運命があるとしたら、それはとっても意地悪で、自分の思い通りになんて動いてくれない。
  何時だって、思い通りにならない未来。それが、俺の運命なのだろうか??
  もしも、自由に出来る未来があるのなら、俺はどうなってもいいから、皆が幸せで、笑っていてくれればいいのに……。

  俺は、ここに戻って来ない方が、良かったのだろうか?


 
                                         GATE 17


「遅くなったかも……」

 時計を持っている訳ではないから、正確な時間は分からない。
 しかし、1時間くらいで戻ると約束した以上、余計な心配は掛けたくないのだ。

「早く、戻らないと……」

 思う気持ちと同じように、足が自然と速くなる。
 そして、慌てた状態で曲がり角を曲がった。

「きゃ!!」

 その瞬間、聞えてきた悲鳴。
 そして、自分も同じようにぶつかった拍子に道路に座り込む。
 一体何が起きたのか分からずに、太一は驚いた表情を浮かべて、自分の状態を考えた。

 今、自分に触れる事の出来る相手は、限られているのだ。
 そんな自分だから、ぶつかった相手を驚いて見詰めてしまう。
 目の前に居るのは、お台場中学校の制服を着ている少女。
 その顔は俯いている為自分からは見えないが、少し明るい茶色の髪と、外巻きに撥ねた特徴的な髪型をしている人物に、心当たりがあった。

「……そ、ら………」

 確か今の時間は、1時間目が始まっている時間帯である。
 しかし、自分にぶつかった相手は、間違いなく自分の幼馴染……。

「あっ!ごめんなさい。急いでいたもの……」

 ポツリと名前を呼んだ瞬間、少女が慌てて立ち上がって、自分の方に視線を向けて謝罪する。
 しかし、その言葉は、最後まで続く事はなかった。

 じっと、相手の瞳が見詰めてくる中、太一は少し困ったように笑みを浮かべる。

「……ぶ、ぶつかった相手って…………幽霊????」

 困ったような笑みを浮かべる自分に、どう言う反応を返せばいいのか分からないと言う相手の言葉が聞えて、苦笑を零す。

 多少の事では動じないと分かっている相手に、思わず心では感謝してしまう。

 今、ここで大声を出して叫ばれたら、そちらの方が対処に困るのだ。
 自分を見詰めたまま動かない相手に、太一もゆっくりと立ち上がって服の汚れを払った。
 出来るだけ、相手を驚かせないように、慎重に相手の様子を伺うように、口を開く。

「……否定はしねぇよ……空…」

 そっと相手の名前を呼べば、驚いたように瞳が見開かれる。

「な、何で、私の名前……」

 そしてその顔が、恐怖を映し出した瞬間、太一は、困ったような微笑を浮かべた。

「……知ってるよ。空の、事なら……幽霊じゃねぇけど、近いモンだから……」

 本当の事なんて、きっと言えるはずが無い。
 記憶の無い、自分の幼馴染。小さい頃から知っている、自分の姉であり妹のような存在。
 そんな相手だから、顔を見れば、何を考えているのかが分かってしまう。

「……学校始まってるのに、こんな所で何してるんだ?」
「ゆ、幽霊には、関係ないでしょう!!」

 逸らされた視線に、小さくため息をついてから、問い掛ける。
 真面目な彼女が、ここに居る理由が知りたいから……。
 しかし、問い掛けたその言葉には、不機嫌な言葉が返されてしまう。
 それに、太一は苦笑を零した。

 きっと、彼女は、自分と言う存在に戸惑っているのが分かるあら……。

「……幽霊じゃねぇって……似たようなもんかもしれねぇけど……」
「私、急いでるから……」

 困ったように呟けば、自分には関係ないとばかりに、少女が慌てて落ちている鞄を拾おうとする。
 鞄を拾った少女が、自分の横を走り去ろうとした瞬間、太一がそっと口を開いた。

「でも、このまま家には戻れないだろう、サボりなのに……」
「……サボりじゃ無いわよ!体調が悪いから、早退!!」

 通り過ぎようとしたその瞬間に呟かれたそれに、少女が立ち止って、大声を出す。
 言っている言葉とその行動の違いに、太一は、思わず苦笑を零す。

「そんなに元気なのにか?」

 自分の横を走り抜けようとしたり、大声を出したりと、何処を見ても病人とは言えない。
 強いて何処か悪いところを上げるとすれば、それは、機嫌。
 ずっと不機嫌そうなその姿は、昔の彼女しか知らない自分にも、違和感を感じさせるのだ。
 普段の彼女は、もっと落ち着いていて、そして、誰よりも優しい。

「……悪い?」

 睨み付けているのに、まるで傷付いてますと主張しているその瞳を前に、太一は苦笑を零す。
 落ち込んでいる時、彼女はそれを相手に気付かせないように、不機嫌になると知っているから……。

「……悪くはねぇけど、不機嫌になってる理由ぐらいは、話してみないか?」
「えっ?」
「誰かに話した方が、すっきりすると思うぜ」

 ニッコリと笑顔を見せて言えば、驚いている瞳が自分を見詰めてくる。
 折角出会えたこの偶然を、逃してはいけない。
 それが分かるからこそ、太一は相手を安心させるように笑顔を見せた。

 今、自分に、迷いはなくなったから……。



                                                 



   はい、お久し振りの『GATE』で〜す!!
   そして、今回短いのは、理由ありですよ。まだUPしてませんが、『裏・GATE』UP予定です!!
   ええ、5人目の選ばれし子供が出てきましたので、勿論『裏・GATE』は空さん視点で頑張りましょう!!
   
   それにしても、5人目あっけない登場でしたね。<苦笑>
   拍子抜け状態ですが、これでいいんです!!
   太一さん、もう自分の迷いを振り切った後なので、強いですよ。(多分…)
   では、近い内に、『裏・GATE』UP致しますね。