何時だって、決められた未来なんて無いんだと思っていた。
なのに、今は、確実に決められた未来を歩いているような気がする……。
何かに導かれるように出会う仲間たち。
それは、本当に決められた未来があるように、俺達を操っている。
今、自分たちを導いているものがなんであるのか、それを知る事は、出来るのだろうか?
GATE 19
川に飛び込んだ瞬間、上の方から爆発音が響いてくる。
それを聞きながら、太一はそっと水面を見上げた。
見えるのは、揺らいでいる水だけ。
だが、次の瞬間その水面を大きく揺らしたモノに、太一は慌てて水を蹴った。
幾つものミサイル、それが、静かな水の中を騒がせていく。
息が苦しくなってくるのを感じて、慌てて水面を目指しながら、太一はこれからの事を頭の中で考えた。
まずは、アンドロモンを正気に戻す事が、最優先。
これ以上この場所でミサイルを打ち込まれては、民家を壊すのを、止められない。
だからこそ、自分は川に飛び込んで、その被害を食い止める事を最優先としたのだ。
水面に顔をだして、大きく息を吸い込む。
先ほどの場所から少し離れたこの場所は、どうやら相手からは死角になっているらしい。
川にガトリングミサイルを打ち込んでいるその姿を見ながら、太一はそっともう一度ため息を付く。
本当は、自分の知っている相手と戦うのが、好きではない。
彼の本当の姿を知っているからこそ、胸が痛む。
「……早く、見つけなきゃ………」
糸。デジモン達を操るそれを探して切る事ができれば、それだけで、正気に戻す事ができる。
自分一人で、その糸を切った事など無いが、今は、助けてくれる者は、誰も居ない。
自分のパートナーが来るのを待っていては、きっと、この場を乗り越える事は出来ないだろう。
「……アグモンには、ゲートの場所に行ってもらってるしな………」
自分の幼馴染に託した伝言を思い出して、思わず苦笑を零す。
この場所は、そのゲートがある場所からは、離れている。
正気に戻して、一刻も早く、アンドロモンを元の世界に戻さなければいけない。
「……一かバチかって、ヤツだな……」
まだ、自分の存在は相手に気が付かれていないという事が、救いかもしれない。
幸いな事に、ミサイルのお陰で、自分が、岸に上がった事も気が付かれずにすんだ。
自分を探しているだろうと分かる相手の後に回り込む。
死角になっている場所だからこそ、有利な立場を生かして、体の何処かに存在しているだろう糸を捜す。
そして、体の半分以上が、機械で出来ているアンドロモンの弱点は………。
「…………ごめんな、アンドロモン……」
見付けたそれを切る為に、後ろから勢いを付けて体当たり。
それには流石に気付かれたが、攻撃を掛けられる前に、全身でぶつかって行く。
その勢いに、自分も一緒に川の中へと落ちた。
予想通り、水の中では、アンドロモンは、上手く動く事が出来ないでいる。
それに、太一は先ほど見付けた糸へと手を伸ばした。
両手で、糸を掴み左右へ同時に強く引っ張る。
「くっ」
糸は、簡単に切れる事無く、手を鋭い痛みが襲い、顔をしかめるがその痛みを無視して、そのまま自分のもてる力全てで、糸を引き千切った。
音を立てて切れたそれに、ホッと息を吐きながら、意識を失っているアンドロモンを必死で水面へと引き上げる。
漸く水面に出た瞬間、大きく空気を吸い込む。
その勢いに、思わず咳き込んでしまう。
「…アンドロモン、頼む、目を覚ましてくれ……」
何度か大きく咳き込み深呼吸を繰り返してから、太一は自分一人で、アンドロモンを岸に上げることは出来ないと判断し、相手へと呼び掛けた。
何度目かの呼び掛けに、相手が小さく反応を見せて、ホッしながら、どんどん冷え込んでくる体に、小さく震えてしまうのを止められない。
「………ワタシは……」
寒さで体が震える太一に、小さく呟く声が聞えて、太一は嬉しそうな笑顔を見せた。
「気が付いたのか?アンドロモン!」
「…お前は…タイチ……ここは、何処だ??」
「まぁ、説明は後だ。俺が落としといてなんだけど、早く川から出ようぜ。動けるか?」
自分の質問に、頷くのを確認して、そのまま土手に上がる。
