アリスはこの急激な変化におびえましたが、自分の背丈がぐんぐん縮んでいて、ぐずぐずしている暇はないと思いました。そこでアリスは、もう片方のキノコを食べようとしました。今ではアリスの顎は足にぐいぐいと押されて、口を開けるのも大変な作業です。けれどもアリスは口を開けて、左手のキノコをひとかけら、何とか飲み込むことに成功したのです。

「さあ、これであたしの頭は自由だわ」アリスは嬉しそうに言いましたが、次の瞬間、それは驚きに満ちた声に変わりました。アリスは自分の肩がどこにも見当たらないことに気が付いたのです。アリスは下を向いてみましたが、まるで青葉の海原から伸びる茎のような、途方もなく長い首が見えるだけでした。

「あの青いのは何だろ」アリスは言いました。「それにあたしの肩はどこに行っちゃったんだろう。それに、ああ、あたしの可哀相な手は、どうして見えなくなっちゃったのかなあ」
アリスはそう言いながら手や肩を動かしていましたが、遠くの青葉が少し動くだけで、それ以外には何も起こりませんでした。

 どうやっても、手を頭の方へ持って来られそうもないので、アリスは逆に、頭を手の方へ持って行くことにしました。試しに頭を下げてみると、自分の首がヘビのように、どんな方向にもぐにゃぐにゃと曲がることが分かりました。アリスの頭は優雅な曲線を描きながら、葉と葉の間を滑り降りて行きました。その青葉は、さっきまで自分がさまよっていた森の木々だったのでした。

 いきなり、シューッという鋭い音がしたので、アリスは首を引っ込めました。大きなハトがアリスの顔に向かって飛んで来て、羽根でアリスの顔を激しくぶちました。
「ヘビだ!」ハトが叫びました。
「ヘビじゃないわよ!」アリスは憤慨して言いました。「ほっといてよ!」
「でもやっぱりヘビだわ!」ハトは繰り返し言いましたが、もっと押し殺したような、すすり泣くような口調でこう付け加えました。「色々と試してみたんだけど、やっぱりヘビとは合わないのよねえ」
「何のことを言っているのかさっぱり分からないわ」アリスは言いました。
「木の根っこも、土手も、生け垣も、全部試してみたわ」ハトはアリスを無視してしゃべり続けました。「でもあのヘビたちと来たら! どうやったって、ヘビたちを満足させることなんかできやしないわ!!」






つぎのページへ




Welcome to WONDERLAND(目次)へ