どうして、自分だけがここに残されたのか?

  考えても、見付からない答え。
  誰が、何の為に……。

  見えない糸が、確実に自分達を動かしている。



 
                                         GATE 02


 言われた言葉が理解出来ずに、ただ目の前の人物を見詰めてしまう。
 それは、自分にとって望んでいた事なのに、今では何処か遠くに感じられる言葉。

「……ゲートが開く…?」
「そうじゃ、そして、選ばれし子供達に危険が迫っておる」

 冷静な言葉が、自分には理解出来なくって、太一は真っ白な状態の頭を必死で働かせた。

「…皆が危ないって…じいさん、前に話したよな?あいつ等に、この世界の記憶は無いって……」

 声が、震えているのが自分でも分かる。
 喉がカラカラの状態になるのを感じながら、太一は目の前の人物を睨み付けるように見詰めた。

「……確かに、そう話したのは、わしじゃ……」
「だったらどうして!!」

 静かな口調に、イライラする。大事な話をしているのは分かっているのに、感情がついてこない。

「記憶が無いのに、何で狙われるんだよ」

 大切な仲間。確かに同じ時間を過ごした、掛け替えの無い人達。
 それは、自分と言う存在を覚えていなくっても、変わる事のない大切な想い。

「敵の新の目的が、子供達の抹殺であるのなら、記憶の無い彼等を狙うのは、逆に当然の事じゃろう」

 あっさりと返された言葉に、太一はぐっと手に力を込めた。
 自分が狙われているだけなら、まだ納得が出来る。
 この世界に残る、たった一人の選ばれし子供なのだから……。

 しかし、現実世界へと戻った彼等は違う。
 この世界の事は何も知らない。
 きっと、平和な日々を過ごしているだろう。

「……どうして、今なんだ?」

 ぐっと力を入れた手からその力を抜いて、太一は冷静を保つようにゲンナイへと質問する。

「……彼等の記憶が、戻りつつある」
「なっ!」

 自分の質問に返された言葉に、驚いて太一は瞳を見開いた。

「今はまだ、可笑しいと感じているだけのようじゃが、お前と言う存在が居なくなった事で、世界が狂い始めた結果が、ゲートに影響を及ぼしたのじゃろう」
「……俺の所為……?」
「…そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」

 太一の呟きに、ゲンナイが小さくため息をつく。

「だけど…」
「太一よ、お前がここに残された意味が必ずある。それは、この世誰かの意思なのじゃ。だから、決してお前の所為ではない」

 淡々とした口調、自分がここに残された意味。
 それは、今だに分かる事の無い深い闇の中に隠されているモノ。

「ゲートが開かれるのは、今から3日後……太一よ、アグモン達には、お前から話をした方がいいじゃろう。何処までを説明するかは、お前次第じゃ」

 最後に言われたその言葉に、太一はただ小さく頷いて返した。
 そして、ゲンナイの居るその部屋を後にする。

「……真実は、おのずと見えてこよう………」

 部屋を出て行く太一を見送ってから、ゲンナイが小さく呟いたその言葉を聞くものは、誰も居なかった。




「タイチ!」

 自分の姿を見つけて嬉しそうに名前を呼ぶパートナーに、太一は複雑な表情で笑顔を返す。
 先程聞かされた話は、自分にとって衝撃なモノであったからこそ、どのように話をすればいいの分からない。

「ゲンナイさんの話、何だったの?」

 無邪気な笑顔を見せながら質問されたそれに、太一は困ったようにただ相手を見た。

「…話難い事なのか?」

 困ったような表情を見せている太一に、テイルモンが心配そうに問い掛ける。
 それに、太一は更に複雑な表情を見せて、小さく首を振った。

「……大事な事だから、だから……少しだけ、待ってくれないか?」
「少しって、どの位だ?」

 自分の言葉に、ゴマモンが素直な質問を投げ掛けてくる。それに、太一は曖昧な微笑を見せた。

「…頭の中で、整理するから……」

 直ぐにでも話をしなくってはいけないと思っていても、少しでも時間を稼ぎたいと思っている自分が居る。
 自分と言う存在が、今世界を狂わせているのだと言う事を伝えて、彼等は本当に自分を信じてくれるのだろうか?

