第3章.生活保護制度と精神障害者の現況
はじめに
 これまでの論考で精神障害者福祉施策の現況について分析し、論述した。結論として、他の障害に比べて手当などの具体的な福祉サービスの少なさが目に付くこと。また、社会生活の視点で見た場合に、社会復帰施設が医療法人である場合、精神病院の敷地内にある傾向があり、地域性ということについて疑問な点が多いこと。さらに、精神障害者福祉施策として、通院医療費公費負担が含まれ、医療費の圧迫が福祉施策の財源を圧迫していることなどを考察した。
 しかしがら、精神障害者のとって生活保護による経済的給付が唯一の生活の保障として捉えられている側面がある1)
 以下、実際にどのくらいの人が生活保護を利用し、どの様に機能しているのかなどについて論述する。

第1節.生活保護の受給状況について
第1項.生活保護行政による精神障害者の把握などについて
 昨今、セーフティネットの活用の観点から生活保護制度のありかたについて最近見直す動きが見られている。この背景には、いわゆる失業・ホームレスが増加しているという社会問題が顕在化していることによる。つまり、稼働能力があることが自立可能性としての視点である。しかしながら、精神障害者については、いわゆる要看護ケースとして取り扱われ、処遇方針として、就労指導されることは少ないといわれている。それでは、実際に、どのくらいの人がどの様な扶助を受給し、年次的に推移しているのであろうか。
 生活保護制度の各種扶助の年次推移は以下のようになっている。
(人)
表3-1
表3-1.各種扶助年次推移 出所(「生活動向の動向」)

・本資料では、平成13年度までのものと14年度の統計が記載されたものが混在している。他の統計との関係から5年間隔で区切ることとし、平成12年を載せる。
 昭和60年をピークに生活・住宅・教育・医療扶助などが暫時減少傾向にあったが、いわゆるバブル崩壊後は緩やかな増加となっているのが分かる。その中にあって、生活扶助の昭和50年から60年の間に108866人、医療扶助が126704人と増加しており、受給の多さは際だっている。さらに、生活扶助の受給者数の変動については、昭和50年から昭和60年は、16.0%の増。昭和60年から平成7年は50.0%の減。平成7年から平成12年は24.1%の増と社会経済情勢に連動していることが分かる。一方、医療扶助受給者は平成12年は昭和60年のピーク時の94.8%であり、その変動幅は少なくその対象者の固定的な傾向があるといえる。
 さらに、医療扶助に関する疾患別では以下のようになっている。
(人数)
表3-2
表3-2.入院・入院外疾病区分年次推移 出所(「生活保護の動向」)
 歴史的には、昭和30年代には結核患者の入院による医療扶助の受給者が約94000人、入院外でも約47000人おり、そのころの精神障害者の入院外は約2800人であった。結核に関しては、昭和40年には約16000人となり、昭和56年を最後に国の統計には医療扶助は消失している。医療の進歩などによって罹患者が減少していったこと。さらに、「1967年には結核病床を精神病床に転換する方針」(藤井〔1997,p.89〕)が示され、精神科病床がきわめて増大したという背景がある。
昭和45年頃から、精神障害者の長期入院などの疑問視や人権擁護などの動きもあり、地域社会への施策が進められてきたとはいえ、それでも平成2年から12年の間の減少は、約5000人である。また、入院の精神障害者が占める割合は、昭和50年では約57%、平成12年では約43%であるが、その割合が他の疾病と比べ依然高い傾向にある。
 さらに、入院外においては、通院医療公費負担の制度が昭和40年の精神衛生法改正により設立されてから増加の一途をたどっている。(昭和50年では3%であったのに対し、平成12年では12%)たしかに、通院医療の公費負担制度は精神障害者にとって地域生活をしながらも医療を受けることが容易になったとはいえ、低負担であっても生活保護を受給する人が増加していることを示している。
 さらに、入院者の支払方法であるが、このことについては、「Q県患者調査」から年次推移を追って提示する。
(人数)
表3-3
表3-3.Q県精神病院入院患者入院費用年次推移 出所(「Q県患者調査」)
 昭和50年では、生活保護での支払いが39%であり、措置入院が27%、社会保険や健康保険による支払いが31%であった。措置入院者の減少は昭和58年をピークに減少し平成2年には二桁に達するが、保険による支払いは昭和63年から横ばいになり、生活保護は緩やかに減少していることが分かる。平成12年においては約18%以上が医療扶助によって支払われている。
 通院患者については、「衛生行政報告例」で通院公費医療費負担申請などから把握できる。
