鉄道による郵便輸送は、1986年に廃止になるまで全国各地で見られました。 その主役となっていたのが、郵便車たちです。

取扱便用

車内に区分棚を備え、郵便物を開封・区分するいわゆる「走る郵便局」です。 鉄道郵便局ってのがあったわけです。乗務するのは国鉄職員ではなく郵政省の職員。 (編成後端になる場合には国鉄職員の車掌も乗務するわけですが、 信書法で車掌は郵便車内には立ち入れなかったそうです)
区分室用の明り取り窓や床下の集塵機など、独特の装備を持ちます。

旅客の客車列車が軒並み非冷房だった時代に、 作業環境改善と郵便物の汗による汚損防止のためにいち早く冷房化されていました。

オユ10(非冷房)

1957年~1971年にわたり72両が製造された汎用の郵便車です。
全国各地の幹線で運用されており、旅客列車に併結されたり荷物列車だったり、連絡船で航送されたりとあちこちにいまいた。 ほとんどが下のように冷房改造されましたが、 一部の車両は最後まで非冷房のままでした。 KATOのオユ10を"非冷房化"しています。

オユ10(冷改)

オユ10は製造当初はナハ10系などと同じ車体断面でしたが、 晩年は低屋根化の上冷房が取り付けられています。 一般用・北海道用 × 冷房有無で番台区分は多岐にわたりました。

KATOのオユ10は1990年頃の発売。10系寝台車に続いてナハ10とともに発売されました。 その後テールライトの点灯化などの改善を経ながらなんども再生産されています。 この模型は、端梁を取り付け、屋根のベンチレータを別パーツ化したもの。 こちら に詳細ページがあります。

オユ11-1000

オユ10の区分室を広くした車両で、東京~門司~西鹿児島で専ら運用されました。 0番台として製造され、冷房化されて1000番台になっています。 運用区間から電気暖房は最後まで非装備でした。
このタイプの製造は1957年~1966年、11両です。 のち、1971年に100番台が5両製造されます。

いわゆる東門特例輸送方式(受渡駅を整理し、区分業務を縮小した輸送方式)の開始が1972年ですから、 オユ14-200のような「東門特例輸送専用の車両」ではありませんが、 オユ10との違いは運用区間を意図してのことなのではと推測します。 おそらくオユ12などとセットで運用される考えなのでしょう。
オユ11のほうは東京-門司間の限定でしたが、独占というわけではなくオユ10も1000番台は「東門特例車」でした。

模型はKATOからEF61とセットで2022年に発売されたもの。
ベンチレータが別パーツ化され、採光窓付近の表現が格段によくなりました。
このクオリティでオユ10のリニューアルしてくれないかな…と思うのは私だけでしょうか。

オユ11-100

オユ11の増備車両です。こちらも東京~門司~西鹿児島間で運用されました。 晩年はいきなり北海道用に改造され、2550番台になってます。

模型はボナのコンバージョンキットを組み立てたもの。 オユ14、スユ16になだれ込もうと思ったのですが気力が持たず、完成したのはこの1両だけです。

オユ14-200

オユ14のうち200番台は東京~門司~西鹿児島間で運用される、「東門特例車」です。 標準型である0番台とは区分室まわりの配置が異なります。 電気暖房は非搭載ですが、搭載している発電機で自力で発電して暖房できます。 東海道筋のけん引機がEF62になったのにあわせて電気暖房の引き通しは行われました。 2000番台にはなっていないようです。

EF62の下関バージョンとともに、KATOから2020年に発売。 商売的にはわかるんですけど、これやるならスユ16-0やってほしかったですよKATOさん…。 14系「きたぐに」とか、20系「天の川」とか色々楽しめるんですが…。

護送便用

車内で区分作業は行わず、郵袋を運ぶだけの車両です。 東京-門司や、東京-札幌間などの大都市間での輸送に使用されました。 編成的には荷物列車の中に取扱便の車両とセットで各1両づつ、といったものが多いように感じます。

オユ12

オユ10と同世代の車両です。

模型はKATOから2005年頃に突如発売されたもの。オロ11やオハニ36などと一緒に出てきたのですが 何故にこの車両…という登場のしかたでした。 使うとするとオユ10非冷房やマニ60などととセットでけん引機は小窓のEF58あたりですかね。

スユ15(2019-2039)

スユ15は、車体のタイプで3タイプに分けられます。 2001はスユ13(オユ12)とそっくり車体、事故廃車の車両の代替用に製作したそうです。
2002-2018は車体が12系に準ずるタイプ。 雨どいの位置が高くなり、雨どいの下から折れはじめる屋根の曲線が目立ちます。 妻板は切妻で、オユ11-100とかオユ14/スユ16あたりと同系列です。 ベンチレータは押し込み型になりました。
2019-2039は車体は50系に準じます。妻板は折妻。マニ50の郵便車版といった感じ。

模型はこちらもKATOで、「ニセコ」として発売されました。 マニ50とスユ15が青函連絡船を通って東京~札幌~(根室/網走)で運用されていたわけです。

ベンチレータを別パーツ化したほか、ジャンパ栓を取り付けています。

スユ15(2001)

そんでこちらはスユ15-2001。 KATOから郵便・荷物列車としてEF62やオユ14とともにセットで発売。 …といいつつ実はタイプで、単にオユ12の台車をTR217に変えて番号を変えただけのものです。 実物のほうは乗務員室の扉上部にRがついてるとか、手すりとか、いろいろと違うようですが雰囲気は楽しめますね。

オユ11

車体

手すりを別パーツ化するためにキットの妻板は使用せず、 KATOのオユ10冷改をベースにしました。強度的にもこの方が有利です。
このため銘版が1枚多いのですが気にしない…。
テールライトはφ0.8/φ1.0 のパイプと、テールライトレンズを組み合わせて 作りました(点灯化はしていません)。
銀河のテールライトの存在を知らなかったためにこうしただけなのですが、 銀河のテールライトより控えめな表現がお気に入り。
車体高さをKATOのオユ10にあわせるため、屋根もキットに付属のものを 薄く削りました。

塗装

モリタの青15号です。KATOとほぼ同じ色調になり、編成にしたときによく合います。

窓ガラス

KATOのオユ10用をはめこみました。
板厚の薄いエッチングキットにそこまでしなくても… という説はありますが、Hゴムの雰囲気はいい感じです。

ドアの手すりを埋め込んでみました。
ちなみに、区分室の採光窓のガラスを白色にしたのはエラー。
実車はすべて曇りガラスが正解だった様ですが、気づいたときにはすでに接着済みでした。
模型的には、これでも悪くないですね。

オユ10

妻面です。
今はすっかり標準となっている手すりの別パーツ化は、実はこの車両から。
オユ10を非冷房化したとき、やむを得ずはじめたのがきっかけでした。
端梁も作りこんでいますが、それは下で。

端梁です。開放テコ/エアホース/電気暖房用ジャンパを取り付けました。
10系の端梁は形が特徴的で良く目立つため、なかなかよいです。
ナハフ11にも同じ加工をする予定。