2003年8月31日更新

インドネシアの民族音楽「ガメラン」について


南十字星が輝く南の島「バリ島」の民族音楽「ガメラン」
 


 「ガメラン」の起源

「ガムラン」とも言いますが、インドネシア バリ島に古くから伝承されている民族音楽です。その起源は、その昔インドネシアをおさめていた王様が、ある夏の暑い日に木陰でうたた寝をしていると美しい天女がおりてきて、楽器を弾きながら合わせて踊り出すのをみてその美しさに感動して、そのあでやかな踊りを再現しようと少女にお面をつけて踊らせたのが始まりと言われています。奈良の法隆寺にあった「飛天の舞」の天女が踊る様がイメージとして一番近いと思われます。

 「ガメラン」の音階は5音階
音楽的には東洋に多い5音階で金属の打楽器が主に使われています。低音は、銅鑼、中低音がゴング、高音が真鍮の板を並べた鉄琴のような楽器です。単独で演奏することはほとんどなく、2人以上の演奏者がいないと演奏になりません。地方には、金属でなく竹だけで出来た楽器で演奏する「ガメラン」もあります。

5音階のメロディーは、日本人にも懐かしく感じさせる音階で、日本の明治以前の童歌や子守歌、御詠歌などに5音階のメロディーが残っています。バリ島で何気なく聞こえてくる「ガメラン」のハーモニーにいやされて寝込んでしまうなどとても親しみのあるメロディーです。

 「ガメラン」を捧げる宗教について
民族衣装を着た少年や少女の踊りの伴奏としてヒンズー教の宗教行事と深い関わり合いを持って発展して来ました。ジャワ島中部ジョクジャカルタに有る仏教遺跡「ボロブドール」やカンボジア「アンコールワット」が有名なように、東南アジアには、イスラム教が入るまでは、仏教と土俗宗教が合体した宗教が繁栄していました。
土俗宗教は、「シバの女王」で有名は破壊の神「シバ神」を祭る宗教で、日本の「鬼子母神」のモデルとされる「魔女 ランダ」 獅子舞の原点「バロン」 足柄の大雄山や身延山などの山岳信仰に必ずでてくる「カラス天狗」の原点「ガルーダ」など、インドやインドネシアが原点の神様が、南伝仏教として日本にも伝わっています。

京都の南、「黄檗宗万福寺」には、インドやインドネシアから来たと思われる彫刻や仏像が有りその中にインドネシア バリ島で見た「バロンダンス」の中に登場した王子「カリカ」が仏像として安置されていますので、興味の有る方は一度訪れてください。
また日本仏教にも鐘や太鼓や木魚など伝わっていますように、「ガメラン」は東洋の音楽として特異な物といえません。土俗宗教の宗教観の影響で派手な音に発展して行ったと推測されます。葬式は日本と異なりとても派手できらびやかな儀式です。
ご存じの様にイスラム教の教えには、偶像崇拝が禁止されています。このためイスラム教が、インドネシアに入って来た時にヒンズー教を信じていた人々が王様を含めて「バリ島」に逃げて今日のバリヒンズー教が完成されました。そして宗教音楽として「ガメラン」が発展し保護されて来たのです。

近年民族固有の芸術が無くなるのを防ぐ目的で、バリ島デンパサールに王立ガメラン音楽院が出来て保護にあたっていますので、デンパサールの博物館や美術館の回廊に一部で「ガメラン」と「バリレゴンダンス」の練習風景に遭遇するかもしれません。



残された天国 バリ島

 「ガメラン」の演奏形態

演奏者も踊り子も現地の人で、「ガメラン」の演奏を仕事にしている人はほとんどなく夕方になり三々五々寄り集まって来て演奏が始まり、練習とも本番とも判らないうちに踊り子が踊り始める形態が多いです。一部観光客目当てにレストランなどで演奏する場合が有りますが、本質的には神に捧げるお祭りの音楽と踊りが源流ですから、奉仕活動の意味合いが濃いです。
大きな祭りですと少女のレゴンダンスに始まり、インドに端を発する叙事詩「ラマーヤナ」に基づき、俳優が台詞を語り魔女「ランダ」を王子「カリカ」が「バロン」の助けを借りて滅ぼす劇が、「ガメラン」の調べにあわせて進行します。
また別の題目では、魔女「ランダ」の娘「プラチナ」が王様をだまして王国を乗っ取ろうとたくらんだりする話もあります。
この劇が、祭りの間3日3晩続き、線香の香りと「ガメラン」の影響で神がかり状態(トランス状態)になり大騒ぎに成るのが日常茶飯事で、村の宗教家が清めの水をまいたり、「バロン」が俳優を清めたりして正常に戻すなど、現在でもシャーマニズムの息吹を感じる世界が展開されます。

「ガメラン」のリズムは、日本のお寺にある「木魚」に似た打楽器の出すリズムが基本リズムでこの木魚が早く打ち出すと打楽器全体が早く打ち出します。また打った後、音が混じらないように指や手の甲で金属楽器にさわり音を止める操作が行われたり、同じ楽器が2組あり、二人の演奏家が相手の打つ間に打つなどしてあの独特のハーモニーが完成されるのです。

この叙事詩「ラーマーヤナ」を影絵で演じる「ワヤン」にも、「ガメラン」の演奏が付きます。


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