本棚
03.11.30 フッサール〜心は世界にどうつながっているのか
門脇俊介
NHK出版

現象学の巨匠をめぐる一つのテーマ、表象を取り上げている。このシリーズ(哲学のエッセンス)の中であんまり面白くなかったなぁ。というのも、学説的に表象とは何か、欠点は何か、長所はどこかに終始して、専門でもない人にとって見ればどうでもよい話であった。目の前に見える風景は、客観的にすでに存在しているのだが、心的にどの様に伝達され、共有され、変容しているのか。などなど、哲学的な思考で論じきってほしかったナァ。

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2002.11〜2003.8
03.11.20 白い部屋で月の歌を
朱川湊人
角川ホラー文庫

『姉飼』にホラー大賞をさらわれたけど、新聞の書評で面白いと書かれていたのを偶然見つけて、文庫版になっていたこともあって購入した。ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている…仕事は霊魂を体内に受け入れること…からくりはまだ読んでいない人のために伏せるけど、流れるような丁寧な筆致で読みやすく、しかも幻想的で、きれいな声でつぶやいているような文体で、ちっともホラーじゃないけど面白い小説であった。
表題の他に、「鉄柱(クロガネノハシラ)」も良い。どこかにありそうでないような辺鄙な市を中心にした日常と死について書かれている。ちょっと悲しくなるような切なくなるようなラストは表題よりも胸に迫るものがあった。

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2002.11〜2003.8
03.11.10 ジハード1〜5
定金伸治
集英社文庫

集英社のジャンプノベルから出ていたものを一般用に全面改稿したもの。ジャンプノベルとは、少年ジャンプのキャラクターを利用した三流小説家がサイドストーリー、アナザーストーリーを書いてあるもの。このジハードは全くの創作であるが、ジャンルとしては、そうしたノベルを楽しむ、小中高校生のためのものであった。以前に、私も読んだことがあったが、途中からなんだかストーリーが破綻して、時代的にも???がついて、しかも文章が流れていたので、断念していたが、久しぶりに一巻だけを買って読んだら、懐かしさと共にかなり手直しされていて読みやすい。で、一気に購入し、パラパラッとつまみ読みをする。
十字軍とイスラム教の闘いを描いた叙事伝であるが、楽しませてもらった。

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2002.11〜2003.8
03.10.30 姉飼
遠藤徹
角川書店

第10回の日本ホラー大賞となる作品。短編であるが、何よりタイトルが気になる。また、背表紙の売り文句が気になる。
蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。まだ小学生だった僕は、縁日ではじめて「姉」を見る。姉たちは皆、体を串刺しにされ、のび放題の髪と爪を振り回しながら、凶暴にうめき叫んでいた…
とか、選考委員の今までとは別の次元から送られてきた作品。この作品に漂う奇妙さはただものではない!なんていう売り文句に乗らされて買いました。
まぁ、で、読んでみると、確かに独特な雰囲気があるけど、「黒い家」や「リング」のような衝撃はなかったナァ。あまりにもぶっ飛びすぎて、遊離してしまった感じかナァ。「Dブリッジテープ」のような何とも言えない感動とかもないし…
ビジュアル的にはすごく面白いんだけど、ホラーか?これ?といった感じだった。

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2002.11〜2003.8
03.10.20 でたまか(青雲立志編),(青天霹靂編)
鷹見一幸
角川スニーカー文庫

青雲立志は外伝、青天霹靂は再興録の最終巻。再興録を通して読むと、かなり端折って書かれたような気がする。というのも、奮闘記で主人公のマイドが国外に逃亡し、小王国が滅びるところで終わる。もちろん、再興録ということでその小王国が帝国という大きな国にうち勝つことによって再び国が戻るためのプロセスであるが、1巻で帝国の大きな戦役がマイドによって救われ、2巻で主人公が小王国の流刑地に降り立ち、3巻で兵を編成し、4巻で帝国の一部の軍隊を撃滅し、帝国内で内乱が起こり、5巻でいきなり皇帝と戦い勝ってしまうという展開である。4巻まで一応ステップを踏んでいたのに、5巻でいきなりかよと思ったりした。また、的の帝国が弱すぎというつっこみも聞こえてきそうだし…まぁ、エンタメっす。
外伝の方は、まずまず面白かった。まぁ、本編の展開はどうであれ、この世界観は結構色々と幅があるし、電子人格という設定もおもしろい。この設定があるからこそ、この物語が成り立っているんだと改めて確認した次第です。

