また、ここに来る事になるとは思っても見なかった。
この場所が、自分にとってどう言う場所なのか……。
それは、思い出したくない場所。その言葉で全てが括られるような場所だから……。
泣きたくなる、この場所に立つと……。
俺が、犯してしまった罪は、ここにあるから……。
君が笑顔を見せる時 06
「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」
ヤマトや橘さんに聞こえないように小さくヒカリが問い掛けてくるのに、俺は困ったような笑みを見せた。
大丈夫と言えるほど、この場所が平気だとは思えないから……。
「やっぱり、帰ろう……」
心配そうに呟かれたそれに、小さく首を振る事で返す。
ヤマトや橘さんには、本当の事を話せないし、折角ここに連れて来てもらったのに、自分一人の都合で迷惑を掛けたくは無い。
「大丈夫だ……心配、する事ないよ…」
上手く笑えないけど、ヒカリに笑顔を見せてその頭に優しく手を添える。
俺の言葉に、それでもヒカリが心配そうに見詰めてくるのに、もう一度笑顔を見せた。
「太一、ヒカリちゃん、お昼にしようぜ」
そんな中、ヤマトが優しく声を掛けてきたことに、慌てて頷いて返す。
それに、ヒカリももう何も言えずにただ小さく頷いた。
出来れば、この場所から一刻も早く逃げ出したい。
この場所から逃げると言うのが、自分の犯してしまった事から、目を逸らすモノだとしても……。
「太一?」
楽しく話をしていたヤマトが、心配そうに俺の名前を呼ぶ。
皆が話をしているのを何処か遠くに感じながら見ていた俺は、それにはっとして意識を向けた。
「…な、に?」
皆の視線が自分に向けられているのに、気が付いて問い掛ける。
理由なんて分かてる、きっと笑顔なんて見せられない……。
「顔色悪いぞ、大丈夫か?」
心配そうに自分に問い掛けてから、その手が自分に伸びてくる。
…ああ、顔色悪いんだぁ…なんて、何処か他人事のように聞きながら、俺はヤマトの手が自分の額に触れてきたのに、気が付いて驚いた。
「なっ!」
「熱は、無いな……どうする?もう戻るか?」
俺の様子を心配しながら、ヤマトが橘さんに問い掛ける。
「そうだな、確かに顔色悪いし、無理はしない方がいいだろう」
橘さんも、心配そうに俺の事を見てヤマトに同意した。
「俺は、大丈夫!!まだ町の景色見てないし、それに……」
何とか二人を止めようと口を開いた俺の頭にポンッとヤマトが手を置いて、そのまま俺の顔を覗き込んで来る。
「太一に無理はさせたくないんだ。今日は、帰った方がいい」
「…ヤマト……」
そこまで言われて、否定も出来ずに俺は小さく頷いた。本当にこんな時、嫌になる。
どうして、自分の事なのに、こんなに上手く進んでくれないのだろうか。
人に、心配を掛けてばっかりの自分が嫌になる。
「太一?」
ぐっとこぶしを握り締めた瞬間、驚いたようにヤマトに名前を呼ばれて顔を上げた。
その視界がぼんやりとしているのに気が付いて、俺はそっと頬に触れてみる。
「俺……」
泣いている事が信じられなくって、慌てて目許を拭っても涙は自然と流れてきて止まらない。
胸を締め付けるようなその感覚は、昔感じた事のある、あの嫌な思い出と同じ。
「お兄ちゃん!」
「…ヒカリ……」
ぎゅっと目を瞑ってその感覚から逃れようとした俺に、ヒカリが大きな声を出す。
「泣いて、いいんだよ。あれは、お兄ちゃんの所為じゃないんだから!」
心配そうに言われたそれは、自分が思い出している事に対してだろう。
自分を責めるなと言うヒカリの声が確かに聞こえてくる。
だけど、俺の、所為じゃないって本当に言える?……違う、あれは……!
「ヒカリちゃん?」
「すみません、私達、ここには来た事があるんです。祖父母の家が、この直ぐ近くにあったので……」
何処か遠くに聞こえる場所で、ヒカリが謝罪の言葉を述べているのが聞こえる。
だけど、俺には、もうそれ以上聞いていられなかった。
意識が遠退いていく。
あの後、この場所に来た時と同じように……。
「太一!」
最後に聞こえたのは、ヤマトが俺の名前を呼ぶ声だけである。

す、すみません!
とっても、短くなってます。
太一さん視点なのに、太一さんが意識無くししまいましたので、続きません。
そして、更に謎に終わってしまっていいのか??
変ですね、この話って、ギャグのはずだったのに……。
さて、太一さんがこの場所で体験した事とは一体!!
それが解決した暁には、今まで以上に太一さんの笑顔のオンパレードになる事間違い無しですよ!
そうすれば、本来のこの話の目的が達成される訳ですね。
と、兎に角、頑張ります!!
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