ほら、誰かが泣いている。
  今も、ずっと泣き続けている。
  誰かを思って泣いている。

  だから、早く見付けてあげて……。

  泣いている誰かを、見付けてあげて……。



 
                                         GATE 37


 何が起こったのか分からないまま、半ば強引にその場から引き離された子供達は、今来たその場を振り返るように立ち止まる。

「あいつ一人を残して、俺達だけ逃げてどうするんだよ!」

 もう見えないその姿を思って、一番に声を上げたのはヤマトだった。

「そうです。あの人を残して僕達だけ安全な場所に行くなんて……」

 ヤマトに続いて光子郎も同じように口を開く。
 そして、太一を心配するようなその言葉に、テントモンが困ったような表情を見せた。

「わてらも気持ちは同じですがな……しかしでんな、足手纏いなわてらが一緒の方が反って太一はんには、迷惑が掛かてしうんです」

 今にも戻って行きそうな自分のパートナーの腕を掴んで、ハッキリと伝えられたその言葉に、誰もが言葉を失う。
 言われた通り、何も出来ないと言う事を誰よりも分かっているから……。

「テントモンの言う通りだな。今は太一の言うように、ゲンナイの所に行く方がいいだろう」

 どうすればいいのか迷っている子供達に、レオモンが先へ進む事を促す。
 それが、太一の望んだ事だから、と……。

「お兄ちゃん……」

 もう見えないその姿を不安そうな瞳で振り返っているヒカリの姿に、テイルモンがギュッと握っていた手に力を込めた。

「ヒカリ、太一は大丈夫だから……」

 まるで自分にも言い聞かすかのように呟かれたその言葉に、ヒカリはただ小さく頷いて返す。
 誰もが後ろ髪引かれる状態で、それでも足手纏いにはなりたくないからと、言われた通りゲンナイの家を目指す。

 それが、一時的とは言え、彼を失う事になるなど知るはずもなく……。





「ここは?」

 辿り着いた先には大きな湖。
 案内された行き止まりになっているその場所に、誰もが疑問を持つ。

「ここがゲンナイさんの家だよ」

 子供達の疑問に、ガブモンが口を開いた。

「でも、ここって湖みたいに見えるんだけど……」

 パルモンと手を繋いだ状態のミミが、不思議そうに首を傾げながら口にしたその言葉に、誰もが同じように頷いて返す。
 何処を見ても、家と呼べるような建物など見当たらない。

「選ばれし子供達よ、来たようじゃのう」

 誰もが疑問を隠しきれない中、第三者の声が聞えて子供達の間に緊張が走る。

「あ、あなたは?」

 水面に立つように現れたその人物に、光子郎が質問を投げ掛けた。

「わしがゲンナイじゃ、レオモン面倒を掛けてすまなんだな」

 光子郎の質問に答え、その老人はレオモンへと頭を下げる。

「私は、私がしたいと思う事をしただけだ」

 頭を下げられたレオモンはそれだけを言って、顔を逸らした。
 そんなレオモンに、ゲンナイは嬉しそうに微笑んで見せる。

「ゲンナイさん、そんな事はいいから、早く中に案内してよ!ソラ達にちゃんと説明したいの」

 柔らかな空気が流れる中、ピヨモンが慌てて口を開く。

「……ピヨモン……そうね、私達は何も知らなさ過ぎるわ。だから、教えてください」
「僕からもお願いします」

 ピヨモンの言葉に続いて、子供達が口々にゲンナイへと頭を下げた。
 何も知らない自分達では、これからも足手纏いになる事は分かりきっている。
 勿論それを知ったからといって役に立てるとは思っていないが、何も知らないよりもずっと状況を把握する事が出来るだろう。
 そんな子供達に、ゲンナイは小さくため息をつく。

「記憶がなくてもせっかちなのは変わらんのう……レオモン、お主はどうするんじゃ」
「ワタシは、引き返してタイチをここに……」

 ため息をついた瞬間、湖が割れて道が現れる。
 それに驚く中、ゲンナイがレオモンへと質問すれば既に踵を返し歩き出そうとする。

「待つのじゃ!戻っても無駄じゃろう……」

 急いで戻ろうとするレオモンに、ゲンナイの声がそれを止めた。

「無駄?無駄って、どう言う事だよ!!」

 だが言われた内容に、驚いたようにヤマトが声を荒げる。

「それは、おぬし達が中に入ってくれば分かる事じゃ……レオモン、おぬしも中に入るがいい」

 自分を睨み付けてくるヤマトの視線を全く気にした様子もなく、ゲンナイが中へと促す。

「全ては、それからじゃ」

 それだけを言うと、ゲンナイの姿は一瞬で消えた。
 言われた言葉の意味は理解できても、その内容が信じられず皆がお互いの顔を見合わせる。

「……無駄って、どう言う事だよ……あいつに何があったのか、確かめてやる!」

 そんな中一番に行動を起こしたのはヤマトだった。
 キッと現れた入り口を睨みつけそのまま歩き出す。

「…確かに、このままでは何も始まりません。全てを知る為に、行きましょう!」

 ヤマトの後姿を見詰め光子郎も同じように行動を起こした。
 それに、皆が頷いてゆっくりと歩き出す。

 まるで先の見えないその中へと……。

 自分達が入った瞬間その扉は閉まり、後に残されたのはまるで風に揺れるかのように水面に波の残った湖だけだった。



                                                 



   ご無沙汰状態で本当にすみません。
   今私にとって一番書きにくい小説となってしまいました『GATE』の続きでございます。
   書き難い証拠に、短い短い…xx
   大まかなストーリーはちゃんと考えているんですが、何分大まかですから、きちんと話がそちらに進んでくれない。
   うん、私の文才の無さが浮き彫りになっておりますね。<苦笑>

   と言う訳で、記念すべき今日久し振りの『GATE』UPでした。