どうすれば、自分の大好きな人が傷付かずにいられるのだろか?
俺の目の前で、倒れる事なんて無いように……。
その為なら、どんな事だって出来る。
例え、俺自身がどうなっても……。
君が笑顔を見せる時 08
俺の力を知っても、笑顔を向けてくれた人が居た。
力強く笑ってくれるその人が大好きで、その人に会えるのが何よりも一番嬉しくって、ただ会える事を喜んでいた。
「おじいちゃん!」
自分が呼べば、嬉しそうに笑顔を見せて何の躊躇いもなく差し出される腕がある。
「太一、大きくなったなぁ」
自分を抱き上げて笑顔を見せてくれるその人が大好きで、抱き上げてくれる手の暖かさは、自分に唯一の優しさをくれた。
母方の父親は、気さくな人物で、良く遊びに来た自分を自慢気に近所の人達に見せて歩いてくれたのを覚えてる。
近所の人達も、自分に優しく笑顔を見せてくれた。
それは、この人が近所の人達から慕われていたからと言うのを、知っている。
頑固なところもあるけれど、優しくって強い人。
自分の特殊な力の事だって知っているのに、何の躊躇いもなく手を差し伸べてくれる。
「なぁ、太一。その力は、神様が太一の為に与えてくれたモンだ。だから、決して悪いモンなんかじゃ無い。だから、その力を間違った事にだけは使わないとわしと約束してくれるか?」
会う度に言われたその言葉に、自分はただ何度も大きく頷いた。
その人が居たから、自分は間違わずに居られたんだと思う。
そう、あの時までは……。
嫌なモノだけは、何時だって見せられる。
ずっと、この力が嫌だった。人の心が見える以上に、この力が自分を苦しめる。
見たくない未来。大好きな人が、傷付く姿。
耳に響く車のブレーキの音、そして……。
「じいちゃん!!」
自分の目の前で、倒れて動かない体。
そして、灰色のアスファルトに大量の血が流れる。
分かっていたのに、助けられなかった自分。
飛び出した子供を庇って、そのままその人はもう目を覚ます事は無かった。
変えられなかった未来。そして、自分の目前で、倒れた大好きな人。
抱き付いたその人の体から流れた大量の血が、自分の手を濡らす。
何度呼んでも、その人の目が開かれる事は無い。
未来を変えられなかった自分。助けられた筈なのに、助けられなかった後悔と悔しさ。
一番大好きで、その人と一緒に居るだけで笑顔になれた。
自分の力の事を知っていても、何の躊躇いもなく伸ばされる手。
暖かい力強いその手が、次第に冷たくなっていくのをずっと感じていた。
『行くな』と止めたのに、その人は、ただ静かに笑っただけ。
そして、あの子供を庇った時、自分に聞こえてきた声がある。
『……なぁ、太一。わしの命で誰かが助かるのなら、わしはそれでいいんだ…』
そう言う人だと知っていたけれど、自分にとっては、掛け替えの無い人だったのだ。
だから、誰かの為に傷付いて欲しくなんて無かった。
たった一人の誰にも代わりなんて出来ない人だから……。
冷たくなって行くその体と同じように、自分の心が冷たくなっていくのを感じた。
そして、その後の事は記憶に残っていない。
ただ覚えているのは、庇われた子供が、自分と同じ年ぐらいの少年だった事だけである。

はい、短いです。<苦笑>
いや、あまりの暗さに、ちょっと凹みそうになったもので、打ち切りました。(駄目じゃん)
次は、次こそは、本当に終わってくれるのかしら??
……無理なような気が……xx
この調子で行くと、10話でも無理な気が……xx
そりゃ、こんな短い話を書けばそうだろうなぁ……。
今度は、もう少し長くなるように頑張ります!
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