「…タイチ、ボクはどんな事があっても、タイチのパートナーだからね」

 自分の気持ちを整理するように瞳を閉じた瞬間、服を引っ張って言われた言葉は、まるで自分の心を見透かされているようなモノであった。
 しかし、その言葉が、自分に勇気をくれる。

「…サンキュー、アグモン……」

 自分の大切なパートナーをぎゅっと抱き締めてから、太一はデジモン達に本当の事を話す決意をした。
 ぐっと手に力を込めて、瞳を閉じて大きく息を吐き出す。

「……3日後に、ゲートが開く……」
「ゲート?って、ソラ達の世界への?」
「ああ……」

 短い自分の言葉に、ピヨモンが不思議そうに問い返したそれに、太一はただ小さく頷く事で返した。

「それじゃ、ミミに会えるのねvv」

 そして、嬉しそうな声が聞こえてきたのに、太一はただ複雑な表情を見せる。

「…もしかして、ワタシ達のパートナーに危険が迫っているのか?」

 そんな太一の表情に気が付いて、テイルモンが心配そうに尋ねた。
 それに、みんなの視線が、太一へと向けられる。

「……ああ……ヤマト達が、狙われてる……敵の目的は、選ばれし子供だ……」

 全員の視線を受けながら、太一はそっと息を吐き出すように、言葉へとかえた。

「でも、どうして急にゲートが開こうとしているの?」
「それは……」

 素直に疑問に思った事をパタモンが質問したする、太一はそれに一瞬言葉に困って、俯いてしまう。
 自分が、ここに居るからこその世界の乱れ、それが、今回の事を生み出した全ての原因。

「それは……」
「タイチが、この世界に残されたから……」

 言い淀む自分に代わって、ガブモンがはっきりとした口調で言葉を続けた。
 それに、太一が驚いたように相手を見詰める。

「…何となく、そうじゃないかと思った。だけど、それはタイチの所為なんかじゃないよ。ねぇ、みんな」
「そうでっせ、タイチはんの所為やありまへん」
「オイラもそう思うぜ」

 口々に言われるその言葉に、太一はただ驚いて皆を見詰めた。
 自分と言う存在が、世界を狂わせていると言うのに、誰も自分を責めずに慰めてくれる。

 それは、ここに一人で残されたと分かったあの時と同じように……。

「誰も、タイチが悪いなんて思わないよ。だって、タイチは、皆を助けようと一生懸命だったじゃないか」
「…アグモン……」

 操られているデジモン達に襲われても、誰も傷付けないように、必死で作戦を立てていた事を知っている。
 そして、誰よりも、この世界の平和を望んでいるのだという事も……。

「ヤマト達が、危ないのなら、オレ達はどんな事をしても助けてみせる!」
「そうだぜ、オイラ達は、パートナーデジモンだ!パートナーを守るのが、オイラ達の義務」

 ガッツポーズを作るゴマモンに、誰もが笑いを誘われる。
 知っている。皆が、どれだけ自分のパートナーを想っているのかという事。

 そして、一人残された自分が、どんな気持ちでいるのかと言う事を……。

「行こう、タイチ!みんなを守れるのは、ボク達だけなんだ」

 力強いアグモンの言葉に、全員が大きく頷いた。



                                                 



   『GATE 02』如何だったでしょうか?
   更に意味不明なモノになったように思うのは、私の気の所為??
   ただ思う事は、何時になったら、他の選ばれし子供が出てくるのかと言う事。
   そして、デジモン達よ、その姿で現実世界に行くのは、問題だぞと言う突っ込み。
   さてさて、これからどうなる事でしょうか……。
   
   次は、太一以外の誰かが、出てきます。
   それにしても、予告に使った台詞、かなり抜かってますね。
   でも、これからの話に出てくると約束できます。
   8月1日にUPされてた予告の方は、信じて大丈夫ですよ。