漸く、水面から出られて、太一は大きく安堵のため息をついた。
「……ワタシは、また操られていたのか?」
肩で大きく息をしている太一の姿に、アンドロモンが、自分がしたであろう事に、己の手を見詰める。そんなアンドロモンの言葉を耳にして、太一は少しだけ困ったような表情で笑みを見せた。
「気にすんな……何も無かったんだ。お前の意思じゃなかったんだしな」
「…タイチ……」
ニッコリと笑顔を見せる太一に、アンドロモンが複雑な表情を見せる。
それに、太一はもう一度笑みを浮かべた。
「……その手は?」
「えっ?」
しかし、濡れた髪を掻き揚げた瞬間、その手を強引に引き寄せられる。
突然のアンドロモンの行動に、太一は意味が分からずに、首を傾げた。
「糸を、素手で切ったのか?」
「あっ……その、まぁ、それ以外に、方法思い付かなかったしな」
質問された事に、罰悪そうな表情を見せて、太一はアンドロモンから視線を逸らす。
「……すまなかった……」
「謝る必要なんて無いだろう?これは、俺が勝手にした事だ」
謝罪するアンドロモンに、キッパリと言葉を述べて、太一はゆっくりと立ち上がる。
「それじゃ、ゲートに行こう。何時までも、ここにいる訳にはいかないだろう?」
「……そうだな、ワタシがここに居ても、役に立てるとは思えない」
自分に続いて立ち上がったアンドロモンのその言葉に、太一は少しだけ怒ったように相手を見た。
「役に立たないなんて、そんな風に言うな!それに、それなら、俺だって、何の役にも立ってないだ。それどころか、みんなの命を危険にさらすきっかけを作っちまったのが、俺なんて、本当に笑えない冗談だよな……」
「…タイチ……すまない。お前にそんな事を言わせたかった訳では、ないんだ……」
自嘲的な笑みを見せる太一に、アンドロモンは、自分の失態に気が付かされる。
目前の少年が、どう言う人物であるのか、この数年何度か行動を共にした事がある自分は、知っていたはずなのに……。
誰よりも責任感が強く、そして、誰よりも優しいこの少年の性格を……。
「悪い、こんな事……それよりも、俺は、アンドロモンの事、役に立たないなんて、思ってない。むしろ、俺達にいろんな情報を集めてくれてるんだ。感謝してるんだぜ、本当に…」
「タイチ……そうだな、では、ワタシはデジタルワールドで、また情報を集めて少しでも、お前達の手助けが出来るように頑張ろう」
「ああ、頼むな」
ニッコリと笑顔を見せる少年を前に、アンドロモンも笑みを返す。
選ばれし子供たちと、そのパートナーではない自分にとって、彼を助けられる事は、少しでも多くの情報を伝える事。
どんな小さな事でもいい、役に立ちたいと思うのは、この少年が、自分たちに与えてくれた温か気持ちと、そして、自分を省みないほど、誰かの為に前へ進むその姿を知っているから……。
「アグモンが、ゲートの場所で待っててくれてるから、早く行こうぜ」
すっと差し出される手を、迷う事無く握り返す。
何度傷付いても、向けられる笑顔は変わらない。
誰よりも、強く、そして、弱い少年。
しかし、その弱さを見せる相手は、今、彼の近くには存在していないのかも知れないのだ。

はい、『GATE 19』です。早いものですねぇ…。(しみじみ)
次で、20話目。『裏・GATE』を入れると30話目。ですよね??(聞くな、おい!)
凄い、30話も書いたんですね。って事は、次は祝いも兼ねて、少し長めに…(出来るのか?!<無理です…>)
このお話も、今年の8月1日で、ちょうど一周年を迎えるんですが、それまでに終わるんでしょうか??
目標は、8月1日に、最終話を書くなんですが、この調子だと無理そうですねぇ……。(諦め早いぞ!)
まだ、後二人出て来てないし……ヤマトとヒカリは、重要人物だと思うので、早く出したいです。
この話、ヤマ太な筈なのに、今だにその相手が出てきていないってどう言うことなんでしょうか??
実は、ヤマ太にならないかも……xx(それでいいのか!?)
では、次の話は、アンドロモンをデジタルワールドに!!ですね(そんなフザケタモノでいいのか??)
出来るだけ早くUPするように、頑張ります!!
|