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2002.11〜2003.8
03.10.10 カント〜世界の限界を経験することは可能か
熊野純彦
NHK出版
2002.11

前回に引き続いての哲学書の続き。ベルクソン、ライプニッツ、カント、デカルト、フーコーこの系統は、すべてドゥルーズが取り上げ、自分の議論を展開する上で重要視していた哲学者。すべてはドゥルーズを理解するために読んでいるようなものである。ドゥルーズはいまだに読めていないが…一つとして、どうも人の意識の微細な動きを分子のようにアメーバのように捉え、入り組んでいる中から何かを見据えているんじゃないかナァとイメージできるようになってきた。
さて、カントだけど、経験とは何かが問題になっている。よく分からないけど、読みながら麻雀をしている自分を思い起こしてみる。ツキとか流れとか存在するのかと。このことを考えるに当たって、麻雀をしている自分の意識と現象上の配られる数字の行為に分けて考える必要がある。また、これまでやってきた経験と意識も問題になりそうだ。また、コミュニケーション上生起し交錯するイメージとかも関わってきそうである。麻雀の世界を語ることすら難しい…のである。なんの説明にもなっていないけど、そのうちまとめてみたいと思った。

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2002.11〜2003.8
03.10.1 ベルクソン〜人は過去の奴隷なのか
シリーズ・哲学のエッセンス
金森修
NHK出版
2003.9.20

多分近くの本屋でこのシリーズを購入しているのは私だけ。でも購入されている形跡があると思っていて、入れてくれている(大手の本屋なんだが…)。この手の本ってあんまりおいていないんだよね。ジュブナイル小説で頭を休めて、気休めに哲学の本を読む…一見アンバランスのようでいて、実は自分の中ではちゃんと成り立っている…つもり。良い哲学の本って、結構スリリングなんだよね。美文ではないけど。で、ベルクソンなんだけど、彼の思想のエッセンスを取り出して、現代の諸相に沿って、あるいは到達しているところから好き勝手に論じているシリーズなので、すごく新鮮である。また、語りかけるような、呟くような感じで読みやすい。このシリーズでは一番読み易いんじゃないだろうか。

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2002.11〜2003.8
03.9.20 自転地球儀3
田中芳樹・一条理希
徳間デュアル文庫
2003.9

何気なく本屋をのぞいたら「自転地球儀」の新しいのが出ていた。で、まぁ、田中芳樹のこの頃の傾向〜中断していた様々なシリーズを新人に委ねるというものであった。KLANもそうだし。田中芳樹は中国歴史〜戦記ものに行ってしまったので、まぁ、妥当かなと。
実際には、それまである程度話が進んでいるので、読みやすい。もっとも、平成7年を最後に途切れたシリーズなので読み返さないといけないところも結構あった。一条さんには田中芳樹のような筆力を期待しないが、間延びしない程度に楽しませてほしいものである。
自転地球儀とは、ある小道具やさんで購入した動力が分からないが自転する地球儀。月が満ちたとき地球儀の影が伸び、異世界へとゲートが開く。この地球儀をめぐってある企業が奪おうとし、主人公がそのゲートに逃げる。一方、異世界は中世のような戦国時代で、ある亡命の王子が国を簒奪し、復讐への野望を中心に描かれ、そこに現代の主人公が迷い込むという設定。まぁ、よくある設定ですね。

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2002.11〜2003.8
03.9.10 DADDY FACE メドゥーサ2
伊達将範
角川電撃文庫
2002.8

前回のシリーズに比べるととても早く出版されたナァと思う。だいたいこの手のジュブナイル小説は厚くなっていったり、巻を重ねると「だれるもの」であるが、今回は、色々な展開で飽きることなく、最後は〜ラピュタ?と思わないわけでもないけど面白い。特に、最後に主人公は敵対する組織のボスみたいのと戦うんだけど、そのけた外れの強さが、アナザーワールドの住人らしくて、そのアナザーワールドも結構設定が面白かったりして…この調子であれば、3巻で終わったらもったいないナァと思う。4巻か5巻くらいまで描ききってほしいと期待。


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2002.11〜2003.8