2月2日(月)
谷底を目指せ〜サウスカイバブ・トレイルの旅〜

トレイルを下りはじめて1時間。最初の休憩所に着いた。

■10:00AM シーダー・リッジ到着
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シーダー・リッジ(標高1756m)
出発地点からの距離:■■2.4km (■=1km)
出発地点との標高差:◆◆◆◆457m (◆=100m)
出発からの経過時間:★★1時間 (★=30分)
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上から見えた小屋はトイレだった。 この辺で雪はなくなっていた。 手元の温度計では気温2〜3度だけど、体は暖まっているので寒さはさほど気にならない。 少し休んでから、ふたたび真っ赤な土の道を下りはじめる。

とても静かで巨大な渓谷の内部。 だだっぴろい空間の中に自分たちがポツンと存在している。 その孤独感がなんとも心地よい。

でも、たまにほかの旅人を見かけたり、人の気配を感じたりするときは安心感を覚える。 登りのハイカーとすれ違う度に、「Hello」「Hi」「Good Luck」等と声をかけあう。 だいたいみんな笑顔で挨拶を返してくれるけど、なんか疲れてるような・・・。 僕らは下りでルンルン気分だが、すれ違う人たちは谷底から登ってきてるのだ。明日は我が身。

途中、トレイル上にある大きな岩盤を、ドリルで砕く作業をしている人がいた。 かたわらには、彼が乗ってきたラバが繋がれている。自分たちのような素人の 足でも谷底を目指せるのは、こういったスタッフが道を整備してくれているおかげ。 「ガガガガガ!!!」とかなり大きな音を出していたのだけど、 通り過ぎてしばらくするとその音もはるか後方の谷の中に消えて、また静かになる。

・・・・。

時には急な崖をスイッチバックで、また時には緩やかな斜面をまっすぐにのびる道。 複雑な地形の渓谷内の少しでも歩きやすいところを縫うように、トレイルは続く。 どんどん変わる風景。 真っ赤で巨大な岩のかたまり、まばらに生えている植物などを目にしつつ、道を進んで行く。

■11:20AM リスに出会う
とにかく静か。「elavation4700」という看板。 気温は5度くらい。ひなただと10度くらいになり、少し汗ばんでくる。 いつの間にか、地層の色が赤から緑っぽい白い色に変わっている。

この辺りで緑色のリス2匹と出会う。ちょっとホコリっぽい砂漠の植物の色。 保護色で注意しないと見失ってしまいそう。 「手を出す」「えさをやる」等は自然保護の観点から御法度なので、 距離を保ったままカメラに収めようとしたが、 岩と岩の間へ隠れてしまったきり見えなくなる。 生き物なんて住んでそうには見えなかったが、こんなところで何食べて生きているんだろうか。

ほどなくして登りのラバ5頭とすれ違う。 観光客のツアーではなく、物資を運ぶラバらしく、先頭の1頭だけに人が乗ってる。 後ろの4頭は、おとなしく先頭について歩く。 たった今僕らが下りてきた斜面のスイッチバックを、折り返し折り返しきちんと並んで登って行く。 エライもんだ。【写真】

■11:30AM コロラド川が見えた
突然、岩と岩の合間から、はるか下方を流れるコロラド川が見えた。 この道を下って初めて見るコロラド川。「ゴーッ!!!」っという川の音が届く。 少しの間立ち止まって、その迫力を味わう。 "赤い河"と呼ばれている川だが、このとき見えたのは緑色の流れだ。 川辺までこの後2時間も道を下るほど離れているのだが、音が実によく聞こえる。

歩きはじめて、川が谷の死角に入って見えなくなると音もパッタリ消える。

途中暑くなり、コートを脱いでリュックにつめる。

やや緑がかった地層を歩いて行くと、緩やかな斜面が広々とした開けたところに出る。 はるか前方には対岸の崖壁が、左から右へとそびえ立っている。 【写真】

■12:00PM 次の休憩所に到着
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トント・トレイルとのジャンクション(標高1219m)
出発地点からの距離:■■■■■■■7.1km
出発地点との標高差:◆◆◆◆◆◆◆◆◆994m
出発からの経過時間:★★★★★★3時間
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ここでランチタイム。道を少し外れてすばらしい景色の真ん中で昼食を取る。 昨日、スーパーのデリで購入したベーグルなどだが、すごく美味しく感じた。 オレンジをかじって、牛乳を飲む。ん〜、うまい!【写真】

