太鼓 特集

01. 泉岳寺の義士太鼓(東京都)
02. 東京のでんでん太鼓(東京都)
03. 千厩の豆太鼓(岩手県)
04. 甘木のバタバタ(福岡県)
05. 鹿児島神宮のポンパチとフエテコ(鹿児島県)

01. 泉岳寺の義士太鼓(東京都)



わが国では太鼓は雨乞いなどの祈祷や精霊降ろし、祭りのお囃子や出陣の合図、鳥脅しや時を告げる道具などに使われてきた。もちろん和楽器としても長い歴史を持つ。一般的には欅(けやき)などをくり抜いた胴に、白くなめした牛馬の皮を太鼓鋲で張って製造する。写真は忠臣蔵の討ち入りでお馴染み、大石内蔵助が打ち鳴らす山鹿流陣太鼓。側面は義士巴と呼ばれる文様である。赤穂義士の墓がある高輪・泉岳寺門前で、堀部安兵衛の酒徳利などとともにお土産用として売られていた。玩具太鼓でも本格的なものは、端午の節句で甲冑の前飾りとして用いられる。径11p。(H27.8.30)

02. 東京のでんでん太鼓(東京都)



でんでん太鼓は振り太鼓、ぶりぶり、豆太鼓とも呼ばれる。柄を持って振ると、括りつけてある豆粒が鼓を打ってパラパラと澄んだ音がする。「でんでん太鼓に、しょうの笛」と子守唄にも歌われるように、むかしからあるもので、子供をあやすときや子供の手遊びに使った。江戸時代のおもちゃ絵本「江都二色」にも“振りづつみ”の名で載っている。でんでん太鼓を背負った犬張子を、誕生祝や初参りに贈ることもあった東京27。犬の子のように元気に、でんでん太鼓のように表も裏もない子に育つようにという意味が込められている。同じでんでん太鼓でも、犬山のでんでん太鼓は鼓を打つ仕掛けに一捻り二捻りしてある愛知28。高さ34p。(H27.8.30)

03. 千厩の豆太鼓(岩手県) 



馬産地である一関市千厩(せんまや)に、代々神楽や郷土芸能の和楽器を製作する「太夫黒」という工房がある。ここでは、むかし一関藩(伊達家の支藩)が毎日午前零時と正午に打ち鳴らし、40ヵ町村に時を告げさせたという“時の太鼓”のミニチュアや、馬の皮を太鼓鋲で打った本格的な豆太鼓を作っている。豆太鼓の中には鈴が入っており、太鼓と鈴の音が相俟って、パラパラ、シャンシャンという音色を奏でる。豆太鼓は、“まめ(健康)”を祈る縁起物として日本各地にみられるもの栃木02、愛知29岡山13。岩手県では子供が生まれると、無病息災を願ってこの豆太鼓を贈る風習が今も残っている。豆太鼓の類は世界中にあり、国によって太鼓の形、鼓や豆の材料もさまざま。なかには柄の無い素朴なものもある高さ18p。H27.8.30

04. 甘木のバタバタ(福岡県)



朝倉市甘木の安長寺で、正月の初市(通称バタバタ市)に授与される疱瘡(天然痘)除けの豆太鼓。顔の前でバタバタを振れば痘痕(あばた)が残らないという縁起物である。1977年を最後に地球上から姿を消した疱瘡だが、子供の健やかな発育を願う親たちが今も買い求める。竹枠に和紙を貼り、大豆を糸で吊るす手間のかかる作業のため数に限りがあり、しかも市は2日間のみなので、なかなか手に入らない。天気の良い時にはパランパラン、雨が降る時にはボトンボトンという音がして、天気占いにもなるという。太鼓には男女の童児の顔が印刷されているが、以前は手書きで、絵柄も子供が喜ぶ桃太郎や金太郎であった。高さ31cmH27.8.30


05. 鹿児島神宮のポンパチとフエテコ(鹿児島県)



霧島市隼人にある鹿児島神宮は、信仰玩具の種類が豊富なことから、一名“おもちゃ神社”とも呼ばれている。代表的な縁起物に鯛車水族館03や香箱、弾き猿06などがあるが、太鼓の類にもポンパチやフエテコなど面白いものがある。ポンパチは振り太鼓の一種。音色からそう呼ばれるが、正しくは初鼓(はつつづみ)といい、初午祭の鈴懸馬(すずかけうま)に飾る初鼓を玩具化したもの。フエテコは“笛太鼓”が訛ったもので、笛の先端に紙でできた六角柱の鼓が付いていて、指で弾くとポンと鳴る。ともに高さ28p。H27.8.30

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