柔術イメージ

『ワールドゲームズ柔術観戦記』

秋田で、ワールドゲームズ(以下WG)が開催されている。
WGは、オリンピックでは公式種目ではない、様々なスポーツを国際レベルで行う祭典である。たとえば、ビリヤード、新体操、綱引き、ダンススポーツなどである。
そのなかで、空手と柔術、合気道が格闘技として入っていた。
日程の都合や、場所の都合上、柔術が私の家の近くの体育館で行われること、入場料が600円と安かったこともあって、観に行った。

柔術と聞いて、昨今、活躍めざましい、グレーシー柔術、または、ネチネチと関節の取り合いや、ポジションの取り合いを期待していた。私が、日本拳法を習っている手前、こうした、組み技の勉強になればいいと期待していた部分もあった。
しかし、実際には、寸止め空手と柔道をミックスしたものであった。
参加国は、ポーランド、スエーデン、ドイツ、スロバキア、フランスなどで、ブラジルやアメリカの選手はいなかった。二日目にいったので、前日は分からないが、日本人も一人参加していた。

はじめは、正直がっかりしてみていたが、結構、テンポも良くて、ゲームとしては、すごく面白いルールであることが分かる。
審判は3人いて、両手には赤と白のサポーターをはめている。
打撃は寸止めだが、入ったと思われると、すぐにジャッジされる。(1ポイント)
副審がサポーターのどちらかを横にあげて、主審が最終的にポイントの指示をする。
しかし、そのまま時間は止めないで、試合が流れていく。
そうして、試合を止めないで、ポイントが加算されていく。
そのため、容易に組み技に移行できるようになっている。
(打撃でポイントを取られても、そのまま組みにいって、投げれるため)
きれいに投げたら2ポイント、技あり相当だと判断されたら1ポイント
寝技でも、押さえ込みがある程度の時間まで押さえ込んだら2ポイント
しかし、それで終わりではなく、3分間、いくら投げてもいいし、打撃をしても良い。
(それ相当のポイントが加算していく)
また、2ラウンドあるので、ゲームメイクもできるし、ポイントの駆け引きもできるというわけである。
また、攻撃が消極的だとか、膠着状態だと判断されると、すぐに「注意」「指導」「警告」が言い渡される。常に動いて、アクティブに攻撃し合うことが求められている。

組みの部分では、ほとんど柔道と同じであるが、まれに、回蹴を受けて、投げていたりしていた。
寝技の部分では、ガードポジションになったりするとすぐにブレイクになってしまうので、もう少し、その部分の攻防があった方が面白いと思った。

演武の部門もあって、こちらは、規定の「入り」があって、それに基づいて、二人組で行っていた。男女のペアで行うようで、スピードや、力強さが審査の対象になっていた。

組み手の部門の感想であるが、
テンポも良く、ゲームとしてはすごく優れている。ルールもジャッジも徹底していて、観ていてストレスは感じなかった。しかし、いかんせん、寸止めであるので、接近戦から組みへ移行するには、少し無理があった。故意につかみに行かないと、相手の打撃がポイントにはいることを覚悟して投げで2ポイント、押さえ込みで2ポイント取りに行くというリスクがあった。
また、偶然、打撃がハードヒットすることがあり、その時に、覚悟がないのか、すごくいたがって試合が止まることが度々あった。また、金的にはいることもあり、寸止めだと、キャップの着用もないし、防具も必要ないのだが、ちょっと、ハードヒットして畳にはいつくばるようなことでは、ちょっと、がっかりであった。
打撃がしっかりとしたフォームで正確に行っている人がルール上有利であるが、はやり、トータルで出来る人が優勝できるようである。また、試合によっては、20ポイントとかになるが、上位に行くに従って、10ポイント未満で攻防するため、落ち着いてみることが出来た。

以前に、外国人を招待して仙台で組み手の大会があったが、寸止めの流れを汲んでいるのか、ステップを踏んで、すばやく入り込んで、引き手をしっかりとしている選手が多かった。剛柔流では、ハードコンタクトであるが、相手をKOさせるようなフルコンではないので、ポイント制なので、こうした、寸止めの踏み込みの速さとか、思い切りの良さとか、空手らしさを見直しても良いのかナァと思ったりした。
日本拳法では、あまり、参考にならなかったが、組み合いの時は、しっかりと両者は組み合っていた。投げられてポイントを取られても、打撃で返すとか、審判の基準が明確で、毅然としている。そして、試合を止めないで、3分間フルにジャッジをしているのは、とてもいいゲームであると思う。日本拳法も、打撃、投げありなのだから、こうしたルールはしっくりくるのでは、と思った。

最後に、秋田で行われた、WGであるが、たぶん、秋田でWGが行われるのは、私が生きている間にはないだろう。そういう意味では、とても貴重なイベントであるはずなのだが、地元のみんなの意識が低いのは、どうかと思った。テレビでやっているのだけがスポーツではない。いろんな国のいろんな競技、しかも、メディアの露出の低いものが国際レベルで、様々な競技が行われている。確かに、観戦料が高いものもあるし、そんなのに出費するのは…という気持ちも分からないわけではないが、生涯に一回しかないイベント、しかも、秋田で!というのをもっと、認識できたらと思う。

試合会場には、ホントにまばらにしか観ている人がいなかった。中学生が、社会見学のような感じで見に来ていた。ドイツの応援が一番盛り上がっていて、中学生も、その盛り上がりに乗じて選手の応援をしていた。ほほえましい光景であった。
次は、ビリヤードを観に行こう(2001.8.20記)

読売新聞の記事
柔術のルール(パンフレットより)
地元の新聞の夕刊より(2001.8.20)

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