江戸時代の価値


   F/1999-8-7

0.現代日本の在り方
  戦後の日本は、米国文化の吸収期であった。しかし、米国の 制度は、日本の自然・平等主義とはやや違うものである。
  このため、文化導入の見直し期になっている。 見直し観点は、日本の伝統文化の再復活であろう。

1.江戸時代の見直し
  江戸時代は、日本文化の消化期であった。これは、 日本の波でお話したように、日本には導入期と消化期の2つがあり、 この最後の消化期であったため、日本の神髄を知ろうとすると、江戸文化の 解析をする必要がある。そして、このいい点を今後の日本の現代風江戸化 に結びつけていきたいと考えている。日本が世界に提案する新しい世界観です。
  江戸時代で完成させた最大のものは、権力構造を3分割したことです。
  江戸流三権分立である。
  1. 富は町人や豪農が担う。
  2. 権力は江戸の貧乏旗本や譜代の大名が担う。
  3. 権威は京都の天皇・貴族が担う。
 というように3権分立が明確化したのです。
農村が貧しいというのは、藩財政が逼迫した一部地域の のことで、日本の大部分は換金作物で豪農ができ、何々御殿 ができたのです。この豪農や商家が近代資本主義を日本に 導入し、米相場では、先物取引もあったのです。
 この米相場では日本独特のロウソク足が発明されて いるのです。
 それだけ、商業経済は発展していた証明です。

  幕府は大政の大権を天皇から預かり、民衆の支持を無くすと政権を 返すと意識していたのです。このため大政奉還を江戸幕府は行ったのですが 薩摩・長州藩は一挙に幕府を潰し、時代の転換を図るのです。

3.労働の価値確立
商業の発展と停滞に伴い、その労働価値を裏づける思想が必要になっていた。
     この思想の需要に、石田梅岩が宗教観と日本の仕事観を結ぶ思想を確立したの でした。
  仕事は、経済的行為ではなく精神的行為との哲学を作ったため、日本がいつも 歴史的に大発展するようになったのです。
  この考え方は、プロテスタントの教義に似ているというが、梅岩は宗教では なく思想であるため、日本全体に普及したのです。
  この思想は、鈴木正三の「仏法則世法」の発展系なのです。 この「仏法則世法」は、悟りの境地に達するために日常の業務を修行とすること と言うのである。この日常の業務を農業や商業行為まで広げたのが、梅岩なのです。
そして「農業即仏行」となり、働くことは善、働かないことは悪となったのです。 日本資本主義の基礎にもなった思想なのです。

この詳細は、山本七平の「日本資本主義の精神」カッパビジネスS54年と
「日本人とは何か」PHP1989年9月を参照ください。

4.伊万里焼きは世界中で価値あり
  オランダの東インド会社の貿易総額の半分が伊万里焼きで占めてした。 それほど、伊万里焼きは重要な貿易品だったのです。
  この伊万里焼きは、秀吉が朝鮮征伐の時、連れて帰った陶工により、できた芸術品 なのです。
  しかし、鍋島藩は、日本国内の有力大名には、青の鍋島焼きを贈呈している。
  キンピカの伊万里は欧州への輸出専用であったのです。
  陶器は江戸時代では最先端技術であり、欧州ではまだ色や艶が十分できなかった ために、伊万里がもてはやされたのです。
  南宋が元に滅ぼされた時、陶工が朝鮮やベトナム等に逃げていったのです。
そして、秀吉が朝鮮遠征時に連れ帰ったのです。

5.循環型社会構造
  閉鎖空間であった日本で、サイクル型環境保全と農業生産性の向上を最大限に高 めた時代でもあるのです。
  紙の原料はコウゾ、ミツマタという多年生の植物で、木のような何十年の生育が 必要ではない。
  里山が必ずあり、ここで薪やキノコ等の採取をしている。
  この里山の多くは現在ゴルフ場となっているのです。

6.今後の日本精神復活に向けて
  この江戸時代の精神の多くが現代の日本人に精神的バックボーンとなっている のですが、今後日本が世界に向けて発信する基盤は、江戸文化の分析し、 日本自体を明確にしていくことだろうと思いますがどうであろうか?

7.この問題での資料
  山本七平のいろいろな著作。
  石川英輔の大江戸シリーズ。   などです。

コラム目次に戻る
トップページに戻る