第1部 労働者としての施設職員

 いま福祉労働者はかつてないほどのリストラが断行されている。リストラとは単に解雇を指すものではない。賃金の低下、正規職員から嘱託職員への配置転換など広範な意味を含む。また、パート・嘱託職員などの不安定労働の増加は、正規職員の過重労働を生み出している。しかし、政策や雇用側はそうした現実を「福祉の心」や「やりがい」など、情緒に訴え隠蔽する。そして福祉の心を持ち出し、労働者の低賃金や過重労働をむしろ推奨する。
 社会福祉を学びたての学生や新任職員は、専門職のあり方や理論を重んじるあまり、しばしば現場を低く見る。理論と実践は違う。現場に専門性はないと。学校は、専門性の意義や対象理解などの方法論について教えてくれるだろう。しかし、福祉労働の置かれている状況や労働意識を持つことの大切さは教えてくれない。また、職場を見渡しても労働者意識高揚の大切さを教えてくれる先輩や上司は少ない。
 専門職として「いかに対象者と関わるべきか」という問いは大切である。しかし、まず現場職員は、「どのような環境で働いているのか」を知ることである。そして、現場において労働者の尊厳や権利が守られているかを考えるべきである。そして守られていない場合、どのように対処するべきなのかと考えることが大切である。つまり、対象者の尊厳や人権の尊重は大事である。しかし、それに関わる職員の労働上の尊厳が守られていないことには成立し得ない。第1部では、こうした問題意識を元に考察していく。

第1部の流れとして、
第1章 福祉労働の現状について述べる。低賃金、雇用の現実、労働時間等である。いかに福祉労働が劣悪な環境にあるのかを述べる。
第2章 福祉労働を巡る環境や背景について述べる。政策、経済、福祉労働の社会的位置付けなどである。福祉労働が劣悪な環境に置かれる理由について述べる。
第3章 一般社会の雇用と福祉労働を関連させ、これまで築かれてきた労働者の権利を明らかにする。
第4章 第1章から第3章を貫いて、望ましい管理者との関係や権利・義務について述べる。そして具体的なモデルを提示する。

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