2001年5月26日撮影の火星の画像処理について

 ここでは、5月26日に撮影した火星の画像を、処理過程を含めて紹介します。撮影地は、自宅のマンションの2階のベランダです。望遠鏡は、20cmシュミットカセグレンF10のセレストロンC8。接眼鏡は、ビクセンのLV9mmで222倍に拡大しています。カメラは、カシオのQV-3000EX、334画素のデジカメで、ZOOM最大に拡大してのコリメ-ト撮影です。この状態で撮影すると、シャッタ-速度が1/4秒でほぼ適正になります。当日のシンチレ-ションはまあまあよく、透明度は普通でした。

1.ホワイトバランス撮影モ−ド
 火星は赤く輝き、大変淡い模様です。このため通常の撮影とかなり違い、特殊な対象です。そこで、まずカメラ側でコントラスト高、彩度高の設定して模様が少しでもわかるようにしました。そして、どんな色になるかを確かめるため、ホワイトバランスモ−ドを変えて撮影してみました。

太陽光 蛍光灯 電球

以上のように、モ-ドを変えると、火星の色がかなり変化し、模様の見え方が変わります。好みの問題ですが、電球モ-ドの場合が模様が一番分かりやすいので、このモ-ドで撮影しました。

2.画像の大きさ
 私が撮影している画像の大きさは、デジタルZOOMで拡大し、1024x768のピクセルです。この時でも、火星は中心部だけしか写っていませんので、周辺部分は必要ありません。このため、周辺部分をトリミングします。だいたい200x200ピクセルくらいの大きさになります。
 なお、デジタルカメラで得られた画像は、JPG形式です。JPG形式の画像は、画像処理をするたびに画像が劣化しますので、必ず画像をTIFF形式か、BMP形式に変換しておいてください。

3.コンポジット合成する
 これから、画像処理が始まります。デジタルカメラで得られた画像は、いろいろな電気ノイズやCCD自体のノイズがあり画像をざらざらしています。また、大気の影響で、惑星の変形やボケも残っています。これを改善するためにたくさんの画像を合成して、なめらかな火星の画像を得ます。これをコンポジット合成といいます。この作業をする時には、ステライメ−ジ3を使いました。
 
 画像をきれいに合わせる方法は、いろいろありますが、ステライメ−ジ3は自動で合わせてくれますので、この機能を使いました。合成するには、画像を二つ開き、コンポジットコマンドを使い、画像を選択します。こうした後画像マッチングを使い、画像を一致させます。このようにして、次々に画像を合成していきます。合成途中でやめる時は、ステライメ−ジ3のFITS形式で画像を保存しておかないと、情報がなくなっていきますので注意が必要です。また、写りの悪い画像があるとぼけていきますので、なるべく良像を選んでおきます。なおオリジナルの画像はざらつきが多いので、中央値ぼかしフィルタ−中ををかけました。

1枚の画像 8枚合成の画像

 合成前後の画像が上の2つです。8枚合成すると真っ白になっています。これは加算の合成のためです。ステライメ-ジは256階調を越えて処理できますので、画面上真っ白になっても、レベル調整すればきれいに見えます。このままで次の処理をします。

4.色ずれを除く
 デジタルカメラは、赤、緑、青の三色で画像をあらわします。パソコンやテレビも同じです。この時、三色の波長の違いのため、大気によって屈折率が変化します。このまま処理すると、赤、緑、青の画像のずれが起こるのです。下の左の画像をよく見ると、火星の上のふち部分が赤く、下が青くなっています。これが色ずれです。これを修正するには、ステライメ−ジ3のRGB合成のコマンドを使い、赤と青の画像のずれを修正します。RGB合成コマンドを使い、プレビュ−画面を見ながら、Gを固定したままRとBのずれを修正します。2001年の火星は高度が低いので、かなりずれがでています。

修正前の画像 色ずれ修正後の画像

5.ウイ-ナ−フィルタ−での画像復元
 ここまでで、画像がとりあえず8枚の画像が合成されました。ここから、画像の復元です。ステライメ-ジ3で開いた後、ウイナ−フィルタ−で画像復元を行います。今回はPSF半径5、ガンマ0.04で行ってみました。

オリジナル 復元後


6.画像の完成へ

 このあとは自分の好みに色やコントラストを整えます。まず色の調整です。私は、Lab色彩調整で、緑を減少し、黄色を加えてみました。なるべく火星の色に近くなるようにしました。そして、ト−ンカ−ブの調整で、対数を選択し火星の表面輝度を落としました。画像によっては、レベル調整をしたほうがいい時もあります。
 最後に画像を回転させ、南極方向を上にします。一般的に惑星は、南極を上にします。(天体望遠鏡が倒立像だからです。)他の画像と見比べるとき、この方が便利です。
 また、模様のコントラストを上げるため、アンシャ−プマスク処理をかけると見やすくなります。しかし、ざらつきが増えるのであまり強くしないほうがいいでしょう。アンシャ−プマスクは、シャ−プフィルタ−の中にあります。

オリジナル 色彩調整後 ト-ンカ-ブ調整後 像回転後 アンシャ−プマスク処理後


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