ねぇ、どうして、私の友達を知っているの?
 どうして、こんなに胸が苦しいの……。


「ミミ?」

 遠去かって行くその姿が闇に消えていくのを、ただずっと見詰めていた。
 そんな中、不安そうな声で名前を呼ばれて、我を取り戻す。
 そして、自分を見詰めている大好きな友達を見詰めた。

「……タネモン…あの人は誰?どうして、リリモンの事、知ってるの??」
「ミミ?!」

 分からない事が、一杯ある。
 あの人は、私しか知らない友達を知っていた。

「それに、何故私達を助けてくれたのかしら……」

 そして、間違いなく自分の乗った飛行機を助けてくれたのだ。

 あの不思議な生き物から……。

「ミミは、デジタルワールドの事、覚えてるんじゃないの?」
「デジタルワールド?何、それ??」

 しかし、自分の問い掛けに、タネモンが驚いたように聞き返してきたそれに、意味が分からず首を傾げる。
 初めて聞いた筈なのに、何処か懐かしいと思える響きを持つ言葉。

「ミミ…私は、ミミにとって、何?」

 自分の質問に、悲しそうな瞳が見上げてきて、必死になって問い掛けてくる。
 だがその質問は、自分にとっては、今更な質問でもあった。

 今、私が抱いている相手は……。

「いやぁねぇ、忘れちゃったの?タネモンは、私の大切な友達よ」

 にっこりと笑顔で、その質問に答えれば、その瞳が大きく揺れる。

「……どうして、私の事、覚えててくれたのかなぁ?」

 大きな瞳が悲しみに揺れ、そして、涙を零す。

「タネモン?」

 突然、涙を見せた大好きな親友の姿に、そっと呼びかける。

「…ミミ……私は、ミミのパートナーだよ……」

 それに、ポツリと漏らされた言葉は、闇に溶け込んでしまうほど小さかった。




 あれから、本当に大変だったんだから!
 救助隊が来たのは、朝日が昇って来た頃、それから漸く久し振りの日本に戻って来たんだけど、取材人に取り囲まれて、もう大変!

「だから、何度も言ってるでしょう!私は急いでるのよ!!」

 マイクを向けてくる報道陣を押し退けながら、腕にしっかりとタネモンを抱えて、前へと進んでいく。
 さっきから進まないそれに、流石に頭に来て、立ち止った。

「いい加減にしなさい!!エンジントラブルだったんだから、私には関係ないでしょう!!!」

 本当の理由は、誰も知らない。
 だって、あの不思議な生物が見えていたのは自分だけだから……。

 けど、今私が抱き締めているタネモンの姿は、人の目に映っていたらしいく、その事が、今の報道陣を集めている原因でもあるのだ。

「これは、ぬいぐるみ。さっきからそう言ってるでしょう!」

 分からず屋な大人達。私は、本当に急いでるんだから!!
 パパとママを説得して、一人で日本に帰国した理由。
 それは、何かに呼ばれているように感じたから……。
 でも、そんな理由じゃきっと許してもらえないと思ったから、友達に会いたいって言う理由で帰国した。

 突然海外なんて行く事になったから、お友達と満足にお別れ出来なかったのを言い分けに、こうして戻ってきたのだ。
 海外に出て、もうすでに1年過ぎているから、今更って言われるかもって、覚悟していたのに、パパもママも、簡単に承諾してくれたのが、今でも不思議。
 でも、そのお陰で、一番気になっていた大切な友達に会えたんだもん。
 私としては、これ以上ないくらい、嬉しい事。

「ミミ…苦しい……」

 私の腕の中で、タネモンが苦しそうな声を出す。

 その声にはっとして、私は急いでその場所を離れた。
 だって、この声が聞えたら、また問題が増えそうだったから……。


 漸く離れた空港から、急いでタクシーに乗る。
 もう、追って来ないあのうっとうしい報道陣に、ほっと胸を撫で下ろした。

「どちらまで?」
「あっ!お台場まで……」

 その瞬間、質問されたそれに、慌てて行き先を告げて、もう一度大きく息を吐く。
 そして、考えるのはあの不思議な生き物の事。
 そして、リリモンを知っていたあの少年……。

 どうして自分だけにしか見えなかったのか、理由など分からない。
 だけど、確信を持っていたのだ。もう一度会う事になるだろうと……。

「……そう言えば……泉くん、元気かしら?」
「ミミ?」

 そっと呟いたその言葉に、腕の中のタネモンが不思議そうに首を傾げる。

 引越しをする前、ずっと気になっていた同級生の名前。
 どうして気になるのか、それさえも分からなかった相手。

「……やっぱり、好きだったのかしら……?」
「誰を、好きだったの?」

 独り言に答えてくれるタネモンに、にっこり笑顔を見せる。
 元クラスメートの顔が、今でもはっきりと思い出されるから……。

「泉、光子郎くん……いっつもパソコン持ってる変な子なのよ」

 だから、笑顔のままで説明する。
 そうすれば、タネモンが驚いたような表情を見せて、それからにっこりと笑顔を見せた。

「ミミは、やっぱりコウシロウの事、好きだったのね」

 そして言われたその言葉に、何も答えられない。
 どうして、泉くんの事を知っているの?

 どうして、私の気持ちを……。

「タネモン……どうして……?」
「だって、コウシロウもでしょう?――――だって、―――だって、ミミの仲間なんだよ」
「っえ?誰??」

 聞き取れなかった言葉を問い返す。
 泉くんが私の仲間??それに、誰も私の仲間なの??

「だから、ミミを助けてくれたのは、―――って言うのよ」

 少し不安そうな瞳が、自分を見詰めてくる。
 でも、タネモンが何を言っているのか、私には聞えない。

「タネモン、一体、さっきから何を言ってるの?」
「ミミ?」
「私には、聞えないの……タネモンの言葉……」

 タクシーの中には、車のエンジン音と無線機から聞えてくる会話が響いている。

 運転手は、自分には、何も話し掛けてこない。
 きっと、独り言を言う変な子だと思われてるんだと思う。

「……ミミ?」
「私を助けてくれたのは、一体誰だったの?」
 


 分からない事が一杯ある。
 どうして、あの飛行機は襲われたの?

 どうしてあの少年は、不思議な生き物と戦っていたの……。
 何で、リリモンの事、知ってたのかしら??
 誰にも話した事の無い、私の大切な友達。

 ねぇ、どうして?一体、何が起ころうとしているの??
 泉くん、貴方もこの事件に関係しているの?

「……分からないよ、タネモン……」


                                                 



   はい、漸く書きました、ミミちゃん編!
   しかし、意味不明だなぁ……xx<苦笑>
   そして、そのままタネモン(パルモン)編へと続きます!!
   この話では、ミミちゃんは、光子郎くんの事が好きなようですね。(笑)
   ただ、どうなるかは、謎ですけど……xx
   そんな訳で、続きも頑張ります!(なんのだ??)