それが、全ての始まり。
3年前の、冒険。
今、知らされる自分達の過去……。
そして、少年の全て……。
GATE 39
聞かされたのは長く信じられないような話。
ずっと忘れていた空白の記憶。
誰もが話を聞き終えた瞬間、言葉を失った。
「信じられない…僕達がそんな冒険をしたなんて……」
小さく呟かれたそれは、否定の言葉。
でも、ヒカリが言っていたではないか、自分達が一緒に旅をしていた事を……
だけど、それは何処か夢物語のような話だった。
3年前の冒険の話を聞かされて、信じられずに呆然としている子供達に、ゲンナイは小さく息を吐き出した。
「私が聞きたかったのは、そんな事じゃありません!」
誰もが何もいえないで居る中反論するように声を上げたのは、この事実を知っていた人物。
「……分かっておる……御主が何を望んでおるのか………しかし、この事実は御主達には余りにも残酷なモノじゃぞ」
「それでも構わない!私は、お兄ちゃんが何故ここに一人で残されてしまったのかが知りたいんです!」
ヒカリの必死なその言葉に、誰もが弾かれたようにゲンナイを見る。
そう、3年前自分達と一緒に冒険したと言う彼が、何故ここに残っているのか……
そして、何故自分達に彼の記憶がないのか……。
「おい、じーさん!」
ヒカリに続いてヤマトがゲンナイに先を促すように口を開く。
ゲンナイは子供達の顔を一人一人確認するように見てから、一度息を吐いた。
「……そうじゃな、御主達は知らなければ、ならない事じゃ……」
そして、決意したように重い口調で話し始める。
「八神太一は、3年前のあの冒険において、その命を落としたのじゃよ」
しかし、その口から紡がれたそれは、信じられない言葉だった。
確かに、太一は自分達の前に姿を現したのだ。
ヒカリの言葉が本当ならば、3年前と全く変わらない姿で……。
「……うそ…」
信じられないと言うようにヒカリが被りを振る。
だが、ゲンナイはその声を聞きながらも先を続けた。
「最後の戦いは、想像以上のモノじゃった……バラバラになっていた者達がその場に辿り付いたその時、太一は虫の息じゃったんじゃよ……」
「そんなのうそよ!だって、お兄ちゃんは……」
伝えられる内容に、ヒカリは否定するように声を上げる。
泣き出したヒカリを空が慰めるようにその肩を抱き寄せた。
だが、その手が震えている事に、誰もが気付く。
八神太一は、3年前の冒険の時に、死んだなんてそんな事が信じられる筈がない。
だって、間違いなくこの世界に一緒に来たのは、八神太一その人だったのだから……
記憶が無くても分かる。
偽者の筈など在り得ない。
「全て、本当の事じゃよ……虫の息だった太一は、それでも最後まで戦い抜いた。そして、戦いに勝利した時……」
「もう、やめて!!」
淡々とした口調で話を続けるゲンナイのその言葉を遮ったのは、ヒカリではなくミミだった。
信じられない内容。
それは、自分達が忘れてしまった事実。
「もう、聞きたくない!だって、太一さんは私達の前に一緒に居たんだよ!どうしてそんな事言うの?」
泣き叫ぶようなミミの言葉に、誰もが唇を噛む。
確かに、自分達をここに導いてくれたのは八神太一なのだ。
死んでいる人が、自分達の前に現れるなど、そんな事在り得るはずがない。
「全てが事実……じゃが、御主達が現実世界へと戻って行った後、このデジタルワールドに大きな木が生えてきたのじゃ」
聞きたくないと言うのに、ゲンナイの話はまだ続く。
だが、言われたその言葉に、誰もが俯いていた顔を上げた。
「その木の直ぐ傍で、眠っておったのじゃよ、太一は……」
「木の直ぐ傍で眠っていた?」
続けられた言葉に、聞き返すようにその言葉を繰り返す。
「目覚めたのは御主達の世界で言う1年前じゃ」
最後に言われたその言葉に、息を呑む。
「太一には、その記憶は無い。あやつは、この世界に3年居たと思っておるんじゃからのう」
それが本当だとすれば、太一が3年前から成長していない理由が、全て納得出来る。
だが、1年。
それでも、成長していないのはどうしてなのか?
「だけど、お兄ちゃんは、全然成長してなかった!」
「今の太一が昔と変わっておらんのは、このデジタルワールドでの時間の流れの所為じゃよ」
ヒカリが疑問を口にした事で、ゲンナイが説明するように口を開く。
この閉ざされた世界は、少年の時間さえも止めてしまったと言う事。
それは、自分達にとって、信じられない話だった。

本当は昨日までに更新予定だったのに、一日遅れた!
えっと、取り合えず更新できたので、良しとしよう、うん。
めちゃめちゃ、苦労して出来上がってる『GATE』なんですが、内容が全く無いようで悲しくなります。
本気で文才が欲しい今日この頃。
そして、次で漸く太一さん居なくなった事に気付くんですね。
その話は、何時頃UPされるんだろう。(遠い目)
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