開かれたのは、希望の扉。
望んでいたものが、今確かに存在する。
それは、小さな望み。
そして、適う事などないと諦めていた想い。
今漸く、その扉が開かれた。
GATE 33
眼を開けば、見慣れた景色。
戻ってきたのだと、そう思えるほど、自分にとっては当たり前の場所。
「ここは?」
たった数日だけ離れていた場所なのに、とても懐かしいと感じれたれるのは、どうしてなのだろう。
色々な事が有り過ぎたからこそ、本当に流れていた時間よりも、ずっと長く感じられたのが原因かもしれない。
「ここが、デジタルワールド。オレ達の世界だよ」
誰ともなしに呟かれた言葉に、ガブモンが言葉を返す。
「そんな訳ですから、改めてわて等の紹介させてもらっても宜しいですやろうか」
そして続けてテントモンが、口を開く。
子供達の前には、それぞれのパートナーが並んだ。
今は、あの世界に居た時のように透ける事なく、しっかりとその姿を見る事が出来る。
「そうですね、宜しくお願い致します」
テントモンの言葉に、光子郎が笑って頭を下げた。
「わての名前は、テントモン言いますねん。宜しゅうお願いしますよって」
「……テントモンさんですね。分かりました。宜しくお願い致します」
「光子郎はん、わての事は呼び捨てにしてくれやす」
自分の手を取って笑顔を見せる光子郎に、テントモンが照れ臭そうに頭を掻く。
「分かりました、テントモン、ですね」
すっと手を差し伸べて、その手を取った。
「宜しく、お願いします」
「わての方こそ、お願いしますよって!」
自分の手を取った光子郎に、テントモンが、嬉しそうに言葉を返した。
「オレは、ガブモン。宜しくヤマト!」
「ああ、やっと、名前を聞く事が出来たな」
「うん、やっとヤマトにオレの事を呼んでもらえる」
「宜しく、ガブモン」
テントモンに続いてガブモンも嬉しそうに自分の名前を口に出す。
それに、ヤマトが優しい笑顔を見せて、名前を呼ぶながらその頭を撫でた。
ガブモンは、嬉しそうに目を細めてヤマトを見る。
「私は、テイルモン。宜しく、ヒカリ」
「テイルモン……ええ、宜しくね」
テイルモンも、嬉しそうに自分の名前を言えば、ヒカリがその名前を呼び嬉しそうにテイルモンを抱き締めた。
「タケル、ボクパタモン」
「うん、宜しくパタモン」
パタモンは、タケルの頭に乗っかったままの自己紹介。
それに、タケルも笑顔を見せてその名前を呼ぶ。
「ソラ、ソラ、ワタシは、ピヨモン。大好きよ、ソラ!」
「有難う、ピヨモン。私の事好きって言ってくれて、本当に有難う。私も大好きよ」
ピヨモンは、ソラに抱き付きながら嬉しそうに名前を言う。
空も、それを抱き返して、礼の言葉を伝えた。
それに、ピヨモンが、何度も何度も『大好き』と繰り返す。
「オイラは、ゴマモン。ジョウ、宜しくな」
「勿論だよ、宜しくゴマモン」
ぴょんとジャンプして、丈に抱き抱えられたゴマモンが、嬉しそうに丈に名前を言えば、丈も満足したように頷いて笑顔を見せた。
それぞれ目の前で繰り広げられる自己紹介を、太一はただ嬉しそうに見守る。
デジモン達がみんな、自分達を覚えていなかったパートナーに、悲しんでいる事を知っていた。
だからこそ、その大切な相手にその名前を呼んで貰えた事の喜びは、自分にとってもこれ以上ないほど嬉しい事。
「良かったね、タイチ」
「……ああ、これで、漸く肩の荷が下りたよ、アグモン……」
嬉しそうに仲間達を見詰める太一に、アグモンも笑顔でその隣に並ぶ。
自分の大切な人が微笑んでくれる事が一番嬉しいから、だから今太一が笑ってくれる事が、自分にとって一番救われた事。
