ずっと、大切だったたった一人の人。
  私の傍で、心を隠しながら笑顔を見せてくれる。
  心からの笑顔じゃなくても、その笑顔が何時だって私には大切で掛替えのないモノだったから……。
  だから、簡単に渡したりしない。
           
  例え、お兄ちゃんが認めた人だって!


 
                                         君が笑顔を見せる時 02 


「ヒカリ!」

 私の所に走ってくるその姿に、笑顔を見せる。

 一番大好きな人。

 この人を泣かせる人が居るとしたら、私は例えそれが誰だって、絶対に許さない。

「お兄ちゃん」

 にっこりと笑顔を見せて呼べば、少しだけ困ったような表情。

「何か、あったのか?」

 心配そうに私を見詰めてくるその瞳が、何よりも大切で、誰にも渡したくなんてない。

「……お兄ちゃんが、私の事呼んだからだよ。ヤマトさん達と一緒に出掛けたいって思ってたでしょう?」

 一緒に行きたいって思ってるのに、私の事を優先してくれた優しいお兄ちゃん。
 だから、私は来たんだよ、お兄ちゃんに、笑ってもらいたかったから……。

「お前、そんな事まで、分かるのか?」

 私の言葉にお兄ちゃんが、複雑な表情を見せる。

 だって、人の心が分かる事で、お兄ちゃんはとっても傷付いたから、私の事を心配してくれるの、分かるよ。
 でもね、私は、お兄ちゃんの事が分かる、この力がある事を誰よりも感謝してるんだよ。
 心配そうに私を見詰めてくるお兄ちゃんに、私はもう一度にっこりと笑顔を見せた。

「うん、努力してるんだよ。お兄ちゃんの事、何でも知っていたいから」

 笑顔のままで、私が思っている事をそのまま口に出す。
 だって、お兄ちゃんは、もう人の心を読む事を避けているのを知っているから、口に出さないと分かってもらえない。

「ヒカリ……」

 私の言葉に、お兄ちゃんが少しだけ困ったような笑みを見せた。
 そしてその瞬間、お兄ちゃんの後ろに立っている人物に気が付いて、思わず睨み付けてしまう。

「こんにちは、ヒカリちゃん」
「こんにちは、ヤマトさん……これから、秘密の場所へ連れてって下さるって聞いて、私もご一緒してもいいですか?」

 にっこりと挨拶してきた人物に、私も同じように笑顔を見せて問い掛ける。その瞬間、ヤマトさんの表情が一瞬だけ複雑な表情を見せた。

「なに、八神の妹?」

 にっこりと笑顔を見せた私に、ヤマトさんの後ろから現れた人物が尋ねてくる。
 確か、智成さん……ヤマトさんの親友って人。

「初めまして、八神ヒカリと言います」

 自分を見詰めてくる相手に、笑顔を見せて頭を下げる。

「ヒカリちゃんかぁ…あっ!俺は、橘智成。宜しくな」

 私の挨拶に、智成さんが好感度の持てる笑顔を見せて右手を差し出す。
 それにもう一度笑顔を見せて、その手を握り返した。

「八神、妹が来たんなら、心配いらないじゃん。ヒカリちゃんも、一緒に行こうか?」

 お兄ちゃんの肩を叩きながら、私にも質問をくれる相手に、私は何処か安心してほっと息をつく。

「…橘さん……それじゃ、連れてってくれますか?」

 智成さんの言葉に、お兄ちゃんが笑顔を返しながら言葉を返す。

 初めて見る、お兄ちゃんの本当の笑顔。
 ちょっと困ったような笑顔だけど、それは本当にお兄ちゃんの嘘偽りのないモノ。

「だってさ、良かったな、ヤマト!」

 そして、お兄ちゃんの返事に嬉しそうな笑顔を見せて、智成さんがヤマトさんを見る。
 でも、ヤマトさんは、複雑な表情で頷いた。
 それを目の前で見せられれば、ヤマトさんの心が分かってしまう。

「……そう言う、事なんだぁ……」
「何が、そう言う事なんだ??」

 ポツリと呟いた独り言に、お兄ちゃんが不思議そうに私を見詰めてくる。
 それに、私は『なんでもない』と首を振ってから、もう一度ヤマトさんへと視線を向けた。

「それじゃ、弁当買いに行こうぜ。歩いていける距離だし、のんびり行けるだろう」
「そうだな……太一、それでいいか?」
「えっ?あっ、ああ……ヒカリは、大丈夫か?」

 ハイキング気分の人達を前に、お兄ちゃんが心配そうに私に問い掛けてくれる。
 女の子の上に、私はまだ小学生だから、体力の事を心配してくれているのだと分かるから、素直に頷いて返す。

「あっ、心配ないぜ。歩いて30分も掛かんねぇから……心配なら、俺がヒカリちゃんの荷物持つけど?」

 お兄ちゃんの心配を汲んでくれた智成さんが、心配気に問い掛けてくれる。

 あっ、この人って、何かお兄ちゃんに似てる??

「橘さんに持たせるなら、俺が持つよ……」
「気にすんなって!カメラとかの機材を持って山登りするお陰で、体力だけは人一倍あるからな」

 優しく笑うその姿に、私も思わず笑顔を返してしまう。
 やっぱり、何か安心できる人だなぁ……。

「ヒカリちゃんも、それでいいかい?」
「はい、大丈夫です」

 質問された事に、笑顔で頷いて返す。
 そして、皆で揃って、コンビにへと行く事が決まった。

 コンビニでお弁当を買って、それを持って、ゆっくりとしたペースで歩いて行く。
 私が居るから、お兄ちゃんや智成さんが、歩調を合わせてくれているのが分かって、ちょっと申し訳ない気がしたけれど、話をしながら歩くのって、とっても楽しい。
 智成さんが、ヤマトさんをからかったり、色々楽しい話をしてくれたりするので、退屈する事はなかった。

「あの坂道を登った所が、小さな高台になってるんだ。目的地は、そこだから」

 すっと、指を指された方を見た瞬間、私とお兄ちゃんは思わず顔を見合わせてしまう。
 まさか、ヤマトさん達が案内してくれる場所が、自分たちが良く知っている場所だとは思わなかったのだ。

「太一?」

 今更、知っていると言えるはずもなく、私とお兄ちゃんは複雑な表情を見せる。
 それに、お兄ちゃんにとっては、この場所は余りいい思い出の場所では無いから、余計に心配になってしまうのだ。
 ヤマトさんが、心配そうにお兄ちゃんの名前を呼ぶ。

「どうかしたのか?」
「えっ、な、何でも無い……」

 心配そうに尋ねてくる相手に、お兄ちゃんが慌てて首を振って返す。
 だけど、その表情はやっぱり余り良いとは言えない。

「気分でも、悪いのか?」

 尚も心配そうに尋ねるヤマトさんに、お兄ちゃんが困ったような表情を見せた。

 きっと、お兄ちゃんは、言えないと思う。
 この場所が、お兄ちゃんにとってどう言う場所なのか……。



  





   また、続いてます……xx
   しかも、今回の主役は、ヒカリちゃん。
   智成に好感を持ってるヒカリちゃんが、これからどう言う行動に出るか、私のも分かりません。
   内心では、やっぱりヤマトさんの邪魔をしようと考えてるみたいですけどね。(笑)
   さて、本当に、次で終わるのでしょうか?(……無理!)
   そして、今月中に終わるのか?!それは、私にも分かりません。
   でも、出来るだけ、頑張りますね。