 (人数)
表3-4
表3-4.通院医療公費負担申請 出所(「衛生行政報告例」(平成14年度))
 国民健康保険による支払いが最も多く、全体の約49%である。次に被用者保険の本人分は全体の9.7%であり、所得額は別にして社会保険適用職場に勤務していることを意味している。生活保護(医療扶助)の割合は約14.7%で、また、被用者保険の家族や(一概にいえないが)国民健康保険は本人が負担せず、扶養されていることを示していると考える。
 この費用負担など在宅での状況について、全家連(2001,P.17)によると、在宅者のうち、医療費支払い区分で、5.3%の人が医療扶助を利用しているという調査結果が出ている。また、同様に、全家連(2000,P.15)の「定期的な収入」については複数回答の中に生活保護が定期的な収入と回答しているのが、18.6%となっている。
 親と同居している割合として、全家連(2000,P.11)では、63.2%の人が同居しており、単身者は21.1%という調査結果が出ている。
 Q市における各扶助の推移は以下である。
(人)
表3-5
表3-5.Q市生活保護扶助別年次推移 出所(「Q市福祉概要」)
 表3-1でも示したようにQ市においても、同様に、全体的に昭和60年をピークにして生活扶助・住宅扶助は減少しているが、平成12年から上昇傾向にある。また、入院外の医療扶助も暫時増加傾向にあるし、入院による精神障害者の医療扶助の減少率も少なく、表3-2よりも減少幅が少ないし、入院に限っていえばほぼ変わらない実数となっている。ただし、表3-2では統計上昭和56年を最後に結核患者が医療扶助から消えているのに対して、この表では減少しているとはいえ実数として挙がっている。いずれにしろ、ここのおいても医療扶助で精神障害者が占める割合は、入院においては昭和52年では56%、平成12年では60%であり、入院外では、昭和52年では約4%であったのに対し、平成12年では15%であり、表3-2との比較では、入院外ではほぼ同じような割合であるが、入院では表3-2では減少しているのに対し、この表では増加している。このことは、第1章で述べたようにQ市に精神病院が集中していることと関連があるといえる。
 さらに、生活保護の開始事由については以下の通りである。
表3-6
表3-6.Q市生活保護開始事由 出所(「Q市福祉概要」)
 このことから傷病によるの開始事由は他の理由を大きく引き離している。もちろん、様々な傷病があり精神障害だけが理由ではない2)が、先に述べたように、バブル崩壊後、勤労収入の減少喪失による生活保護開始が増嵩しているが、それでも約1.7倍以上である。このことから傷病により被保護世帯となるケースが圧倒的に多いことを示している。

第2項.精神障害者の生活保護受給の理由について
 知的障害、身体障害者の生活保護受給状況どのくらいの実数なのかは把握することは出来ないが、精神障害者の生活保護の受給状況はある程度把握することが出来る。生活保護を受給する要件の分類に精神病によるという項目が入ったのは昭和30年代からである。精神障害者の生活保護の適用は、施策の背景として、入院の場合、世帯分離し医療扶助単給として一般に認められやすく、「病床の増加が生活保護受給に結びつく場合も少なくなかった」(藤井〔1997,P.91〕)と言われている。
 さらに、精神障害者が生活保護を受給する要件はいくつかあり、
(1)精神障害者は無年金者3)は別にしても障害年金の取得状況に関しては、全家連(2000,P.16)によるとほとんどが障害基礎年金2級であり、その割合は54.4%である。さらに、全家連(2000,P.17)において障害厚生年金の場合は3級の割合が多く61.3%であり、1級は3.9%、2級は21.8%である。このことは精神障害者の障害年金の等級が一般に低いといえる4)
(2)また福祉施策の進行状況にも関係するが、仮に障害基礎年金1級+特別障害者手当を加味しても生活保護費には届かないのは他の障害者も同様である。しかし、他の障害に関しては、授産施設、グループホームなどの地域生活支援などのハード面の整備が進んでおり、また十分とはいないが就労に関しては雇用率制度などが存在する。
 さらに、身体障害者に関しては、表2-9などから障害者住宅整備資金の貸し付や市町村による福祉手当などが期待できる。あるいは、労災、障害厚生年金なども障害になった時点で支給され、さらに重度であればあるほど、所得面での保障は十分になり、生活保護の基準を超えることができる。しかも、身体障害者のうち、肢体不自由が圧倒的に多く、さらに高齢になってから障害を被るケースが多いことから、第2章(表2-5)で触れたとおり、拠出制である障害厚生年金も十分に期待でき、所得上保障されていることが多い。
