芋虫がまずしゃべり始めました。「どのくらいの大きさになりたいんだね?」
「何度も何度もサイズが変わらなくなれば」アリスは慌てて答えました。「どんな大きさでも良いんです。お分かりでしょ?」
「分からん」芋虫は言いました。

 アリスは黙ってしまいました。今までこんなに自分の意見に反対されたことが無かったので、だんだん腹が立って来たのです。

「満足したかね?」芋虫が言いました。
「その、あたし、もう少しだけ大きくなりたいんです。もしもお厭(イヤ)でなければ、ですけど」アリスは言いました。「3インチでいるのはとってもみじめなんです」
「ちょうど良い大きさじゃないか!」芋虫は怒ったようにそう言うと、すくっと立ち上がりました(それがちょうど3インチでした)。
「でもあたし、この大きさに慣れていないんです!」かわいそうなアリスは哀れな口調で弁解しました。そしてこう思いました。「動物たちがこんなにすぐに怒らなければ良いのになあ」
「すぐにもとに戻るよ」芋虫は口にパイプをくわえて、再び水煙管を吸い始めました。

 アリスは、今度は芋虫が話し始めるまで根気良く待つことにしました。1〜2分後、芋虫は口から水煙管を取ると、あくびをして、体をぶるぶると揺らしました。そしてキノコから下りて、草むらに這って行きながら、こう言いました。「片方は大きくなり、もう片方は小さくなる」
「何の片方? もう片方の何?」アリスは考えました。
「キノコだよ」まるでアリスが大声で質問したかのように、芋虫が答えました。そして芋虫は、アリスの視界から消えてしまいました。

 どちらがその“片方”なのかを見極めようとして、アリスはしばらく物思いにふけりながらキノコを見ていましたが、キノコは完全に真ん丸なので、これはとても難しい問題だと、アリスは思いました。しかしついに、アリスはできるだけいっぱい、キノコの周りに腕を伸ばしてみました。そして両手で、端の方を少し切り取ってみました。

「さて、どっちがどっちなんだろ?」アリスは自分にそう言うと、効き目を確かめるために右手の方をちょっとかじってみました。次の瞬間、アリスはアゴの下の方に強い衝撃を受けました。アゴが自分の足にぶつかったのです!






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