もしも、彼らが本当に変わってしまっていたとしたら、自分はどうすればいいのだろうか?
  自分の事を覚えていない仲間達。
  それでも、受け入れてくれた仲間。でも、みんなが受け入れてくれると言う保証など何処にもない。
  まだ再会していない仲間に出会った時、その不安が本格的なものになるかもしれない……。


  
                                        GATE 16


「本当に大丈夫なんですか?」

 心配そうに訪ねられて、太一は思わず苦笑をこぼす。
 昨日から何度聞いているのか分からないその言葉。
 自分を心配してくれる、大切な自分の仲間達。

「大丈夫だ。心配するな」

 安心させるように微笑めば、複雑な表情が目の前にある。

「ですが、やっぱり上着を着た方が……」

 それでも心配そうに言われた言葉に、困ったような複雑な表情を見せた。

「それは、昨日の状態で、思い知った……俺が、光子郎の服着ちまうと、服だけが歩いてる状態になっちまうだろう?」

 小さく溜息をつきながら説明した言葉に、光子郎も複雑な表情を見せる。
 確かに、パジャマを着せた時、太一の身体は透けているのにも関わらず、光子郎の服であるパジャマだけは透けることなく存在していたのだ。
 それを考えると、太一の姿の見えない者が見た時、服だけが動いているという怪奇現象を起こしてしまうのは、火を見るよりも明らかである。

「……分かりました。ですが、本当に放課後までは、家にちゃんと居て下さい」
「おう!約束する」
「大丈夫だよ。ボク達も一緒だから、無理はさせないよ」

 元気良く返事を返す太一に続いて、にこにこと楽しそうな笑顔を見せて言われたその言葉に、漸く光子郎も安心したように頷いた。

「それでは、後の事はお願いします。では、僕は学校にいきますね」
「分かりました。光子郎はん、気を付けてくださいな」
「はい、いってきます」

 玄関で、光子郎を送り出してから、太一がそっと溜息をつく。
 必要以上に自分を心配している相手に、どうしてもとまどってしまうのを止められない。
 本当は心配など掛けたくないのに、今の自分は、もしかしたら、足手まといなのかも……。

「タイチ、どうかしたの?」

 複雑な表情を見せている自分のパートナーに、心配そうに声を掛ければ、直ぐに何時もの笑顔が返される。

「何でもない……それよりも、ちょっと出掛けてきてもいいか?」
「って、タイチ、さっきのコウシロウの言葉ちゃんと聞いてたの?」

 何時もの笑顔で首を振ってから、躊躇いがちに質問されたそれに、アグモンが呆れたように盛大なため息をついた。

 放課後までは、家に居る。
 それが、大人しく学校へ行くと言った光子郎が出した条件だったのである。

「そうですがな。光子郎はんが、言うようにちゃんと大人しくしとった方が……」
「オレも、そう思うけど?」
「ワタシも、同じ意見だ」

 躊躇いがちなテントモンに、ガブモンとテイルモンまでもが同意した。
 口々に否定されて、困ったような表情を見せ、太一はため息をつく。
 理由を言わないと、許してはくれないと諦めたように、口を開く。

「……今、どうしても確かめて置きたい事があるんだ……」
「確かめたい事?」

 真剣な瞳が伝えたそれに、アグモンが聞き返す。
 それに、太一は小さく頷いて、困ったような笑みを浮かべる

「ああ、残りの皆に会う前に、どうしてもして置きたい事だから……」
「じゃ!ボクも一緒に!!」

 困ったように言われる言葉に、一緒に行くと言えば、複雑な表情を浮かべて小さく首を振って返す。

「……一人で、行きたいから………」

 これだけは、譲れないと言うように、小さくだがはっきりとその言葉を口にする。

「どうしても、一人じゃないといけないの?」

 自分の言葉に言葉を返せないアグモンに代わって、ガブモンが質問したそれには、ただ笑顔を返すだけ……。

「一人では、危険だ」

 そして、テイルモンが少しだけ厳しい表情で言葉を紡いだ。

「……それでも、一人で行きたいから…………」
「タイチ……分かった、その変わり、約束して、絶対に早く帰ってくるって!」

 紡がれた言葉に、アグモンが安心させるように明るい声を出す。
 自分のパートナーが決めたら後には引かない事を、誰よりも知っているから……。

「ああ、そんなに時間はかからない。1時間もすれば戻るよ」

 明るい声で許してくれた自分のパートナーに、ほっとした表情を見せて、太一も安心させるように何時もの笑顔を見せた。

 行きたい場所なんて、一つだけ……。
 そして、それは、もう帰る事など出来ない場所……。

 送り出してくるデジモン達に、心から感謝しながら、光子郎の家を出る。
 自分が行きたい場所へと……。




 自分が住んでいたこの場所。それが、一人で来たかった場所なのだ。
 もう家には、誰も居ない時間だと分かっているから、この場所に来たかった。

 3年前までは、確かにここは自分の家で、帰るべき場所だったから……。
 なのに、今は自分にとって入る事など許されない場所になっている。

 デジタルワールドで、この家の鍵を無くしてしまったから……。

 だからこそ、もう開く事など出来ない扉。
 無くしてしまったあの時から、もう帰る事など出来ないと、何処かで分かっていたのかもしれない。

「……馬鹿、だよなぁ……」

 ポツリと呟いて、閉ざされているその扉にそっと触れる。
 冷たいそれは、自分とこの家との距離を表しているようで、自嘲的な笑みを零す。

 当たり前に生活していた場所なのに、今では一番遠い場所。

 覚悟ならこの世界に戻る時に、していたつもりだった。
 なのに、自分の事を覚えていない仲間に会って、その気持ちが揺らいでいるのを自覚している。
 戻ってきたこの場所には、既に自分の居場所など存在しないと言う現実に……。

 覚えられていない自分は、もうここには戻ってこれない。

「……もう、後戻りなんて、出来ない……だから、ここに来たんだ」

 ぐっと手を握り締めて、扉から手を離す。
 揺らいだ覚悟を確かなものにする為に、この場所に来たから、もう迷わない。

 すっと強い瞳を宿して、太一はもう一度だけ扉を見詰めた。

 もう居場所の無いここに、今までの礼を込めて、頭を下げるとその場所から歩き出す。
 後戻りなど出来ないのだと、誰よりも分かっている。
 だからこそ、気持ちが揺らぐ事があってはいけないのだ。

 誰も傷つけない為に。そして、皆を守る為に……。



                                                 



   はい、お約束していたのに、守っておりません。
   本当にすみませんです……xx選ばれし子供出てきませんでした。<苦笑>
   いや、本当は出すつもりだったんです。なのに、そこまで行き着きませんでした。
   なんとお詫びしていいのやら……xx
   駄目駄目ですみません。(T-T)
  
   そして、1ヶ月ぶりのゲートの続きでございます。
   本当に、お待たせいたしました。
   なのに、話は進んでないってどう言うことでしょうね。
   しかも、太一さん決意編になっております。
   これ以上、我慢するようになったら、太一さん壊れてしまいそうで、正直怖いです。
  
   はい、では次こそ5人目の選ばれし子供を出したいと思います。
   内容は考えてるんですけど、可笑しいですね。
   いや、次こそは、絶対にですよ!!断言いたします。
   誰が出るのか、お楽しみに!!