2005.11.某日 59***km |
しばらく前から気になっていたのは、「このK100RSはトランスミッションか駆動系のどこかのバックラッシュが大きいのではないだろうか?」ということだった。具体的に何が気になるかというと、渋滞時など1速で超低速走行をする際、クラッチをつなぐ時に「コツ」と軽いショックがある、とか、一般道で前車の速度に合わせてハーフスロットルでついていくときに乗り味が悪い(表現が難しいが駆動系から微妙な振動を感じる)、といったことである。とりあえず、手っ取り早いところでギアを入れて後輪を手で回してみたのだが特にガタは大きくない。他の車両と比べてみても、どちらかといえば少ないくらいである。
普通に走るには何の問題もないのでそのまま1年以上乗っていたのだが、ファイナルのギアが砕けた話、ドライブシャフトのユニバーサルジョイントが逝ってしまった話、ドライブシャフトのダンパーゴムが溶けた話、など駆動系に関わるトラブルの話があちこちから聞こえてきたので心配になってきた。考えていてもしょうがないのでとりあえず開けてみることにした。 |
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2005.11.13 59397km |
予定されていたツーリングの予定が一段落したので点検を始めた。
駆動系を点検するためにはリアホイールを取り外さなければならないのだが、マフラーに干渉するためうまく取り外せず、今までずっとマフラーを取り外していた(タイヤ交換編参照)。 今回は時間があるのでいろいろと試してみることにした。結果、センタースタンドの下に木片を敷いて車体を左に傾け、リアフェンダーとキャリパーを取り外し、リアショックを取り外してスイングアームを少し上に持ち上げた状態にすると取り外せた。が、これもパズルのようにしてようやく取り外したようなものだった。これならマフラーを取り外すほうがはるかに楽だ。(結局、この後の作業でマフラーが邪魔になって取り外したのでなおさらである。)
4Vはリアがパラレバーになっているため、ドライブシャフトを分解するためにはまずパラレバー部のピボットボルトを取り外さなければならないのだが、左側ピボットボルトの取り外しはかなり大変である。 マニュアルには「緩み止めが塗布されているので緩めるのは非常に困難。正しいサイズの上質の工具を用い、十分な力を加えるためにパイプも用いる」といったことが書いてある。12mmのLレンチにパイプを取り付けて試してみたが全く歯が立たない。 持ち上げる向きにセットすると力が入りにくい上にリアショックが縮むため力が逃げてしまう。押し下げる向きにはスイングアームとセンタースタンドが邪魔でレンチがうまくセットできない。結局、「この方法で緩まないものはない」という最強の手段を使うことにした。12mmのソケットとエクステンションバーを新たに購入し、パンタジャッキを支点にしてボルトに回転力が効率よくかかるようにセット。このやり方でようやくボルトを緩めることができた。最初からなかなか大変である。。。 |
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2005.11.14 59397km |
昨夜、難関の左ピボットボルトを緩めてあるので今夜はその続きである (←この書き方でわかると思うが、夜中にガレージにこもって作業している。こういうときにシャッターつきガレージはありがたい)。
ファイナルをスイングアームから分離するためには取り外さなければならないものが結構たくさんある。キャリパーとリアショックは昨夜取り外してあるので、スピードメーターピックアップを取り外して穴をテープで塞ぎ、ファイナルが外れた時に備えてスイングアームをタイダウンで吊り下げた。 ファイナルピボット部のゴムブーツを取り外すためにバンドを緩め、ゴムブーツをずらして・・・・え!?何でここからオイルが??