 知的障害者に関しては、乳幼児期の発達上早期から判明し、重度であれば各種の施設や在宅で保護されているケースが多い。また、いったん施設に入所した場合の十分な施設での予算面の裏付けのもと行われることは(表2-5,2-7,2-8)で述べたとおりである。そのため、いったん施設入所をした場合、良いか悪かは別にして、本人の低負担で障害基礎年金の中であっても生活できるシステムである。
 しかし、精神障害者の場合、特に統合失調症については思春期あるいは生産世代において発症しやすく、まさにこれから社会保険を払うか払わないかの時期に発症しやすい。そのため、拠出制の障害厚生年金の支給額があまり期待できない状況である。また、福祉施策の遅れもあり、福祉施設数の少なさから生活上の保障が十分でははなく、予算的な裏付けもない。仮に作業所での工賃があったとしても、障害基礎年金2級+多くても工賃は10,000円であり5)、結局、生活保護を頼らざるを得ない状況であると考える。
 しかし、前述(表3-4)のとおり、家族との同居が精神障害者には多い。このことは、福祉サービスの少なさから、扶養されて与えられた生活をしている青年、中年の精神障害者が多いことが推測される。家族に扶養されていることについては、それぞれの思惑や関係があるし、さらに退院するには家族の介護や経済的面での受け入れが大きな条件になっているにもかかわらず、それでも家族が退院させたいという気持ちを考えると決して悪いとはいえない。また、地域社会で生活する単身の精神障害者にとっては、単身生活がよいかは別にして、自立した生活を営む際に生活保護は重要な制度であるといえる。
 さらに、精神障害者の受け皿として保護施設の存在があるが、特に、救護施設について、現在どの様になっているのかを明らかにする。

第2節.保護施設と精神障害者の関係について
(施設数)
表3-7
表3-7.全国保護施設数年次推移 出所(「社会福祉施設調査」(平成15年度))
 この表より、現在救護施設は180施設あり、この数値は他の保護施設、更生施設、宿所提供施設が年次推移の中で減少していく中、微増を続けていることが分かる。施設数からも実質、保護施設とは救護施設であるといえる。保護施設設立に関する背景などは、敗戦直後にまでさかのぼることができ、岩田(1985,P.181)によると「居宅保護の補充として従来からの「鰥寡孤独」の分類をより近代化し、専門施設施設として効果を高めようとした」と言われている。しかしあくまでも保護施設への収容は補充であり、精神障害者はまず、精神衛生法に基づいた病院への入院を主体としてきた。よって、昭和25年において救護施設は13施設、授産施設は昭和30年に417施設、更生施設も昭和35年に71施設あった。
 区分や専門性の在り方については様々な論点があるが、更生施設が「養護指導を加えることにより社会的な基準に復帰し得る可能性のあるものを対象とする施設」であり、救護施設は「一般社会と隔離し日常生活を平穏に送らせることを目的とする施設」という位置づけで、特に障害の区分などはなかったと考える。
 しかしがら、1957年から緊急救護施設として精神障害者の退院後の受け皿となってきたこと、1980年に第一回精神障害寛解者処遇研修が開催されることや1981年の国際障害者年から精神障害者の社会的入院が問題視され救護施設へ移動してきた経緯6)など、救護施設が精神障害者の退院促進を担うようになり、唯一といってよい一つの大きな受け皿となってきた。しかしながら、精神障害者の数からして県単位に1〜2ヶ所では少なすぎる数値であるといえる。
次に救護施設入所者の障害別については以下のとおりである。
(人)
表3-8
表3-8.救護施設入所者障害別 出所(「全国救護施設」)
 全体として、障害が重複している傾向が強く、多様な障害が混在していることが分かる。その中でも、精神障害があるのは、重複も含め8350名であり割合として50.3%にのぼる。しかし、この傾向は、各施設によって特色があるといわれ、100%近く精神障害者を専門に入所させている施設もあれば、混合している施設もある。しかしながら、やはり全国的に見て救護施設の入所者は精神障害者が多く定着しているといえる。
 さらに、同調査によると「入所依頼の状況」については713件中、福祉事務所が538件でもっとも多いのは当然として、現在も精神病院からの依頼が76件あり、さらに「定員以上の施設へ依頼」は、56件であった。このことは定員オーバーであっても、病院側から様々な理由があるにしろ受け入れてきたことを意味し、その関係性は強いといえる。
