シカマルに言われて、『』を探す為に、木の葉唯一の図書館へと足を運んだ。
『光』の姿に変化して、一般の人間には入れない場所へと足を向ける。
シカマルやあいつの話を聞いていれば、『』が、一般に知られていない存在だと言うのは、明白だ。
そして、今日アカデミーでシカマルと話をしていた奴『』俺は、あいつの事を知らなかった。そんな事、絶対にあり得ないのに……。
休みが多い奴が、忍になんてなれる訳がない。それでも、アカデミーに居ると言う事は……。
「あいつが、『』……」
それが、俺の出した答え。俺やシカマルと同じように、アカデミー生が暗部なのには驚かされたが、俺やシカマルと言う例があるからこそ、否定は出来ない。
何よりも、俺の勘が、あいつだと告げているのだ。
そして、シカマルのあの態度。それを合わせれば、容易に答えは導き出される。
「だけど、なんて、そんな苗字、この里じゃ聞いた事ないぞ」
里全てを把握している訳じゃないが、そんな苗字の家など知らない。
そこから考えても、調べるならこの場所か、火影の保管室しか考えられなかった。それは、里にとって、重要なモノが扱われている処。
「……シカマル?」
何冊かの本を見終わった所で、気配を感じて顔を上げる。
「よぉ!頑張ってるか?」
その先に居たのは、片手を上げた『影』の姿。
「何で、お前が来るんだよ……どっちの肩も持たないんじゃなかったのか?」
そんなシカマルの姿に、俺は不機嫌そのままに問い掛ける。
「何でって、まぁ気が変ったつーのが、一番しっくり来るな。んで、めんどくせぇけど来てやったんだ」
「気が、変った?」
シカマルの答えに、俺は不思議に思って、更に首を傾げてしまう。
「ああ、だから、教えてやるよ、どうせ『』があいつだって、気が付いてんだろう?」
そして、俺の質問に返されるように問われた事に、小さく頷いて返す。
確信は無かったが、そうだと思っている事を、シカマルに言われて、やっぱりと思ったのが正直なところだ。
だけど、何でシカマルは、気が変ったんだ?
「あいつは、馬鹿だからな」
思わず不思議そうに見ていたのだろう、シカマルが笑ってそう言った。
いや、IQ200以上のお前から比べれば、誰だって馬鹿だろう、普通。
「ちなみに、俺が言う馬鹿は、そんな意味じゃねぇかんな」
思わず考えた事をそのまま、シカマルが苦笑しながら否定する。
「……なんで、分かった……」
「珍しく、顔に出てんだよ。よっぽど『』の事が、気になっているみてぇだな」
楽しそうに笑うシカマルに、俺は不機嫌そのままに睨み付けてしまう。
『顔に出ている』と言われても、自分にはその自覚が無い。そして、指摘された図星の言葉。
俺は、間違いなく『』の事が気になって仕方ないのだ。多分、シカマルに初めて会った時よりも、あいつに惹かれている?
「まぁ、あいつとお前は、引かれ合って当然だな。この里の中で、誰よりも近い存在だ」
「えっ?」
不機嫌に睨み付けていた俺にシカマルが、苦笑を零しながら、一冊の本を手に取る。だが、言われた内容に、俺は意味が分からずに首を傾げた。
自分と、近い存在?
「ほら、これが『』一族の資料だ。暗号は自分で解け。そこまでは手を貸さねぇぞ」
そして手渡された一冊の古びた書物。それは、見た目には色褪せ古びたモノに見える。だが、手に持った瞬間に感じるのは幾十にも重ねられた結界の存在。
「……厳重、だな……」
「まぁ、あいつの存在は、九尾以上に機密事項だからな」
開いた瞬間にも分かるのは、厳重なまでに張り巡らされている結界と暗号の数。それに、ポツリと呟けば、盛大なため息と共に言われた言葉。
それに、俺は驚いてシカマルを見る。九尾以上の機密事項など、知らない。
「お前が知らなくても、仕方ねぇよ。実際『』一族についての記憶は、封印されているからな。里の奴でも知っているのは、上層部ぐれぇじゃねぇか」
驚いて俺が見詰める中、シカマルが苦笑交じりに説明する。
確かに、俺と言う器に入れられて居る『九尾』の事なら、里の大人達なら誰でも知っている事だ。
上層部しか知らない、一族。そして、幾十にも護られている結界と暗号が施された本。九尾以上の隠さなければならない一族。
「一体、何者なんだ、『』……」
「お前にとっても、敵じゃねぇ事だけは確かだな。めんどくせぇが、俺の幼馴染でもある訳だし」
ポツリと呟いたそれに返されたシカマルの言葉に、またしても驚かされる。
シカマルの、幼馴染?
「じゃ、チョウジも知っているのか?」
確か、あいつの事を聞いた時、チョウジはそんな素振りは全く見せなかった。それどころか、シカマルとあいつが話をしているのを見たのは、初めてだとも言っていたのだ。チョウジがそんな嘘を言うとは、性格上考えられない。
「あいつもいのも知んねぇよ。俺が、暗部な事も知らねぇのに、んな事知っている訳ねぇだろう。何時ものお前なら、それぐらい分かんだろうが」
驚いて問いかけた俺に、シカマルが呆れたように盛大なため息をつく。
確かに、言われた事は間違っていない。やっぱり、今日の俺は、何処か可笑しいらしい。
可笑しくさせているのは、あいつの所為?
なら、あいつの事を、知ってやる。
そう思って、呆れているシカマルを無視して、渡されたその本の解読を始めた。そんな俺に、シカマルがため息をつくのが分かる。
そんな気配を感じながらも、俺はただ渡されたそれに施されたモノを慎重に解いていく。
この里の真実を知る為に……。