の城主については色々知ってる。確かに城主としては、変わり者だつー噂は良く聞くな」
俺の質問にナルトが答えて、シカマルが頭を掻きながら言葉を続けた。
その言われた言葉に、俺は意味が分からずに首を傾げる。
「闇坂に今まで勤めていた術者を数人残して全部辞めさせちまったとか、雇った忍び頭をクビにしたとか小さい話なら幾つも聞いてんぜ」
「確かに、無駄なものは排除するってタイプだったからなぁ……」
説明してくれる内容に、知らない俺って……。
あんまり噂話って好きじゃねぇけど、忍びとして失格なのか?
だけど、説明されて漸く違和感が拭えた。
この城で働いていた術者や忍び達が、自分達を捨てた事へのハライセ。
って、子供じゃねぇんだから、んな面倒な事で集まるなよ……しかも、大人数。
「……思いっきり、やる気が萎えたんですけど……」
「だな……城主に対して恨みを持った奴が集まったと言う所だろうな……」
「…迷惑な話だ」
全員同時に盛大なため息をつく。
「って事は、そいつ等が、城を攻める前に動く必要があるな、人数は揃っているし近い内に動く可能性もある……『昼』!」
『分かった、様子を見てこよう』
「頼む」
明日任務決行なんて、そんな事言えなくなるかもしれない。
スッと姿を消す『昼』を見送りながら、俺はもう一度ため息を付いた。