『冬の夜長に徹夜して読む本!第四部』



☆『墜ちる天使』 ウィリアム・ヒョーツバーグ
                      (ハヤカワ文庫) 税込み540円

 「エンゼル・ハート」の原作、と言った方が通りがいいかもしれません。オカルトとハードボイルドのいいところだけ集めました、みたいな小説です。たいていこういう話は最後にSF的になっていくのですが、この小説は最後までハードボイルドです。
 初版は1981年ですが、かなり重版されているようなので、手に入れるのは困難ではないと思います。(私のは十一刷です)

☆『孤独の海』 アリステア・マクリーン
                      (ハヤカワ文庫) 税込み520円

 『女王陛下のユリシーズ号』の、A・マクリーンの作品、と言えばおわかりでしょうか? では、『ナヴァロンの要塞』のA・マクリーンでは? ノン・フィクションを含めた海洋冒険小説の短編集が、この『孤独の海』です。ビスマルク追撃に題材をとった『戦艦ビスマルクの最後』などの話も収められており、その手の話が好みの方にもお薦めですが、やはり、この中に収められているノン・フィクション小説を一度は読んで見て下さい。特に、『シティ・オブ・ベナレス号の悲劇』をお薦めします。きっと、ノン・フィクション小説に対する見方が変わると思います。
 初版は1992年で、それほど苦労しなくても入手出来るでしょう。

☆『眼下の敵』 D・A・レイナー
                       (創元推理文庫) 税別300円

 駆逐艦対Uボートの一対一の死闘を描いたこの作品は、映画化されたのでかなり有名になりましたが、小説の方も一度読んで見て下さい。小説と映画では、少し展開が違います。訳者も気合が入っていて、後書きもなかなか読み甲斐があります。
 初版1986年で少し古いので、書店で捜すのは無理かもしれません。

☆『高度41,000フィート燃料ゼロ!』
   ウイリアム・ホッファー、マリリン・ホナ・ホッファー
                        (新潮文庫) 税込み480円

 もし、旅客機が巡航飛行中に燃料切れを起こしたら……。まさか、そんなことは有り得ない、という方。そんな方はこの小説を読んで見て下さい。これは、フィクションではありません。ノン・フィクション小説です。
 平成2年初版ですが、本屋で捜すのは難しいかもしれません。

☆『アラスカ物語』 新田次郎
                        (新潮文庫) 税込み440円

 表紙と題名を見ただけで読む気がなくなる、という方。まず、一度読んで見て下さい。きっと感動できるはずです。一人の人間の生きざまを描いた小説です。

☆『風の呪殺陣』 隆慶一郎
                        (徳間書店) 税込み460円

 歴史時代小説、と銘打ってありますが、帯の文句が「信長を呪殺せよ!」ですから、展開は自ずと見えてくるでしょう。歴史小説というものに拒否反応がある人も、一度読んで見て下さい。
 後書きに、作者がこの小説の取材のために二度目に赤山禅院を訪ねたおり、叡南覚照大阿闍梨に「仏教が人を殺すかあ!」と凄まじい一喝を受けたと言うエピソードも入っていて、考えさせられるものがあります。

 初版1992年ですが、捜すのには少し苦労するかもしれません。
☆『日輪の遺産』 浅田次郎
                        (講談社) 税別733円

 ともかく一度読んでみて下さい。「しかし、事態は思わぬ方向へ……」という宣伝文句が文字どおり当てはまるストーリーです。そして、最後、結局謎を残したまま終わると見せかけて……最後の2ページ、まさに怖さに震えることが出来ること請け合いでしょう。この作者、ただ者ではありません。

 はっきり言って『リプレイ』と同じくらい万人に薦められる小説です。こいつはお薦めです。


☆『クラインの壷』 岡嶋二人
                        (新潮文庫) 税込み560円

  最初のページをめくるといきなり契約書のコピーが出てくると言う、およそ文庫本らしからぬ始まりで幕を開けるこの小説、題名にピンときた方は、話のオチもひょっとすると見当がついてしまうかもしれません。そうでなくても、勘のいい人なら途中で話のオチはわかってしまうとは思います。

 この手のアイデア勝負の小説で、途中でオチがわかってしまうと言うのは致命的なのですが、それでもあえてここに紹介することにしたのは、それが、いかにも「読者が自力で結論にたどり着いた」と思わせる伏線の張り方の巧妙さによるものであり、決して作者の技量が劣っているからではないと思われるからです。少々「いかにも伏線です」という感じの露骨な張り方ではありますが、これはこれで王道の一つでしょう。作者が自己満足しているような伏線は伏線とは到底言えません。

 謎を残した終わり方もなかなか……こういう「最終的に読者が判断すべきだ」的な終わり方は個人的には結構好みだったりします。オチは「どこかで見たような」ものですが、そのアイデアでここまで面白い話がかければ……って、書評家みたいな話はこの辺にして。

 純粋に面白い小説です。ジャンルとしてはゲーム小説みたいな感じ(そういうジャンルが確立されているかどうかは別にして)ですが、特定の実在のゲームを題材にしているわけではありません。……というか、この小説を元にゲームが創られるようなことになったら、それはそれで結構怖い気はします。


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