今までの中で、ずっと傷付いて居た事を知っているからこそ、少しでもその気持ちが軽くなる事だけを願っていたのだ。
「でも、喜んでばかりは居られない。アグモン、来る!」
「うん」
折角の幸せな時を邪魔するように、向かってくる気配に太一とアグモンは身構える。
そんな二人に気が付いて、他のデジモン達も自分のパートナーを護るように身構えた。
「な、なんだ?」
「敵なの?」
そんな彼等の行動に、子供達は意味が分からずにどうする事も出来ずにそのままその場に立ち尽くす。
「来る」
ポツリと呟かれた言葉と共に、姿を見せたのはクワガーモンとフライモン。成熟期が2体。
成熟期が相手なら、アグモンだけでも十分に対応出来る相手。
「アグモン、先制攻撃!」
「了解、タイチ!!ベビーフレイム!!」
「オレ達も行くぞ!」
「おう!!」
太一とアグモンに続いて、他のデジモン達も行動に出る。
「プチファイアー!」
「プチサンダー!!」
「エアーショット!」
「マジカルファイアー!」
「マーチングフィッシィーズ」
「ネコパンチ!」
「ポイズンアイビー」
それぞれの攻撃が、相手へと向けられる。
「私が皆を安全な処へ連れていこう」
「レオモン!頼む。ゲンナイのじーさんの所へ行ってくれ!お前達も、自分のパートナーを護れ!」
レオモンの申し出を素直に受けて、そして、同じように敵を見詰めて居るデジモン達に声を掛けた。
「でも、オレ達は……」
「お前達は、パートナーを護る事が絶対だろう。ここは俺とアグモンだけで大丈夫」
心配そうに見詰めてくる瞳に、ニッコリと笑顔を向ける。
「そうだよ!皆は皆のパートナーを一番に考えなきゃ!!タイチは、ボクが護るから、心配しないで!」
タイチの言葉に、アグモンが皆を促す。
二人から同じ事を言われて、残りのデジモン達は、顔を見合わせて同時に頷きあった。
「分かった。オレ達は、ヤマト達をちゃんとゲンナイさんの所に送り届けてくるよ!」
自分のパートナーが居てこその自分達だからこそ、太一とアグモンに言われて、その言葉に素直に従う。
もしも、自分達の居ない時に、大切な相手を護れなかったらと考えるだけで、それは恐ろしい事。
「レオモン、皆を頼む!」
「了解した。気を付けるんだぞ」
「タイチ、ゲンナイさんの所で待ってるからね!!」
敵が怯んだ隙に、レオモンが呆然としている子供達を護るように太一へと声を掛ける。
そして、ガブモンがしっかりとヤマトを護りながら声を掛けて来た。
それに、笑顔で頷き、デジモン達がパートナーを護るように森の中へとその姿を遠去けて行くのを太一は見送る。
彼等の姿が完全に見えなくなってから、視線を目の前に居る敵へと向けた。
「アグモン、追い払えれば、それで十分だ」
「分かったよ、タイチ」
今までと同じ。
ここに初めて来たあの時から、ずっと自分は彼と共に戦っている。
どんな敵にだって、傷付きながらも、何とか今日まで生き抜いて来たのだ。
だからこそ、同じ成長期であっても、格は間違いなくこちらが上位。
「ここに、戻ってきたからこそ、俺はもう迷わない!」
真剣に相手を捕らえて、今を勝利する為に考えをめぐらせる。
自分達だけでなく、彼等を護る為に……。

思いっきり手直し。
何か可笑しいと自分で思っていたので、手直しいたしました。
そう、ガブモン達が、自分のパートナーをほったらかしなんて有り得ないんですよね!
なので、約束と言いましょうか、案の定書き直しいたしました。
これで、デジらしくなったかな?
すっかり更新ストップ状態のデジ部屋ですが、拍手コメントの一番人気はやっぱり『GATE』。
続きを楽しみにしててくださってるのに、お待たせして本当にすみません。(汗)