2005年6月26日 更新


西洋音楽より長い歴史をもつ日本の音楽について



明治維新の時に西洋に追いつけとばかりに西洋文化や技術を取り入れ富国強兵を図りたいと明治政府が推進した西洋化の波に押されて、日本文化が劣る物と考える風潮が未だに残っています。しかし日本文化は、西洋文化に劣っているのでしょうか?このコーナーでは、歴史を顧みて東洋文化の優秀性をひもとこうと思います。


1.日本のフルオーケストラ 雅楽は1400年の歴史を持つ音楽です。
雅楽の演奏は、お正月の神社や神前結婚式などでしか聞かれませんが、この雅楽は、7世紀半ば およそ1400年前に、中国の随や唐から、仏教と共に日本に渡来しました。同じ音を複数の楽器で演奏するのでハーモニーとしては簡単ですが、西洋音楽では、不協和音として表される日本独特のハーモニーです。この音楽が現在まで引き継がれて演奏されていることが驚異と思います。

有名な曲として 平調(ひょうじょう 基音が E ) 越天楽(えてんらく)が有ります。越天楽のリズムをやや速くして歌詞をつけたのが黒田節です。
西洋音楽のように長調、短調で各12の音調はなく、越天楽には、平調のほかに、盤渉調(ばんしきちょう 基音が平調より5度高い H) 黄鐘調(おうしきちょう 基音が平調より5度低い A )の3種類の調子があります。また音階も東洋に多い5音階です。(ド、レ、ミ、ソ、ラ)です。ここで重要なのは、譜面が残っていることです。中国から渡来した時すでに、音の高さと長さ、リズム、各楽器のパート符もあったのです。(当然西洋の五線譜とは形式が異なります。)
西洋で15世紀にグレゴリオ聖歌にて始まった音符表示をさかのぼること800年前にすでに実施していたのです。これを聞いて西洋がすぐれているといえますか?

使われている楽器 16人編成のオーケストラ 
吹き物 管楽器 
笙(しょう)     3 芦の管を複数合わせた楽器で、独特のハーモニーを奏でます。
篳篥(ひちりき) 3 芦の茎を削って作るダブルリード楽器です。西洋のオーボエと起源は同じと思われます。
横笛(おうてき) 3 竹や木で作られた横笛です。横笛は、雅楽から飛び出して日本人の使う楽器として現在までお祭り囃子や歌舞伎などで使われています

引き物 弦楽器
琴(こと)   2 13弦琴です。 弦の数が増えていますが、現在も春の園遊会などで演奏されています。
琵琶(びわ) 2 5弦びわです。このびわを用いて平家物語を弾きが足るびわ法師が有名です。

打ち物 打楽器
鞨鼓(かっこ) 1 歌舞伎や能で使う鼓やカワラケに発展していった、小型の太鼓です。
太鼓(たいこ) 1 二つ巴 三つ巴のマークが入った大太鼓です。現在使われている太鼓よりも胴の長さが短く、澄んだ低音がでます。 
鉦鼓(しょうこ) 1 やや大きな太鼓で中央に配置されます。リズムの変更の指示などに使われ指揮者に当たる人が使います。


宮内庁楽部 越天楽の演奏時の配列

2.仏教の音楽
平城京や平安京の時代に中国の随や唐から渡来した音楽のほかに、弘法大師空海によって伝えられた真言密教に関する音楽も忘れていけません。空海が生きた時代は800年代ですので1200年前になります。真言宗や曹洞宗や臨済宗などの禅宗のお寺には、仏典と共に各種楽器が伝来されています。木魚や鐘などが一般的ですが、鈴や銅鑼、シンバルや太鼓など楽器として充分演奏できる打楽器が、お経の付帯音として使われます。これらの楽器の音とお経を合わせて行う「声明(しょうみょう)」は、東洋のハーモニーです。
これらの楽器が南に伝わり更に発展して現地の音楽と合体して完成したのが、インドネシアの音楽「ガメラン」もしくは「ガムラン」です。使われている楽器の種類や形状は発展段階でかなり変化していますが、音を聞くとその原点を伺い知ることが出来ます。



3.西洋音楽との出会い。

西洋音楽との出会いは、キリスト教伝来によります。スペインのイエズス会の宣教師 フランシスコ・ザビエルが、日本に渡来して始まった布教の際に伝承されました。しかし、徳川幕府の鎖国政策でキリスト教の布教は禁止されてしまい一般的に普及される事は有りませんでした。キリスト教が禁止された後も、隠れキリシタンとして伝承された賛美歌が五島列島や長崎などに現在も「オラショ」として残っています。

当時の最高権力者であった織田信長に小型のパイプオルガンを使った西洋音楽を献上したと説も有ります。献上した音楽は、ルネサンス時代の音楽や賛美歌と推定されます。当時スペインは、ポルトガルと共に南米から東洋まで全世界に植民地を築き、各地から金銀を略奪して巨万の富を得ていた時代の16世紀です。さかのぼること800年も前に越天楽が演奏されていたのです。そして越天楽に歌詞をつけて黒田節や今様として楽しみ越天楽の楽器を発展させ能や祭囃子などの庶民文化に使っていたのです。


フランシスコ・ザビエル

参考になるリンク先 歴史や楽器の詳細に詳しい 日本の伝統音楽


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