要旨
 現在の精神障害者に関する福祉施策は、他の障害(知的障害、身体障害など)福祉施策に比べて立ち後れているといわれている。本論文において、このことについて統計資料などを中心に論述する。
また、とかく精神障害者に対するサービスが、同じ福祉分野であっても分断され、総合的に供給されていないのも現状である。本論文のテーマである福祉施策再編とは、様々なサービスが精神障害者に総合的に供給されるにはどのような理念が適切であるか、さらにその理念から実際にどのような制度間での連関できるのかを論じることにある。
 具体的には、昨今、精神障害者を巡る取り組みが、いわゆる「医学モデル」から「生活モデル」への転換し、ADLの自立を中心としたリハビリテーションからQOLの実現をめざしたリハビリテーションへ展開しようとしていることを論述し、福祉領域における役割について考察する。こうした意味で、トータルリハビリテーション理念が適当と考える。
 それは同じ福祉分野においても、精神保健福祉制度が社会復帰や地域生活支援など精神障害者福祉施策の実際を行い、生活保護制度は経済的給付のみでよいとする通説がある。しかし、トータル・リハビリテーション理念は自立や人権の復権をめざした総合的な理念であり、その中にあって、生活保護制度と精神保健福祉制度は、自立を柱にして密接につながっており、生活保護制度の意義は積極的に捉える必要があることなどを論述する。
 以上により、精神障害者福祉施策の役割を明確にし、さらに精神障害者にとってのぞましい「在り方」について考察する。
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