ピークホールド回路テクニック(大電流MOS測定の前座です)


 

図1.ピークホールド 基本回路

図1に示すようなピークホールド回路は、
1.入力コンパレータ(Compalator)
2.充電電流回路(Current Souece)
3.整流回路(D)
4.ホールドコンデンサ(C)
5.放電回路(DisCharger:時定数放電またはリセット回路)
6.インピーダンス変換(VoltageFollower)し、出力(OUT)
7.全体にNFBをかける

という要素で成立している。

 入力のコンパレータは、良くOPAMPで代用されることがある。高速OPAMPであれば、使用できる。(当然、どのくらいの幅の信号を捕らえるかによって、変わってくる。)入力にOPAMPを使っても、動作はコンパレータ動作をする。

また、ここにFET入力型OPAMPを用いると、後に詳しく記述するが、回路の状況によっては、フィードバックループの簡略化により、若干の高速(高精度)化を期待できる。

 

 全体の動作としては、出力電圧がある一定の電圧(通常、入力電圧)に相当する電圧に達するまで、コンデンサを充電する。入力電圧と同じ(もしくは、NFBループでゲインを稼ぐ事により、N倍)の電圧まで充電されたことを検出して(NFBループによって検出:したがって、N倍のゲインを稼ぐことも出来るが、速度が犠牲となる)、充電を止める。すると、ホールドコンデンサに貯まった電荷はリーク電流等で漏れて徐々にコンデンサの両端の電圧は下がるのだが、その電圧降下が誤差範囲以内に収まっている時間だけ、電圧をホールドできる(ホールドしているとみなせる)、という動作をする。

 

 また、短いパルスをピークホールドする場合は、高速性が要求され、充電電流を大きくするか、ホールドコンデンサを小さくする、また、別な要因として、フィードバックループ全体の帰還速度を早くする(高速OPAMPやコンパレータを用いる)ということが必要となる。

 

図2.通常のピークホールド回路

 通常は、図2の様なピークホールド回路が用いられる。A1の出力電流のリミット値がすなわち定電流出力となり、充電電流としてCに充電される。DisChargerにて、放電もしくはリセットが行われる。

 

・充電電流、ホールドコンデンサをどう設定するか

 充電電流Iは、ホールドコンデンサC、(リーク電流、)ホールド電圧の最大値V、被測定信号の最小パルス幅tw、これらの要素でほぼ決定する。
 t=(V/I)C・・・・・・(1)
 となる。ただし、tはホールドするまでの時間なので、t<twとなるようにする。この際、コンパレータやインピーダンス変換回路の速度、遅延時間はこれより更に短い必要がある。図2のような通常の回路では、IはOPAMPの最大出力電流である。


 Cは、ダイオードやインピーダンス変換回路、C自体のリークの総合Irで、最低限どの程度の容量が必要か?もとめる。
 電圧の精度を1%とすれば、定電流リークが行われる場合、リークによって放電する時間Trは
 Tr=(V/Ir)C・・・・・・・(2)
 となり、これの1%の時間なので、1%を保証される時間Tは
 T=0.01Tr・・・・・・(3)
 と考えれば良い。

・コンパレータのスピードやオフセットが誤差に影響する

 コンパレータの速度が遅いと、目的の電圧まで充電しているのに、充電のストップが遅れて、目的の電圧以上まで充電していしまうことがある。(1)式より、この、コンパレータの反応速度を0.01t以下(誤差1%以下)にしたいところである。そうしないと、誤差1%を確保できない。またコンパレータの速度だけでなく、仮想ショートの精度にも関係してくる。仮想ショートの誤差がそのまま出力の誤差になるので、オフセット回路などを設けて、この誤差を修正する必要もある。図3参照

図3.誤差の要因

 tdだけ、コンパレータ〜充電装置OFFの速度が落ちると、それだけ電圧Vdの誤差が大きくなる。この分は、オーバーシュートの様に見え、目的の入力電圧より大きく出る。入力信号の大きさに比例して大きくなる傾向にある。この誤差を小さくするには、出きるだけ充電時定数を大きくする、コンパレータを高速化する、などの対策がある。また、図2の様な回路よりも、定電流充電を行って、その充電をON/OFFする様な回路の方が、この誤差は小さくなるようである。
 また、コンパレータの誤差自体も、Vdに含まれてくる。こちらは、オフセット回路等を設けることである程度補正できる。

 スピードが誤差に影響するなら、仮に入力コンパレータがFET入力の定バイアス電流OPAMP等であったとする。すると、通常はインピーダンス変換回路の後からNFBをかけていたところが、ホールドコンデンサ端から直接NFBをかけることが出来る様になる(図4)。これによって、気をつけることは、ホールドコンデンサからリークする電流のルートがFET一個増えるので、その分がどの程度か、十分検討し、問題ないか確かめる必要があるが、大抵の場合はFETのリークは大変低いので大丈夫である。

 こうすることで、出力のインピーダンス変換回路の遅延分だけ速度を稼ぐ事が出来る。

 

 

図4.考案回路

 ・使う部品

 Cは、マイカかポリプロピレン・フィルムコン等がよいであろう。リークの少なさではマイカがベスト。また、強制的にリセットする場合、マイカやポリプロピレン以外では、誘電吸収現象という現象が起きて、Cの放電後、じわじわと両端の電圧が上昇する現象があるので、微小信号のホールドが不可能になり、また、誤差も増える。

 Dは、極力、漏れ電流の少ないもの、高速なものを選ぶ。
 A1は、できたら高速コンパレータが良いであろう。でなければ、最近多く出てきている高速OPAMPがよい。FET入力のものも使えるようであれば、図4の回路を用いられる。

 A2は、インピーダンス変換ができればよい。高速のFET入力OPAMPや、単なるソースフォロワでも良いであろう。

実際のピークホールド回路シミュレーション&実験例:MaxHold機能付ピークレベルメーター