2月2日(月) グランドキャニオンの谷底で 14:20、ついに、グランドキャニオンの谷底「ファントムランチ」に到着 した。ファントムランチは "幻牧場" とでも訳すのがいいのかな? 周囲を崖 に囲まれた原っぱに、小さな小屋がたくさん点在している。 サウスリムの崖がはる〜か彼方に、うっすらと見える。あんな遠くから歩いて きたと思うと(そして、また明日登って行くのかと思うと)、気が遠くなる。 ファントムランチがあるのは、ブライトエンジェル・キャニオンと呼ばれる谷 〜サウスリムからグランドキャニオンを見たとき、ほぼ正面にある、崖に対 して垂直方向にのびる一番大きな裂け目〜 の間だ。だいたいの位置は、サウ スリムからも見当がつく。
2月と言えば真冬なんだけど、ファントムランチはすでに春のような気候(夏
にきたら暑すぎる?)。きれいな小川(ブライトエンジェル・クリーク)が流
れていて、草木も多い。荒涼としたグランドキャニオンの底に、こんな場所が
あるなんて、ここに来るまでちょっと想像できなかった。
キツイ道のりを歩いて行きたいと思った人だけが行くことのできる、秘密の楽園って感じだった。 他のお客さんたちが、木々の間で楽しそうに談笑している。 とりあえずチェックインをするため、中心らしいわりと大きい建物に向かう。 扉を開けると、売店 兼 食堂 兼 フロント のようだった。 ファントムランチの客室には、ドミトリーとキャビンの2種類がある。 ドミトリーは他の客と一緒の大部屋(男女別)で、キャビンは一戸建ての個室。 僕らが予約したときは、ドミトリーしか取れなかった。新婚旅行で来て、男女別の部屋ってもの悲しいものがあるので、キャビンへの変更を交渉する。 「うぃ あ〜 いん はねむ〜ん」と言うと、係のお姉さん(ということにしておこう)が、めちゃくちゃ照れ笑いして、『まぁ、いいわね〜(笑)』みたいなリアクション。
ちょうど空きがあったみたいで、あっさり承諾、差額の支払いのみですんだ。
お姉さんが『2番のキャビンよ。私のお気に入りなの。』と案内してくれたのが、一戸建ての宿でびっくり。
木と石でできた、可愛らしい、暖かい感じの建物だった。
表札(部屋番号)が鶏の形をしている。内装もいい味。
宿泊費はというと・・・内訳はちょっと忘れたが、 部屋代 + 食事代(夕食と、翌日の朝食、昼食(持ち帰り))あわせて、 2人で約120ドルだった。はっきり言って安い。 部屋にはトイレと洗面台が備え付けられているが、ちょうどこのときは水道管 の故障で水は出なかった。用を足したらバケツの水を流し、井戸まで水を汲み に行って、補充しなければならなかった。しかし、全く水がないのかと心配だ ったのだが、小川も流れているし、顔を洗ったりするのには困らなかった。 早速、その小川(ブライトエンジェル・クリーク)まで行き、手足や顔を洗う。 気持ちよかったが、雪解け水はすんごく冷たかった。 その後、再び小川の下流方向に戻り、コロラド川との合流地点まで歩く。小川 沿いはキャンプ場になっているようで、テントが並んでいた。気持ちよさそう だったが、ここまでテントを運んで来るのも大変そう(ラバで来たのかな?)。
コロラド川との合流地点付近には、ラバの厩舎があった。ラバたちが沢山いて、
しばらく遊んでくれた。彼らはほんとに人なつっこい。
そして、コロラド川のすぐ近くまで行く。赤い河との異名もあるコロラド川だ が、冬は水がきれいで、深い緑色をしている。売店で売ってた絵葉書には、ち ゃんと赤い泥川として写っているものもあった。
川のほとりの大きな岩の上で昼寝。激流の轟音が心地よい子守り歌になって、
1時間くらいも眠ってしまった。目が覚めると、波留子は「赤い河にさわって
きた」と、うれしそうに言ってた。
ファントムランチに戻ると、再びベッドで熟睡してしまう・・・。いつの間に か真っ暗。18時を回っていた。間もなく鐘がなり、夕食の時間。(帰ってか ら気付いたのだが)夕焼けをみそこねた! でもまぁ、またいつか来る理由が できたのでいいか。 夕食は、食堂で、他のお客さん30〜40人と一緒にとる。 ディナーメニューはステーキとシチューの2種類があり、どちらにするかは予約時に決める。 ステーキ組は17時に、シチュー組は18時半に、 それぞれ食堂に集まってみんなで一緒に食べる。 こってしりたシチューだった。 "シチュー" や "スープ" というと、僕はどちらかというと液体というイメージを持っているが、 アメリカのそれは、固体部の比率が非常に多く感じた。 いろいろと話しか けられて、カタコトの英語で対応。他のお客さんは白人さんばかり、モンゴロイ ドは僕ら2人だけだった。同じテーブルについた人たちが、一生懸命カタコト 英語に耳を傾けてくれてて、意味が通じるといっせいに「うんうん」とうなず いてくれるのが、おかしいやら、情けないやら・・・(^^;; 向こうのテーブルは、ミュールツアーでやってきたみなさんなようで、引率の レンジャーが人気者になっている。ファントムランチの従業員も皆気さく。こ んな所で働けるなんて、ちょっとうらやましい。ホントにいいところだった。
食堂にラバの郵袋が "ポスト" として掛けられていて、これに手紙を入れると、
ラバが郵便物を谷の上まで運んでくれるらしい。後で絵葉書を買い求め、日本
の友人に手紙を書いた。
明日は、朝早く出発の予定。もったいなかったけど、夜10時半には就寝した。
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