 また、「受診科別」においては、平成13年の9月1日から30日の1ヶ月間の受信状況として挙がっており、以下の割合になっている。複数回答のため(同一者が複数受診しているため)割合のみを提示し、さらに10%を越えていたもののみを抽出する。
(%)
表3-9
表3-9.救護施設入所者通院別 出所(「全国救護施設」)
 内科に対する通院は多様であり、例えば風邪などでも受診するため当然高く、神経精神科についても、精神障害者だけではなく、知的障害者の定期の医療相談にも利用されるため一概にはいえないが、単科としては大きい割合を示していることは明らかである。
 次に、「入所期間」については、よく言われているように長期化の傾向にあり、
(人)
表3-10
表3-10.入所期間別 出所(「全国救護施設」)
 10年以上20年未満が、21.8%、20年以上30年未満が18.1%となっており、少なくとも1990年までに入所し現在に至っている割合は52%であり、この傾向は、例えば、Q県のある救護施設でも同様であり、年次推移として示すと以下のようになる。
(人数) 
表3-11
表 3-11.Q県ある救護施設における入所期間年次推移 出所(ある救護施設業務報告より)
・平成10年度以降、細分化されて期間に統一性がないため平成10年までとする。
 このことから、新規の入所者は例年数名いるが、年次を追うごとに長期にわたり、入所者がそのまま生活していることが分かる。このことは、救護施設に入所した後に自立生活をする基盤や専門施設への移行が困難な状態である。
 この施設は、開設は昭和37年であり、Q県においては二つしかない救護施設のうちの一つである。その施設の利用者から統合失調症の寛解者であったが、「福祉事務所に少しこの施設に入って休養しなさいと言われて、2年くらい出られると思ったがいつの間にか15年になってしまったよ」と話されたのが印象に残る。特に、精神障害者の利用者には、ここにいる意味が分からないと言った事もよく聞かれたし、かといって意欲的というわけでもなく、停滞した雰囲気と見通しのたたなさが漂っていた。
精神障害者に限って言えば、退院後の受け入れ先なく入所、退院後の単身生活困難という理由で、いわゆる寛解状態になり安定しているが、地域での生活が困難などが入所したが、同様の理由で、長期入所になっているといえる。
 では、どの様な理由で退所するのかということについては、以下のとおりである。(なお、過去一年間の退所者の状況である)
(人)
表3-12
表3-12 退所者数及び退所理由 出所(「全国救護施設」)
 この入院については、様々なことが考えられるが、入所理由、障害者別の割合からも主に精神病院であることが推測される。その割合としては、24.4%である。しかも、この退所には操作が存在し、長期入院は病床の単価が落ちるということで、外泊治療などの名目で一旦退院させ救護施設で一泊し、再び入院を繰り返したケースなども存在する。この一年間による退所とはそのような理由が含まれていると考えるべきである。
 さらに「利用者の考えられる今後の進路」という調査項目では、現在の救護施設に継続入所がのぞましいと判断されているのが、13107名(79%)である。また、長期入所から高齢化により介護保険施設への入所が望ましいが796名(4.8%)、介護保健施設以外の老人福祉施設へは858名(5.2%)であり、この数値はかなり高齢であるか、心身上の問題を含んでいる高齢者であることが推測される。精神障害者に関しては、社会復帰施設への入所が95名、入院が226名などである。この数値は、精神障害者の入所者数に比してあまりに少ない数値であるり、精神障害者への処遇に積極的働きかけがなされていない問題性を含んでいるといえる。
 最後に、保護事業について、救護施設180施設中176施設が回答しており、複数回答を含みながらも地域生活支援など何らかの事業が行われている。その、実施状況については以下のとおりである。
表3-13
表3-13.保護事業実施数 出所(「全国救護施設」)
 救護施設は、社会福祉の進展の中で、単に平穏な生活を保障するだけでなく、どのように生き甲斐を持ってもらうのか、自立とは何か、地域のニーズや関係性を持つにはどのようにすればよいのか模索してきた経緯がある。そういった意味で、保護事業は救護施設が入所のみで完結することなく、地域へと展開していく可能性を秘めているといえる。
 その保護事業の実施状況であるが、老人ディサービス、ショートスティ事業が多く、このことは、入所期間の長期化による高齢化に対応したものである。精神障害者に関しては身体障害・知的障害者に比べると事業数が少ないとはいえ、退所者への自立支援の機能があれば、精神障害者の地域生活支援がより促進されると考える。しかしながら、当然単独での実施は困難性を伴い、他職種との連携、社会資源の整備・保障などがあってはじめてできることである7)

