エンジン分解その1 予期せぬエラー編

11月27日

まずはエンジンから始めよう。 とりあえずバラして状態を見てから仕様を決める。部品も早目に注文した方が良いだろう。


とりあえずジャマなストラットタワーバーとかエアフロとかラジエタとかを外す。ロドスタのエンジンはフロントミッドシップなので、これだけでエンジンルームに人が立てるようになる。エンジンルームに立って仕事するとすっごく楽なのだ。ガラガラのエンジンルームってステキ。 まずはエンジンを車載状態のままでヘッドだけを降ろす事にする。 その方が何かと楽だし。


早速発見した不具合。ウォータポンプシャフトからの水漏れ。タイミングプーリ上部の右側に水が流れた跡が有るのが解るだろうか? シャフトから漏れた水はオイルポンプカバーに垂れて、外部に出る前に蒸発していたようだ。クランクプーリの下側のオイルパンとの段差に緑色に凝固したLLCが残っている。

実は今シーズンのFire号は微妙に水が減っていた。サーキット走行が余りにも多かったので、自然蒸発が早いのか、或いは横Gでリザーブタンクからあふれて減るんだろうと思っていた。今思えばこのウォータポンプからの漏れだったんだね。 普通、ウォータポンプは10年10万キロくらいが寿命だ。6万キロで壊れるのは珍しい。やっぱFire号の6万キロは普通の人の10万キロ以上に相当してると思われる。


取り外した水ポンプ。ペラシャフトのシールが壊れると軸部分の上部に空いていいる穴(写真中央付近の丸い穴)から水が漏れてくる。


漏れた水が流れた跡がこれである。このようにLLC成分が焼付きながら蒸発していく為、軽い漏れだと外に出てこない。タイミングベルトカバーを全部外してみて初めて気付くトラブルである。 所詮ウォータポンプは10万キロ程度が寿命なので、タイミングベルト交換時に一緒に交換する事を強くお勧めする。Tベルト交換時にはついでにクランクとカムのオイルシールも交換しよう。


ヘッドが取れた。あとはオイルクーラを外せば腰下もすぐに降ろせる。


1番シリンダのピストン。ここが一番カーボンが多い。圧縮圧力がもっとも下がっていたのも1番。バルブは綺麗だったので、ピストンリングなどの摩耗でオイルが上がっていたものと思われる。


もっとも綺麗な4番。ほとんど地金。 分解直前にガレージで何度かアイドリングを繰り返した為、ピストンに限らず全体的にカーボンがうっすらと付いていた。


シリンダの状態はやはり6万キロとは思えないような状態だった。写真では解りにくいが、ピストンの側圧方向のクロスハッチはほとんど消えかかっている。ピストンヘッドがシリンダ内面に映っているって事は、鏡面状態に近いって事さね(^^;。マメなオイル管理でも減るモンは減る。GRPを新車から使ったら減りは少なそうだね。


ヘッド側はアイドリングのせいでカーボンが付いてる。


でもウエスで拭いただけでこれくらいに綺麗になった。アイドリングで付いた薄いカーボンがほとんどみたい。鏡面研磨はカーボンの付着を防ぐのだ。


吸気ポートはご覧のように驚異的に綺麗な状態を維持していた。まさに研磨した直後と何ら変わらぬ姿。美しい。

んで、腰下を釣り上げて降ろそうかなって思って、先にエンジンオイルを抜いた。 私は磁石付のドレンボルトを使っている。この磁石にはオイル交換のたびにうっすらと鉄粉が付く。鉄って事はやっぱシリンダとピストンリングが減ってるんだろうな。 カムはそんなに減るモンじゃないし、メタル摩耗粉は磁石には付かない。ちなみにこの鉄粉だが、GRP使用開始から目視で違いが分かるくらいに鉄粉の付着量が減った。 んで、今回のその磁石だが...


ほわ〜っと?

なんだコレ?? もしもし? 切り粉じゃないな...バネだ。オイルシールリップスプリングだな。なんでリップスプリングが? それも叩きのめされたような3分割グチャグチャ状態で? 各種オイルシールを思い浮かべてみる...クランクのフロント&リヤ、カムシャフト...だけじゃん? そいつらは元気だぞ。オイルも漏れてない。 一体何のバネ?? 予期せぬエラー、例外OE、ワトソン博士って感じ。

あ...ひょっとしてバルブステムシールが崩壊したんじゃ? でもそんなモン崩壊するのか? 気になる、腰下は置いといて先にヘッドをバラして見よう。


バルブスプリングコンプレッサを使ってバラす。このバルブスプリングコンプレッサは10年以上前にAE86の4A-Gをいじった時に買ったモノ。すっごく高かったんだけど、すっごく使いやすい。自慢のバルブスプリングコンプレッサなのだ。

順番にバルブをバラしていくと、最後の方でビックリ。3番の吸気のバルブスプリングシートを外したら、変なカタチのステムシールが目に入った。コレだ! やっぱこれが崩壊してたんだ。 おいおい、でも変だよ。なんかバルブガイドが妙に近くに見えるんですけど?


これは普通のバルブガイド。


これは問題のバルブガイド。もしもし? 君は抜けてきてるんじゃ?(^^;;;;;;;; Cリングがヘッドから浮いてますがな...

話はここで3万キロ前に溯る。 ヘッドを降ろしてエブリィの荷台でポートを削っていた時の事。吸気の1番から順番に削り始めて、3番の吸気ポートを削り始めたのだが、そこだけポート側へのバルブガイドの突き出し量が2mmくらい少ない事に気付いた。なんでだろうって思って良く見たら、ガイドが奥まで入ってなかったのである。新車の組立不良だな。最後まで圧入されなかったんだ。珍しい事も有るもんだ。他のポートを削っちまったからなー、今更クレームにもできねぇよなー。どうしようかなー。奥まで打ち込むか? いやいや、下手に打ち込むとバルブの当たりが変わっちゃうからこのままにして置こう。2mm程度なら特に問題無い。と、判断してポートをガンガン加工したのだった...

今思えば、あれは新車のラインオフの時に奥まで圧入されてなかったのではなく、3万キロかかって2mmほど抜けてきてたんだね。それが更に3万キロ走ってもう数mm抜けてきて、ついにバルブスプリングシートとバルブステムシールがブチ当たってスプリングが外れ、バルブスプリングに挟まれて3分割になってからオイルパンに落ち、そして磁石付ドレンに補足されたと。 前回オイル交換した時にはナニも無かったわけで、ステムシールにトドメが刺さったのはつい最近、それもここ2〜300Kmの間だろうと思う。9月以降はオイルが減らなくなったハズなのに、ここ2回ほどの間瀬サーキットでは再び減るようになったのは、このステムシールが死んだからだと考えられる。長期間に渡ってこの状態だったわけはない事は、バルブに堆積したカーボンの量や、3番シリンダの汚れ具合などから想像できる。今回のO/H作戦決行の時期は素晴らしくタイミングが良かったって事だな〜。

しっかし、バルブガイドなんか普通抜けるか?温めてから叩き抜くようなモンなのに...。試しに叩き込んでみたら、けっこ簡単にコンコンコンって奥まで入っていった。温めてないのにこんな簡単に入るの? こりゃまた抜けてくるなぁ、マズいなー。


これが問題の叩き潰されたステムシールとバネ。右側が正常なステムシール。左側はガラだけ残ったステムシール。右上の黒いのは無関係。

はぁ...ヘッドどうしようかな...

(次回に続く)

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