なんてことを言っている間に、アリスはきれいに整頓された小さな部屋に来ていました。窓のそばにはテーブルがあって、その上には(アリスが期待したとおり)扇子と2、3組の白いキッドの革手袋が乗っていました。アリスは扇子と1組の手袋を取ると、そのまま部屋を出て行こうとしました。

 その時、鏡のそばに置いてある小さなビンがアリスの目に留まりました。今度は「飲んでね」と書かれたラベルは貼ってありませんでしたが、アリスはフタを開けてそれを口に持って行きました。「きっと面白いことが起こるわ」アリスは言いました。「あたしが食べたり飲んだりするといつもそう。これを飲んだらどうなるのかな。また大きくなれたら良いんだけど。だってこんなに小っちゃいのはもう飽きちゃったもん」

 全くそのとおりになりました。それも、アリスが期待していたよりもずっと早く。ビンの中身を半分も飲まないうちに、アリスは、自分の頭が天井をぐいぐい押していることに気が付きました。身をかがめないと、首が折れてしまいそうです。アリスはあわててビンを置いて、自分にこう言いました。「もういいよう。これ以上大きくなりたくない。これ以上大きくなったら、この部屋から出られなくなっちゃうもん。あんなに飲まなきゃよかった!」


 ところがもう手遅れでした。アリスはどんどんどんどん大きくなり、あっという間に床に膝をつかなければなりませんでした。そして次の瞬間には、その姿勢もきつくなっていました。アリスは横になり、肘をドアにつけて、もう一方の腕を自分の首に巻いてみました。それでもまだまだ大きくなり続けるので、最後の手段として、アリスは片腕を窓から出し、片足を煙突に突っ込んでみました。「もうこれ以上何もできないわ。あたし、一体どうなっちゃうんだろう」

 幸いにも、小さな魔法のビンの効き目もそこまででした。アリスはもうそれ以上大きくならずに済みました。でも相変わらず窮屈で、しかもアリスは2度と部屋を出ることが出来そうにありません。アリスがみじめな気持ちでいたのも無理はありません。







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