【No.1 芥川龍之介 「蜜柑」の碑】

    「蜜柑の碑に書いてる文」
   或曇った冬の日暮れである。私は横須賀線発上り二等車の隅に腰を下ろして、ぼんやり
  発車の笛を待っていた。(中略)するとその瞬間である。窓から半身を乗り出していた例の
  娘が、あの霜焼けの手をつとのばして、勢よく左右に振ったと思うと、忽ち心を踊らすばか
  り暖な日の色に染まっている蜜柑が凡そ五つ六つ、汽車を見送った子供たちの上へばら
  ばらと空から降ってきた。私は思わず息を呑んだ。そうして刹那に一切を了解した。

                                                芥川龍之介



   この文学碑がある吉倉公園は JR田浦駅から歩いて たぶん20分ぐらいのところに
  ありまする。たぶんと言うのは、歩いたことがないから正確ではないけど こんなもんでしょ
  うと思う。(^^;  JR田浦駅はJR横須賀駅の次の駅です。小説の中にも隧道(トンネル)と
  いう言葉が出てきますが、横須賀は日本一トンネルの多い町です。現在のような電車だけ
  なら良いですが、当時の蒸気機関車の時代には辛い路線だったに違いないでしょう。うっ
  かり窓を閉め忘れたら大変です。目的地に着く前に すすだらけなってしまうのですから。
  芥川龍之介も横須賀から鎌倉の自宅まで帰るとき何回か そういう目にあったかもしれな
  いと思う


   この写真の撮った日は冬では無いけど、偶然にも碑に書いてあるのと同じ曇り空でした。
  後ろを走るのは現在の横須賀線です。ちょうどグリ−ン車のとこが写ってますが、昔で言
  えば1等車か2等車になるのでしょうか・・・。 写真右側が横須賀方面、左側がJR田浦
  駅です。