「障害者プラン」スタート!
ノーマライゼーションの礎となるか


座談会「障害者プラン」をどう具体化するか
1995年12月18日政府の関係19省で構成する障害者対策推進本部「障害者プラン」を決定する。このプランは、ライフいステージの全ての段階で全人間的な復権を目指すリハビリの理念と、障害者がそうでないものと同様に生活し活動をする社会を目指すノーマライゼーションの理念をふまえて策定されている。

日本障害者協議会−プランを捉える視点

プラン実現のための財政支援

これはプランであって、法的には、いわば義務を伴わない。逆に言うとプランが達成できなかったからと言って罰を受けるわけではない。だからこそ、目標となる数値を明示するのは、自らも他者も拘束するという意味で大事になる。総予算を示されると、なおさら推進力ができるという期待がある。

プランの意義に関わる世論形成も重要な要素
老人問題というのは確かに全ての国民が通過する問題で、まさに国民の共通課題になってくるのです。しかし、障害者問題はそうでないと思います。そうすると、予算問題は世論形成と関係してきます。そういう目で見た場合、プランがどのくらい国民の目に触れたか、あるいはこれを巡って世論をわかせたかと問われるとつらいものがある。プランがでる前後あるいは現在を含めて、ほとんどの国民に伝わっていないのではないでしょうか。障害分野の関係者でも十分に理解していない方もいらっしゃると思います。
したがって、予算問題は、プラン実現のための基本問題の一つなんですが、このことを解決していくためにも、なんといっても大きな世論のバックアップをどう形成するかということが、決定的な意味を持つものと思います。
まさに、地方自治という言葉通り自治を尊重するというのはよく分かりますし同感です。しかし、現在の障害を持つ人々のための社会資源が量的な問題を中心にあまりに不備が多く、自治体任せという域まで到達していないんじゃないでしょうか。ある程度の水準に達するまでは国が牽引力となることが求められると思います。

障害者保健福祉圏域の形成をプランの推進の力に
障害者プランの費用は措置費、つまり税金でやるのだと決まっているから、実施主体としての市町村はますますその役割を大きくしなければならない。
しかし、現在の市町村では、基礎体力のないところがある。そういう意味でも、各県にお願いしているのは、保健福祉分野の行政担当者の方々が相談をして障害保険福祉圏域を県内に設定していただけないかということである。その圏域の中でサービス水準のバランスが取れるように、市町村への指導性を発揮してもらいたい。その圏域を支える力として、身体障害者の療護施設など、二四時間の介護力かつ専門性を持った施設が、その圏域の中にあるかないかとでは随分違う。今後は、圏域ごとの社会資源を均衡化していかなければならない。施設の整備などについても圏域ごとのバランスを最優先する。
障害者施策やサービスに対するニーズはいっそう多様化、高度化する。サービスの提供者、実施主体については、たとえばNPOであるとか、もっと踏み込んで、民間の、しかも営利の団体はサービスの提供主体として考えていけないだろうか→ただ、障害者福祉自体、まだまだ、成熟過程にあって、民間の営利企業が入ってくることには、我々自身も実は率直に言って、不安があり、はっきりとした回答を持ち合わせていない。とりあえず、当面は、民間とは、社会福祉法人、あるはいNPOぐらいなのかなと思います。

二一世紀を展望し、新プランの策定も視野に入れた推進策を
障害者プランの四番目の「本プランの推進状況を定期に的にフォローアップし、社会経済情勢の変化、関連の制度、法令の改正、市町村障害者計画の策定状況をふまえ、必要に応じプランの見直しを行う」
努力目標とはいえ、今、展開されつつある市町村障害者計画の水準が、中間見直しの規模を規定していくだろう。
総合性を強調しながら、結局は厚生省中心のプランで、いわば「障害者保健福祉プラン」といった内容になってしまった。→総理府の障害者施策推進本部の強力なイニシアチブが求められ、なんといっても障害者施策の基礎をなすのは厚生行政ですから、ここにも引き続き強力なバックアップ、牽引車的役割を期待したい

障害者自身が主役となることがプランの成否を握る鍵に
今の不十分なサービスの状況の中で、障害を持つ子が家庭にいる場合、その子中心の動かざるを得ない。今の段階では親が巻き込まれざるを得ないと思いますが、将来的には、当事者の自立を支援するという形での関わりというのが進むべき方向である。そういう意味では、障害者自身の自立への啓発もそうであるが、親や家族を含めての啓発や支援がやはり必要である。
家族によるケアが前提になっている現行の施策体系はおかしいのではないでしょうか。今後は、家族に依存するという考えから脱却しなければならないと思いますし、それが近代国家の歩むべき道ではないでしょうか。

折しも、民法改正、あるいは成年後見人法や制度などがクローズアップされつつあります。二〇歳を越えたら、社会で障害者をきちんとケアする、あるいは支援する。障害者プランの理念を実質化させていくためにもこうした点を是非視野に入れておくべきであるし、大事なテーマである。

論文「リハビリテーションとノーマライゼーションの理念を具体化する」
プランの目的、手段
目標は地域生活・社会的自立・物心のバリアフリー・QOLの向上・安全確保・国際協力交流という七つの視点別にまとめられている。

統合性・総合性
大臣官房に「障害保健福祉部」が設立され、身体障害・精神薄弱・精神障害の行政が集約される。

医療・保健と福祉
精神障害者の福祉が、身体障害者や精神薄弱者の福祉と同じように、医療との関係で、「相対的自立」の足並みをそろえることは、障害者プランの理念的な出発点になる。

地方自治体の参加・参画
障害者基本法が平成5年末に公布され、都道府県と市町村は障害者計画の策定を義務づけられたが、策定した市町村は現在なお一割程度だという
精神薄弱と精神障害の領域は業務も責任も町村に降りていない。障害者は高齢者より少なく、住民意識も薄く、障害者問題は県の仕事と考えているところが多い。

当事者の参加・参画
障害者プランには、「当事者参画」のニュアンスは語られているが、明快とはいえない。たとえば、人口30万に2つずつという地域生活支援相談事業は朗報だが、障害者の自立生活センターはこの事業に含まれるだろうかと心配になる。

重度・重複・重症の人々の世界
重度・重複・重症の人々が地域でQOLを実現していくための施設が見えない。福祉工場と授産施設は唱えられているが、それらに通えぬ重度・重複・重症の人々には高齢者と同じようなディサービス事業が勧められる。だが、この事業では彼らのQOL実現の地域拠点としては脆弱に過ぎる。−生活拠点が見あたらない。

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