第3節.考察
 本章において、精神障害者が単身で生活する上で生活保護は重要な制度であり、また、精神障害者にとって入院・外来に関わらず生活保護(医療扶助)受給者が高い割合である実態が明らかになった。
 保護施設においても救護施設に精神障害者が多く存在し、救護施設の性格上、生活保障に観点が置かれていることを念頭にし、入所期間が長期化していることが明らかになった。生活保護制度の問題点やあるべき姿については第5章、第6章で述べるが、いずれにしろ、精神障害者は福祉サービスや基盤がいまだ他の障害に比べ十分でないことと関連して、生活保護を受けざるを得ない状況であり、それは翻っていえば、経済的基盤の脆弱さを示している。そして、精神病が障害者として認知されてから日も浅く、施策上、急激に発展することはありえず、徐々に整備されていくことを考えれば、生活保護制度の持つ役割はいまだ重要であるといえる。

注釈
1)小野(1997,P.35)では「特に労働不能で自立更生できない障害者であっても個々人は主体的生活者として、精神的に独立し社会参加と自己実現を果たすことを意味している」としている。
2)なお、傷病別において精神症、神経症、人格障害による開始が昭和50年では、67人、平成12年では23人おり、それぞれ全体の約23%を占めていた。その他、循環器による傷病もほぼ同数であった。
3) いわゆる、1991年までの学生無年金者といわれる存在があり、統合失調症においては10代〜20代発症しやすいといわれ、その間の初診が20歳を過ぎてしまう。20歳を過ぎても年金への加入を怠ってしまうという結果になりやすく受給要因が揃わない。さらに再発の際も被用者年金から国民年金への切り替えがスムーズに行われておらず未加入という状態を作ってしまう。加入していても未納が続いていたなどということがあり得る。また、初診日の証明に関しては、比較的早期に障害者年金を受ける気持ちを固める人も増えてきたが、長い療養生活のなかで障害年金を受ける気持ちを固めていく人たちが多いため、ケースによっては10年、15年たってから申請することも多い。しかし、カルテの保存期間が過ぎており、初診日に関する証明が取れないことが起きても不思議ではないといわれる。
4) この等級の判定基準については、精神障害者に対して「明確な基準がない」(岡上ら〔1993,PP.162-163〕)といわれており、他の障害に比べて判定が難しい。例えば、知的障害ではIQが日常生活上の判断基準になりうるし、身体障害では部位の可動領域、視力、聴力など客観的なADL自立に対する判定基準が存在している。しかし、精神障害者に関しては内面世界でどの様なことがなっているのか分からないことがあり、例えば統合失調症の精神症状(機能障害)である妄想や幻想が日常生活上どのように作用しているのか明確な判断基準を見いだすことが困難であり、そのことが医師によってが解釈が左右されることもなる。そのため、どのくらいの生活レベルなのか把握することは困難であるといわれている。
5)全家連(2000,P.16)の「作業所の工賃」の調査において、5千〜1万が31.1%、1万以上が27.4%、3千〜5千が18.7%、3千未満が15.7%であった。
6)江口(2002)を参照
7)中川(2003,PP157-226)を参照

引用・主要参考文献
1.岩田正美「戦後生活保護法の形成・定着と生活保護施設」『人文学報』東京都立大学,1985,165-193
2.岡上和雄ら編著『精神保健福祉への展開』相川書房,1993
3.中川健太郎監修『救護施設との出会い』クエイツかもがわ,2003
4.全家連『精神障害者と家族の現状と福祉サービス』(ぜんかれん保健福祉研究所 モノグラフNO30)全家連,2001
5.藤井賢一郎「精神障害の生活と医療の費用負担に関する研究」『獨協経済』65,87-122,1997
6.秋元波留夫ら編『精神障害者のリハビリテーションと福祉』,中央法規,1999
7.全家連『地域生活本人の社会参加に対する意識と実態』(4.同 NO27),全家連,2000
8.全家連年金問題研究会編「精神障害者の無年金問題」(4.同 NO8),全家連,1987
9.小野哲朗「公的扶助とは何か」小野哲朗ら監修『公的扶助と社会福祉サービス』(公的扶助実践講座2),ミネルヴァ書房,3-58,1997
10.大友信勝『公的扶助の展開』旬報社,2000
11.江口恵子「救護施設の社会的性格」日本社会福祉学会,2002

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