Last Updated 2004/6/7

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対話篇 その1

「きみは人を殺すことが悪いと思うかい?」
「うん。思う」
「そうか、でもなぜ悪いんだい?」
「なぜって・・・、悪いものは悪いと思う」
「どうして?」
「うーん。殺される人には大迷惑だからかなあ?」
「そうだね。まだまだ生きていろいろなことをやりたかった人の、残りの人生を奪ってしまうのだから、大迷惑だよね」
「うん」
「でも、それを大迷惑だと思わない人が、世の中には居るって知ってるかい?」
「そうなの?」
「そうなんだよ。自分がいやだとか、自分が苦しいとか、そういう理由で、他人に大迷惑をかけてしまう人が居るんだよ」
「それって何か、勝手だなあ」
「そうだねえ。勝手だよね」
「うん」
「でも、その人が苦しいとか、いやだとかって思うのには理由があるかも知れないよ」
「理由?勝手なだけじゃないの?」
「例えば、きみがその人のことを知らずに苦しめているとしたらどうだろう?」
「知らずに苦しめるって?」
「気づかないうちにその人のことを傷つけるようなことを言ってしまっていたとしたら?」
「え?気づかないうちに?」
「そう。例えばちょっと太り気味の女の子に向かって『成長したよね』とかね」
「ああ。なるほど」
「例えばちょっと小さい男の子に向かって『いいよなー、列の一番前は』とかね」
「うん」
「人はどんなことで傷つくかわからないからね。どんな言葉でも傷つけてしまうことがあるんだ」
「そうだね」
「でも、こうやって面と向かって話をしていると、その人が『成長したよね』と言われたときにもじもじするとか、『列の一番前』と言われたときに目でよそを 見るとか、そういうしぐさが見えるよね」
「うん」
「実は、人はみんなそういうしぐさとか動きを見ながら、会話してるんだ。例えばもじもじしたら「恥ずかしい」とか「気持ち悪い」とか、そういうことを感じ ているようだ、ということがわかってるんだ。自然とね」
「ふーん」
「で、ある言葉を言ったときに『もじもじ』しているのが見えたら、『あ、これは嫌がってるのかな』と感じて、それ以上その言葉を口に出さなくなったりする んだよ」
「うん」
「きみもそういう覚えがあるだろう?」
「うん。ある」
「でもね、ネットとかで言葉、文字だけで会話してるよね。そうすると、相手のしぐさとか動きは当然見えないよね」
「うん」
「とすると、ただ返事が無いとしか見えない場合でも、もしかしたらすごく悲しいと思っているかもしれない。でなければすごくうれしいと思っているかもしれ ない」
「うん」
「でもわからないでしょ?」
「わからない」
「わからないとどうなると思う?」
「ええと。どうなるのかなあ?」
「言葉には出てこない相手の反応ががわからないと、ひとつ間違えると相手の嫌なこととか苦しいことをどんどん言ってしまうんだ。相手がどういう反応をする のかを見て、自分でブレーキをかけられないからね」
「あ、そうか」
「そういうことが重なると、急に仲が悪くなったりするんだよ」
「うん」
「でもね、仲が悪くなるだけだったらいいのだけど、もし相手の人が、自分の苦しさが減るのならきみの大迷惑はどうでもいい、って思う人だったらどうなると 思う?」
「・・・」
「きみはいきなり殺されてしまうかもしれないよ」
「・・・うん」
「そうならないように、特にネットでは気をつけておはなししないとならないね」
「うん。そうだね」

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