ゴムブーツを緩めた途端、中から真っ黒なオイルが出てきた。ここから出てくるオイルはファイナルかトランスミッションのシャフトから出たものだと思われる。 色は真っ黒で相当古そうな感じ。量は10mlくらいか。年式、走行距離を考えると、少しくらいオイルシールからにじんできても不思議ではないのだが、ファイナルを分離してみないと判断がつかないので作業を続ける。パラレバーをファイナルから分離し、 あとは左右のピボットボルトを緩めるだけでファイナルが取り外せる状態にした。 左右のピボットボルトを抜き取るとファイナルドライブはドライブシャフトの後ろ半分と一緒に抜けてきた。 ピボットボルトと一緒になって外れてくるベアリングの状態がかなりひどい。本来ならばグリスが塗布されていなければならないのだが、付着しているのは錆色のオイルである。オイルを拭き取ってみるとインナー・アウターの両レースにしっかりと打痕がついている。これは要交換である。
ここまでで、ドライブシャフトの前半分と後ろ半分が分離できたことになる。 ここでチェックしておかなければならないのは接続部のスプラインの摩耗具合とダンパーゴムの状態である。スプラインの歯はファイナル側、ドライブシャフト側とも大きな損傷は見当たらない。白いグリス状のものが付着しており、錆もない。(このときは白いものが何なのか悩んだのだが、これが純正のグリスだった)。ドライブシャフトのスプラインをシャフトに留めているダンパーゴムの状態も問題ない(弾力があり、刻印が読める状態)。
次はファイナルドライブにはめ込まれているドライブシャフト後端のチェックである。ドライブシャフト後端はファイナルユニットとスプラインで結合しているのだが、 スナップリングが入っているため引っ張っただけでは抜けてこない。これはウエスを巻いたレンチでこじって取り外した。・・・スプライン部をチェックしたのだが、こちらも特に問題はない。ユニバーサルジョイントのグリスは劣化しているが、動きも悪くなくガタもない。
さて、この状態が正常なのか異常なのかの判断だが、スプラインを嵌めた状態で回転方向に力を加えるとガタがある。が、機械物にはガタがあるのは当たり前で、このガタが正常なのかどうなのかはこれだけでは判断がつかない。マニュアルにも数値はかかれていない。ディーラーにも聞いてみたのだが、良いとも悪いともはっきりしない。さて、どうしたものか。 |
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2005.11.23 59397km |
後ろ側2ヶ所のスプライン部を点検しても「コレ」という不具合点はみつからなかったため、ドライブシャフトの前半分も点検しなくてはならない。ドライブシャフトの前半分はスイングアームの中に入っており、スイングアームを取り外さないと見ることができない。
スイングアームの分解にかかる前に、 これまでに取り外したパーツの洗浄と点検を行うことにした。バットに灯油を入れて歯ブラシで汚れを落としていく。ピボットボルトのベアリングがやられているのは洗浄しなくてもわかったが、ピボットボルトそのものも少し打痕がついている。使用できないほどではないのでそのまま使うことにした。
いよいよ、スイングアームの分離作業である。スイングアームはステッププレート裏のピボットピンでトランスミッションケースに取り付けられている。まずは左右のステッププレートを取り外す。 右側はリアキャリパーがついたままになるので適当なひもで吊るしておく。
スイングアームを取り外すためにはクラッチケーブルが邪魔になるため、この時点でニップルをリリースレバーから外しておく。(実は、ここで何も考えずにケーブルを外したため、プッシュロッド部のゴムブーツが破れてしまったのだが。)
次は左右のピボットピンの取り外しである。 まずは右側の3本のボルトを取り外す。ピンが動かなければボルトの一本を真ん中の穴に入れて軽く締めると浮いてくるが、ここではまだ右ピボットピンを引き抜かずそのままにしておく。左側はロックナットを緩めピンを少しずつ抜いていく。 このとき、ピボットピンを緩めながらCRC556などスイングアーム側(内側)から吹き付けてネジに付着した汚れを落としておくとよい。
左右のピボットピンが抜けると、スイングアームはゴムブーツだけでトランスミッションケースとつながった状態になる。 スイングアームを真っ直ぐ後ろに引っ張るとスイングアームは簡単に外れる。ドライブシャフトの前半分はトランスミッション側に残ったままである。ユニバーサルジョイント部をドライバーでこじってドライブシャフトをトランスミッションから取り外す。
 引き抜いたドライブシャフトのスプライン(メス)とトランスミッションのアウトプットシャフトのスプライン(オス)を点検したのだが、特に目立つような摩耗はない。 グリスもしっかり残っている。ユニバーサルジョイントのガタもない。
ドライブシャフトのスプラインに特に異常が見当たらないので本日の作業はここまでとした。・・・実はここまでの写真の中に大変なものが写っているのだが、このときはさほど気にもせずいたのである。 |
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2005.12.3 59397km |
 ここで数日整備記録があいているが、この間何もしていなかったわけではなく、スイングアーム周りのパーツを洗浄してグリスアップしたり、スプラインのグリースや破れてしまったゴムブーツを発注したりしていた。
