厚生省「介護保険制度試案」を読む


インタビュー

「自立支援」の実現に向けて
東京大学教養部教授:大森彌

基本理念とかサービス体系の在り方は、大きく言えば自立支援という理念と利用者の立場に立ったサービス体系をケアマネイジメントを含めて作って、それに出来るだけ整合的な費用保証の仕組みをどうするかということ。

調整が続いている点
1.被保険者あるいは受給者をどうするかということの関係で、保険者主体というのをどうするかということ
・国営でやるか市町村で行うか。
・市町村を保険者にした場合、特に小さい規模の町村から、現在の国民健康保険の赤字問題、一般会計からの補填問題で、この二の舞になるのは困る。市町村を保険者にするのであれば、補完制度を明示しないと、引き受けがたい。

2.仮に現役世代の方々にも参加してもらったときに、特に給与所得者のようの場合に事業者が保険料の一部について何らかの形で負担というか参加いただけるかどうか
・職域の議論はおかしい。個人を原則にすれば、別に職域が入らなくてもいいという事が成り立つ

家族介護の現物給付についてどうするか
・試案では、現金給付を原則見送った。当面は基盤整備を充実させたい。〜充実したサービスの展開で、選択できるだけの充実が先である。
・地域差があり、家族依存が当たり前と思っている地域が随分ある。そこでお金がなにがしいくと、固定化が起こるのではないかという不安が強い。

税金で行ったときの一つの問題は、負担と受けるサービスの関係が曖昧になること。出来るだけ受益と負担の関係を国民に明示べきである。

介護保険制度というもので高齢者が直面している問題について全て解決は出来ない。要介護認定を受けてかつ利用料を払えない人についてどうするか。免除制度はないから後はどういう形で支援できるか。
この保険制度を適用して一割の負担を払えない人がどのくらいいるのか。過渡期にどこかで公費で救済する必要がある。
生活保護について、費用は出来るだけ公費で保証できる仕組みに替え、出来ればスティグマのないような仕組みを考えたい。すでに受けている(生活保護を)人は、介護扶助の中で救済できるが、そうでない低所得者で施設に入っている人たちについては別途考えないといけない。
それにしても、現実の施設生活者について、現行の生活保護で対応するというのは、今までの経緯から現場は納得しないからどこかで救済する必要がある。市町村レベルで対応してもらう以外にないんじゃないでしょうか。

問題は、質の良いサービスを安定的に供給できるような団体であることをどうやって把握して、問題が起きたときにどうするのかということです。今までは国が事業認定をいたり許可しているものは、何か起きたら救済することを前提にしているわけで、広い意味で言えば一種の規制緩和がこの分野で起こるわけである。最終的には利用者側が選んでいただく以外にないと思っている。
サービス供給主体はいろいろな情報を利用者に伝えていかないといけない。ディスクロージャーを前提にした上で、供給主体のサービス管理については、場合によっては例えばオンブスマンのような仕組みもいる。

ヘルパーの処遇は悪い。このサービスは対人サービスだから、どんな人がどんなサービスを出来るかということが重要になる。しかも、この領域は、複数のいろんな事が出来る人たちが全体の連携の仕組みの中ではじめて可能になるわけだから、何よりもチームワークが必要。チームワークを組むときに重要なのは、独自の機能を認めながらその間に上下関係を前提にしないということ。

地域による人件費の格差について、人件費の差をあらかじめ認めると、すぐそれを格差だと思う。全国一律にしてしまえば、市町村の責任にする必要がなくなる。

保険を使わない方が幸せであるという掛け捨ての概念が必要になる。

座談会

厚生省試案を現場から読む

1.市町村を基本とした保険システムを作る。
2.施行に関して、在宅ケアは平成11年度、施設ケアは13年度からという二段階論を出した。
3.保険の拠出に関しては、40才からになる。65才からは、第1号非保険者として行う。

市町村が基盤になるが、都道府県レベルに「介護保険者連合会(仮称)」を作り、そこで財政調整をしたり低所得者の配慮をしたり、所得段階別の保険料の設定をして、介護保険認定の実務についてもある程度行うもの。

施設サイド
具体的なサービスの好評があってもよかったのではないか。
一般の人は、自立支援の介護といっても分からない。介護という言葉は、古い言葉であって、新しい言葉である。そこら辺の意識改革も必要になる。
福祉は御上がやるものだ、介護は一般の家庭がやるものであるという認識が一般には根強い。
介護を必要とする高齢者や家族には、全く外部サービスだけで老いを迎えたいと考えている高齢者もいるだろうし、あるいは家族と共に高齢期を迎えたいという方もいる。様々なニーズに応えられるような介護システム、制度であってほしい。

社会福祉士サイド
要介護認定とケアプラン作成があまり離れず、利便性の高いものでありたい。
ケアマネージャーの専門職としての位置づけを行う。
今までの福祉サービス供給の栓というのは行政が握っていて、それを閉めたり緩めたりしていた。今度はそれを「ニーズ」に応じて専門職が判定、プランを作成するわけである。今回の制度になり、介護などの社会サービスの運営が専門職によって担われているという形を作り上げていかなければいけない。
資格が、名称独占で業務独占でない。しかも、有資格者であったも給与は一律で単価もない。医療では医師や看護婦などの資格職による医療サービスが基準であるが、福祉サービスではそうした報酬に関する規定がない。。

介護福祉士サイド
専門的に利用者のアセスメントや状況判断がきちんと出来て、どういった介護が必要かということを科学的・客観的に見ていくということが出来るとなると、問われてくるのは「時間」ではなく、まさに「質」である。

ホームヘルパーサイド
公的な保険ということで、そこには権利せいが生まれこれまでに比べて抵抗感なく利用してくれると思われる。
ただ、競争となると、利用者の確保ということで、自立を損なうサービス提供になったり、パッケージ化された時間的なものに追われてきちんとサービスが提供されない、という事態も想定される。
福祉立場のヘルパーが利用者に最も近い存在であるが、保健婦、医者、看護婦が来ると、話が通らないことが多く、介護報酬が全てではないが、レベル(立場)をあげてほしい。

教授
措置的な部分、一番金のかかる部分を保険で面倒を見ましょうとなった。しかし、他のサービスなどを組み合わせるのもケアマネージャーの仕事である。
このサービスは自立を支援するためであるから、介護度を低くしていって、本人、SW、ヘルパーの負担が軽くなって、マンパワーの養成確保も一定程度のところで処理できるというよい方向と、今の仕組みでは、要介護状態が重い方がたくさんお金がでる仕組みだから、利用者はどんどん悪くなる。行政負担も増えるし、ワーカーも数がたくさん必要でと悪い方に転げるか、分岐点である。
基本的に介護保険は個人保険で、家庭介護も大切ですが、家族がいようといまいと、要介護状態に対して権利が生じる。

ホームインデックス目次