「タイチ!」
目を開けた瞬間飛び込んできたのは、緑色の大きな瞳。
心配と言う色を乗せたその瞳が、自分を覗き込んできている。
「……俺は…」
状況が、分からない。
ダルイ体は、自分の意志とは関係なしに動いてくれそうにない状態で、太一は直ぐ傍にいる自分のパートナーへと視線を向けた。
「アグモン……俺は?」
「タイチ、覚えてないの?熱を出して倒れたんだよ。ここは、コウシロウのウチだから、心配しないで、大丈夫だよ」
自分の質問に返されたそれに、太一はもう一度考えるように思考を働かせる。
そして、自分が意識を失いかける瞬間、ある人物の名前を聞いたような気がして、慌ててアグモンに視線を戻した。
「アグモン!タケルが!!」
「心配しないでください。まだ、熱があるんですよ、起き上がらない方がいいでしょう……」
質問しようと起き上がりかけた自分の額に、少しだけ冷たい手とその声がその動作を妨げる。
少しだけ怒っているようにも聞こえるその声に、太一は相手を確認するように顔を上げた。
「……光子、郎?」
「何ですか?」
自分の問い掛けるようなその声に、冷たいとも取れる声が返される。
だが、その表情からは、何の感情も読み取れない。
「……ごめん…」
表情を読み取れなくっても、相手が怒っていると言うことは、本能が教えてくれる。
だから、太一は考えるよりも先に謝罪の言葉を口にした。
「どうして、謝るんですか?」
突然謝罪した太一に、光子郎が複雑な表情を見せて問い掛ける。
「…光子郎が、怒ってるから……なんとなく……」
申し訳なさそうに上目使いで自分を見つめて来る太一を前に、光子郎は、盛大なため息をついた。
「なんとなくで、謝らないでください」
「……悪い……」
呆れたように呟かれたそれに、太一が再度謝罪する。
そんな太一に、光子郎はもう一度ため息をついて、持っていたトレーをテーブルに置く。
「もう、いいんです……僕が怒っているのは、貴方の所為ではないんですから……それに、貴方が何をしていたのか、僕は知っています」
「えっ?」
「飛行機事故は、TVのニュースで放送されるんですよ……そのTVに貴方の姿があったんです。だから、何があったのか聞きません。太刀川さんも無事、保護されたそうですよ」
「光子、郎……」
目の前で説明される言葉に、太一は、ただ瞳を見開いて相手を見つめる。
「それから、貴方をここに送って下さった高石くんなんですが、学校が終わり次第、またここに来るそうです。とても、心配していましたから……」
信じられない説明の内容に、太一は一瞬言葉を失った。
どうして自分が、ここを抜け出したかと言うその理由。
そして、自分を連れてきた相手が、誰かと言う事。
「……一体、何がどうなってんだよ……」
自分の知らない間に、確実に動き出した歯車。
それは、自分の意志とは関係なしに、仲間が集まりだしていると言う事。
「一番、肝心な事を忘れていました。彼のパートナーは、高石くんが連れて行きました。それで、問題ないですか?」
そして、最後に質問されたそれに、太一はただ小さく頷いて返す。
何がどうしてどうなったのか、自分には全く分からないからこそ、ただ頷くことしかできない。
「タイチ……パタモンは、タケルがちゃんと引き受けてくれたよ。後は、タイチが、元気になってからだね」
にっこりと嬉しそうに言われたその言葉に、太一はただパートナーを見詰める。
確実に、回っている歯車。それは、誰の為に?
「もう少し休んでください。熱、まだあるみたいですから……」
そっと額に触れられる手。その主の顔を見上げれば、困ったような笑顔が向けられる。
「心配しないでください。医者に見せたりはしませんよ。貴方の姿は、特別な人間でないと見えないみたいですからね。それに……」
じっと自分の事を見詰めてくる相手に苦笑をこぼして、光子郎は、持ってきたトレーから水をコップに注いで、すっと太一に差し出す。
「……それに?」
その差し出されたコップと差し出している相手を交互に見詰めて、太一は先ほど途切れた言葉の続きを問い掛けた。
「いえ、何でもありません……これ、解熱剤です。飲んでくださいね」
問い掛けられたそれに、ただ苦笑で答えて、光子郎は薬とコップを無理やり太一に持たせるとそのまま部屋を出て行ってしまう。
止める暇もなく出て行ってしまった相手に、太一は渡された薬と水を見詰めて、深いため息をついた。
「タイチ、コウシロウも、すっごく心配してたんだよ」
考え込むようにしている自分に、アグモンがそっと声を掛けてくる。
そして、その言われたそれに、太一は複雑な表情で小さく頷く。
「……そう、みたいだな……」
彼が、初めに怒っていた理由。
それが、今言われた事から、理解できた。
「だから、ちゃんと薬飲んで、早く元気になってよ」
そして、続けて言われたそれに、思わず苦笑をこぼしてしまう。
「了解、ごめんな、心配掛けちまって……」
言われて素直に薬を口に入れると、水で流し込んだ。
そんな太一を見詰めながら、アグモンはただ小さく首を振る。
「ううん……ボクは、太一のパートナーで、本当に良かったと思ってるんだよ……だから、誤る事なんて、ないんだ」
「アグモン………サンキュー、な」
自分の言葉に、少しだけ照れたように返されたそれに、アグモンはただ嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。

はい!『GATE 11』です!!
は、話が進んでない……xx
どうすれば、話が進むのだろう……xx
取り敢えず、タケルくん再度登場決定です!
そして、今回も短いのには、理由があります!
更新にも書きましたが、『裏・GATE』がまたしても、UPされました!
しかし、今回は、この11よりも先に読むことをお勧めいたします。
なぜって、太一さんが戻ってくるまでの、光子郎視点の話になっているのです。
興味のある方は、また探してくださいね。
では、では、次も頑張ります!
ええ、トラブルにもめげずに、頑張りますよ!!
実は、この『GATE 11』は、バックアップ取ってなくって、再度書き直しました。<苦笑>
再インストールする時は、取ってるつもりでも、再度バックアップ致しましょう!(教訓です)
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