■12:30PM 食事終了、再出発
その広場の先から、急に渓谷が深くなっている。 いよいよ川に向かって、険しい斜面を下って行くのだ。 再びコロラド川が見えるポイントがあったが、さっきよりもかなり近づいている。

また真っ赤な土が目立つ層に至る。植物は少なくなり、いっそう荒涼とした風景。 巨大な岩土の山すそを道がのびている。 先を歩いている旅人がとても小さく見え、渓谷の巨大さが感じられる。【写真】 はるか対岸の崖の地層と、自分たちのいる土の色を見比べて、今どのくらいの高さの位置にいるのかを見当つけると同時に、自分たちの存在のちっぽけさも何度となく感じた。

このあたりだったかな? "パノラマポイント" という標識の立った場所があった。 近くに岩壁などの障害物がなく、360度グルリとキャニオンを見渡せる場所だ。 写真を撮ろうとしたが、この迫力をフィルムに収めることは不可能と思い、あきらめた。

やがて、眼下に吊り橋が見えた。 谷底を流れるコロラド川もかなり見渡せるようになってきた。迫力の流れ。 その轟音を耳にしながら、橋めがけてスイッチバックする崖の道を下って行く。 傾斜が急なので、油断するとついつい早足になってしまう。スピードをおさえつつ、一歩一歩確実に歩む。 小さかった吊り橋が、近づいてくる。川も次第に大きくなってくる。【写真】

吊り橋の手前は、岩を掘った短い洞穴。暗闇の道を抜けると、突然コロラド川の真上に出た!

■13:40 吊り橋を渡る。
ブラックブリッジを通過。名前の通り黒い吊り橋。 コロラド川〜グランドキャニオンの谷底〜にかかる立派な釣り橋だ。 高さもかなりある。川幅(橋の長さ)60〜70mといったところか。 流れは結構早い。音もすごくて、かなりの迫力だ。 今この瞬間もコロラド川は渓谷を削り続けているのだということを肌で感じる。

橋を渡ると道は川に沿ってのびていた。左手に川を見ながら西へ向かう。 もうここは谷の最下層なので、傾斜はほとんどなくて楽チン。 川辺なので植物もそれなりに多い。サボテンも生えている。 インディアンの遺跡もある。こんなところで、どんな生活をしていたんだろう。

振り返ると10頭弱のラバのツアーが、さっき僕らが渡ってきた橋を一列に並んで通過していた。【写真】

ブラックブリッジを渡って20〜30分歩くと、1本の小川がコロラド川に合流している地点にたどり着く。 上から見たときはわからなかったが、コロラド川の削ったメインの渓谷に対して垂直方向に、谷を刻んでいる小川の1つだ。

ここでさっきのラバツアーに追いつかれる。 ラバの上にのってるお客さんたちは楽しそうな顔で「Hi!」と声をかけてくるので、手を振り替えす。 一方ラバを見ると、荷物も人間も区別してない(?)らしい。 先頭の1頭に黙々とついていってるだけのようにも見える。

小川はブライトエンジェル・クリークという名前。『ファントム・ランチ』は、その上流にある。 コロラド川を背に、小川の上流方向に向かう。小川沿いはさらに緑が多い。 "グランドキャニオン"という言葉からイメージされる、不毛の砂漠的な気候ではない。 気温も暖かく、春のよう。

川の合流地点から歩くこと5分か10分。前方に木造の建物群が見えてきた。 さっきのラバツアーのラバたちが停められており、その横で人たちが談笑している。 挨拶をかわして小さな門をくぐる。

■14:20 ファントムランチに到着
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ファントム・ランチ(標高780m)
出発地点からの距離:■■■■■■■■■■■11.1km
出発地点との標高差:◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆1433m
出発からの経過時間:★★★★★★★★★★5時間20分
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5時間以上にわたる、谷底への旅もついにゴール。【写真】

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