で、その「破れてしまった」ゴムブーツを取り外そうとしたところ、出てくるオイルの色がおかしい。水が入ったような感じに白くなっている。 ミッションは水が入るような構造ではないはず。ゴムブーツがしばらく前から破れていて雨水が入り込んだのか?と不思議に思ったのだが、心配になってミッションのフィラーキャップを緩めてみたところ・・・ミッションの中が真っ白である。前回ミッションオイルを交換したときに出てきたオイルには問題がなかったので、水が入り込んだのは最近か。 とりあえずオイルを抜いてみないと何とも言えないため、ドレンボルトを外してミッションオイルを抜いてみた。・・・・なかなか強烈なオイルである。固いミッションオイルが入っている上に気温が低いのでまるでソフトクリーム。くるくると出てくる。(笑) こんなオイルではいくら時間をかけても完全に抜けるとは思えない。
ミッションオイルがこんな状態では内部にダメージがあるかどうか心配になったが、ドレンボルトのマグネットに付着している金属粉はいつもと同じくらい。ミッションの中を覗き込んでも錆が発生している様子もない。とにかく内部を洗浄しなければならない。 
内部の洗浄にかかる前に、気分転換にケースの外側を洗浄することにした。クラッチリリースプッシュロッド部とドライブシャフト部に汚れが飛び散るのを防止するためのビニールを巻き、灯油をかけて歯ブラシで汚れを落としていく。 砂粒がオイルで固まったような汚れが大量についている。普段掃除ができるところではないため念入りに行う。クラッチリリースレバーも泥まみれになっていたので取り外して洗浄した。内部のニードルベアリングはほとんどグリス切れ状態だったので洗い油で古いグリスを洗い流し、新しいグリスを充填した。 (結果、この部分の洗浄によりクラッチの操作性がかなり向上した。)
ケースがきれいになったところでビニールを外し、プッシュロッド部のピストンを取り外してみた。錆などは発生していないようで一安心。だが、ここに回ってきているオイルまで白い。次は内部の洗浄である。 |
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2005.12.4 59397km |
今日はトランスミッション内部の洗浄からである。灯油とエンジンオイルを2:1の割合で注入し、エンジンを1分ほど回した後で抜いてみた。 洗い油はかなり白くなって出てきたためまだまだ洗浄の必要がありそうだが、この状態でミッションが温まるまで長時間回すのはあまり良くなさそうなのでとりあえずミッションオイルを入れておいた。全体が組み上がったら低速で走行し、もう一度抜いてみることにする。 |
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2005.12.14 59397km |
打痕がついて要交換だったファイナルのピボットベアリングがようやく入荷した。 ファイナルケースから痛んだベアリングを抜いて打ち替えなくてはならないのだが、パイロットベアリングプーラーをかけてみるとうまくセットできない。ベアリングの圧入されている部分が一段高くなっているためである。これではベアリングが抜けないので何か方法を考えなくてはならない。 |
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2005.12.16 59397km |
ファイナルピボットのベアリングはまだ抜けていないのだが他の部分の作業も進めなくてはならない。まだスイングアームが外れたままなのでこちらを先に済ますことにした。
スイングアームの洗浄およびベアリングのグリスアップは済ませてあったので、 ゴムブーツにグリースを塗布して取り付けた。このグリース、新車時に塗られているものと同じ白っぽいグリースで、ディーラーで購入した。 普通のモリブデングリスでも良いらしいが、純正なら安心である。トランスミッションのアウトプットシャフトやドライブシャフトのスプラインにもこのグリースをたっぷり塗りつけておく。スイングアームのピボットベアリングとピボットピンにもモリブデングリースを薄く塗りつける。
書き忘れていたが、スイングアームの取り付けの前にクラッチリリースレバーとピストンを取り付けておく。ピストンには薄くグリースを塗ってからはめ込み、汚れ防止のためビニール袋をかけておく。リリースレバーはスナップリングで取り付けるだけである。 トランスミッションケースへのスイングアームの取り付けだが、スイングアーム(+ゴムブーツ)をトランスミッションケースに強く押し付けるとスイングアームゴムブーツのリップ部とトランスミッションケースがつながるので、続いて左右のピボットピンを差し込むとスイングアームが固定される。このあとピボットピンを締め付ける。締め付けトルクはトルクレンチを用いて正確に合わせることが必要だ。
次はクラッチリリースピストン部のゴムブーツの取り付けである。クラッチケーブルを取り付けない状態でこのゴムブーツを取り付けるとゴムが伸びきってしまうので、 スイングアーム組み付けの後で(=クラッチケーブルを接続できる状態になってから)取り付ける必要がある。汚れ防止のためにかぶせてあったビニール袋を取り除き、ゴムブーツをバンドで締め付ける。クラッチケーブルを接続すれば完了で、クラッチリリースレバーの調整は必要ないはずである。 |
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