自然に見せてくれる笑顔が、誰をも引き付ける。
  きっと、太一はそれに気付いていない。
  俺の小さな心で、折角の笑顔を曇らせたくないのに、思わずには居られないのだ。

  誰にも、その笑顔を見せずに、俺だけに向けて欲しいと……。


 
                                         君が笑顔を見せる時 03 


 笑顔と同時に言われた言葉に、俺は思わず首を傾げてしまう。
 太一から、お礼を言われるような事なんて、何一つしていないから……。

「太一??」
「本来の俺が取り戻せたと言うのなら、それはヤマトが居てくれたからだ。だから、有難う、な」

 少しだけ照れたような笑みを見せて、再度お礼の言葉を言う太一が、可愛過ぎる。

 ……思わず抱き締めたくなる衝動に駆られて、俺は太一へと手を伸ばした。

「そこまでだ!次の授業、始まるぜ」
「……智成……」

 俺の目の前に教科書を当てて、遮るようにしたのは、勿論智成である。
 いや、止めてくれたのは、有難いかも、ここは教室で、それでなくっても先ほどからクラスメート達の視線が痛い。

「?…橘さん??」
「ああ、八神は気にする事ないぜ。それより、今日は午前授業だから、どっかに遊びに行かないか?この町、案内するぜ」

 ニコニコと笑顔を見せて、智成が俺の席を横取りして、太一に話し掛けて居る。

 って、ちょっと待て、何でお前が先に誘うんだ??

「あっ、折角誘ってもらって悪いけど、この町の事は知ってる……初めてじゃないから……」

 智成の誘いに、太一が申し訳なさそうな表情を見せて首を振る。

「初めてじゃないって、昔、こっちに居たのか??」
「……祖父母がこっちに居たから、何度も来てるから……」

 少しだけ戸惑ったような表情で言われた言葉に、一瞬俺と智成は顔を見合わせた。

「そう、なのか?」
「……俺に聞くなよ……」

 俺の顔を見詰めて、智成が首を傾げる。
 それに、俺はため息をついて、言葉を返した。
 そんな俺達を前に、太一はまた困ったような表情を見せる。

「あっ……」

 そして、口を開くと言葉を続けようとした瞬間、授業開始のチャイムが鳴り響く。
 時間切れの合図に、俺と智成は小さく息を吐き出すと、太一に対して笑みを見せてから、それぞれの席に着いた。

 太一が、何を言い掛けたのか気になるが、それは後から聞けばいいだろう。
 しかし、自分が考えていたようにその事を聞くチャンスは結局見付からずに全ての授業を受け終えてしまった。



「よし、終わった!!」

 最後のH・Rが終わった瞬間、生徒たちが賑やかになる。

「…太一、今日時間あるか?」

 そして、俺は一番に後ろを振り返った。
 荷物をカバンに詰めていた太一が、俺の顔を見詰めてから、小さく頷く。

「なら、付き合わないか?」
「…付き合うって??」
「こっちには何度も来てるって、言ってたけど、穴場があるんだぜ」

 不思議そうに俺の事を見詰めてくる太一に、隣から智成が俺の言葉を奪うように話をする。

「穴場??」
「ああ、途中で弁当でも買って、一緒に行ってみないか?」

 にこやかな笑顔を見せて、太一を誘う。
 その場所は、小さい頃に見付けた場所。
 人には余り知られていない、最高の隠れ場。
 そして、町が一望できるその場所は、自分達のお気に入りの場所なのだ。

「八神も気に入ると思うぜ」
「……でも…」

 嬉しそうな智成の言葉に、太一が少しだけ困ったような表情を見せる。

 もしかして、用事でもあるのだろうか?

「何か、用事あるのか?」

 俺の考え事を、そのまま智成が言葉にする。

「用事って訳じゃ……両親が共働きだから、家の事しないといけないんだ……それに、小学校も終わってるだろう?」

 躊躇いがちに言われたその言葉に、俺は納得したように頷いて返す。
 ずっと両親に対して後ろめたさを持っていた太一は、せめて迷惑を掛けないようにと、家事を頑張っていると言っていた。
 それに、妹のヒカリちゃんが居るから、やはり心配なのだろう。

「そっか……でもそれは、ヤマトも一緒だよなぁ?弟、大丈夫なのか??」
「俺は、問題ないけど……突然って言うのは、無理だったな……それじゃ、また……」

 残念に思いながらも、また今度と言おうとした言葉は、言葉にならず、俺は窓から見えたその姿に、驚いてしま。

「ヒカリ?」

 そして、俺がその人物の名前を口に出す前に、太一が慌てて窓の外に視線を向ける。
 校門に立っている少女は、自分たちがその姿に気付いた瞬間、にっこりと笑って手を振った。

「なんだ?どうかしたのか??」
「妹が…」

 一人事情が飲み込めていない智成が、不思議そうに窓の事を見る。
 それに、太一がポツリと呟いて、直ぐにカバンを持つと教室を飛び出していった。

「妹??」

 突然荷物を持って飛び出していったその後ろ姿を見送るような形になった智成が、分からないと言うように俺に視線を向けてくる。
 そんな相手に苦笑を零して、それから俺も自分のカバンを持つと、まだ分かっていない智成の肩を叩いた。

「取り合えず、行くぞ。どうやら、太一の心配事が向こうから来てくれたみたいだしな」
「はぁ??」

 分かっていない智成を促すように、そのまま教室を出る。

 隠し事が出来ないと言っていただけの事はあって、本当に何でもお見通しなあの少女に、俺は内心複雑なモノを隠せない。
 そして、太一の後を追うように、その少女の元へと意味の分かっていない智成と一緒に向かうのだった。



  





   うきゃ〜(><)全然、自分が何を書きたいのか分からなくなってしまいました。(駄目すぎ T-T)
   しかも、全く話が進んでいません。どうなってるんでしょうか??
   本当に、5話で終わるのか?!……無理な方に、120%って所でしょうか……xx
   それにしても、太一さんの性格が違いすぎるので、書きにくいです。
   やっぱり、新婚シリーズの太一さんが一番書きやすい…。あの太一さんを目指してみようかなぁ…。
   はっ!全く、関係ないことを……xx

   では、次の話が少しでも進むように頑張ってみます!