驚愕の事実に、誰もが言葉を失ってしまう。
少年は、確かに笑っていたのだ。
確かに、少年が持っている記憶と事実は異なっているとしても、それでも彼は笑っていた。
辛い思いなんて、知らないみたいに
それが、彼の強さだとしても、居た堪れない気持ちに支配される。
GATE 40
シーンと静まり返った部屋の中、誰もが呼吸をするのも忘れるていた。
聞かされた話を直ぐには信じられない、だけど否定する事も出来なくて、そのために何も言えなくなる。
沈黙が続く中、突然響き渡った警報にビクリと大きく子供達の体が震えた。
「何事じゃ」
その音に最初に反応したのは、ゲンナイで立ち上がると直ぐ傍の窓に近付き何かのボタンを押す。
その瞬間その窓が、別な景色を映し出した。
映し出されたのは、湖の傍。
「ゲンナイか?私だ」
「……アンドロモン、何があったのじゃ?」
そしてそれに映し出されたのは、機械仕掛けの姿をした何か。
それが確認するように問い掛ければ、ゲンナイがその表情を硬くして聞き返す。
「……タイチが、居なくなった」
ゲンナイの質問に、映し出された相手から告げられたのは、信じがたい内容のものだった。
「うそよ!あなたが、あの子に何かしたんじゃないの?!」
だがそれを否定するように、空が声を上げる。
「どう言う事なんですか?」
「あいつは、私を襲ってきたのよ!!あの子が居なくなったんじゃなくて、こいつが何かしたんだわ!!」
空の言葉に光子郎が分からないと言うように質問すれば、興奮したように口を開く。
その言葉を聴いて、みなの視線が映し出された相手へと向けられた。
「ゲンナイさん、今の音はなに?」
それに続くように、バタバタと賑やかに登場したのは、自分たちのパートナーであるデジモン達の姿。
警報を聞き付けて、急いで来たのだろう心配そうに口々にゲンナイへと質問を投げ掛けてくる。
「アンドロモン!何かあったの?」
それに続いて、スクリーンに映し出されている相手を見た瞬間、その質問はその相手へと向けられた。
「あの、皆さんは、こちらの方をご存知なんですか?」
「知っとりますとも。アンドロモンは、何かとワテ等の手助けをしてくれる、いいデジモンですよって」
光子郎の質問に、テントモンが答えれば、緊迫した空気が若干和らぐ。
「では、こちらの方も、糸に操られていたと言う事ですね」
「糸?」
その言葉で理解したと言うように呟かれた光子郎の言葉に、不思議そうに空が聞き返す。
「はい、石田先輩はご存知でしょう。そちらに居るレオモンさんが僕達を襲おうとした時、太一さんがおっしゃっていましたから」
「ああ、そう、だったな……それで、アンドロモンと言ったか?あいつが居なくなったってどう言う事なんだ?!」
確認するように言われた光子郎の言葉に頷いて、ヤマトがに映し出されているアンドロモンへと問い掛ける。
話が逸れてしまっていたが、確かにアンドロモンは太一が居なくなったと言っていたのだ。
ヤマトには、他の事よりも、その事だけが一番気になっていた。
「えっ?タイチが消えたって、どう言う事なの?」
ヤマトの質問で、話を聞いていなかったデジモン達が驚きの声を上げる。
「いいから、早くあいつのことを教えてくれ!」
賑やかになったその場を収めるように、ヤマトが更に声を荒げれば、ピタリとその声が静まり、誰もがアンドロモンへと視線を向けた。
皆の視線を一斉に浴び、どこか困ったような表情を見せながら、アンドロモンが口を開く。
「詳しい事はワタシにも分からない。アグモンは、タイチを探しに行った。ワタシもこれからタイチを探そうと思っている」
言われたその言葉に、誰もが信じられないと言うような表情を見せる。
太一は、自分達がここで待っていると言ったのに、姿を消したなんて
「何で、そんな事になってるんだよ!!」
「兄さん、落ち着いて!」
太一が居なくなったと聞いて、声を上げたのはヤマトで、それにタケルが落ち着かせるように声を掛ける。
太一が居なくなってと聞いて、落ち着いてなんて居られないが、それでも焦っても何も事態は変わらないから
「太一さんは……太一さんは、怪我をなされたんですか?!」
「怪我をしたのは、アグモンだ。その為に、タイチは責任を感じたようだった」
そんなヤマトを横目に、光子郎が確認するように尋ねたその言葉に、続けられたのは彼の性格が良く分かる内容だった。
人一倍責任感の強い彼が、大切なパートナーを傷付けられて、平気な訳がない。
そして、何よりも彼は、誰かが傷つく事を何よりも恐れていたのだから
「ボク達も、太一君を探しに行こう!」
だからこそ、一番に口を開いたのは、この中での年長者である丈だった。
まさか、丈からその言葉が出てくるとは思っても居なかったのだろう、彼のパートナーでもあるゴマモンが驚いたように丈を見上げた。
「そうよ、ここに居ても仕方がないもの!太一さんを探しに行かなきゃ!!」
それに続いて、ミミもその言葉に同意して立ち上がる。
ミミに続き、他の者達も同意するように強く頷いて、立ち上がった。
「待つのじゃ!」
しかし、それを止めるように声が上がる。
「何で止めるんだ?!」
その声に、イライラとした様子のヤマトが制止の声を上げたゲンナイを睨む。
それは他の子供達も同じようで、問い掛けるように視線がゲンナイを見ている。
「今のお主達が行っても、無駄じゃろう。まずは、この世界で戦う力を手に入れるのじゃ」
「戦う、力?」
そして続けられたのは、間違いない現実問題。
言われた内容に、ポツリとヒカリがその言葉を繰り返した。
確かに、今の自分達では、戦う事など出来ない。
その為に、太一とも別れる事になったのだから
「そうじゃ、戦う力じゃ。デジモン達に力を与える事が出来るデジヴァイスを手に入れるのが先決じゃよ」
「デジヴァイス」
言われた言葉を繰り返す。
それは、自分達がここに来る目的となったモノ。
それがあれば、自分達のパートナーであるデジモンが強くなる。
「確かにその通りだ。私が、デジヴァイスのある場所まで案内しよう。その間、アンドロモンにタイチを探して貰ってはどうだ?」
言われた言葉に、誰もが一瞬考えるような素振りを見せた。
そして、一番に考えが纏まったのだろう光子郎が、小さく頷く。
「……そうですね。確かに、今の僕達では、何も出来ません。ですから、先に目的のモノを手に入れましょう!」
誰もが、光子郎のその言葉に頷く。
たった一人を除いて

はい、8月1日はデジモンの日と言う事で、大変お待たせいたしまた。
『GATE』の続きです。
久し振りに書くと話を忘れてて、何度も前の話を読み返しながら、何とか書きあげる事が出来て良かったです。
って、一年に一回しか更新してないように思うのは、多分気の所為じゃないですよね……
本当に、ごめんなさい(汗)
もう、今年こそ終わらせると言う無茶な事は言いません。
兎に角、ちゃんと最後まで書けるように頑張りますね。
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