「お家にいた方がよっぽど楽しかったな」かわいそうなアリスは思いました。「家にいれば、大きくなったり小さくなったり、ネズミとかウサギとかにお使いをさせられることもなかったのに。あのウサギの穴になんか入らなければよかった。だけど....だけど....こんな生活ったら無いわよね。あたし、本当にどうしちゃったんだろう。おとぎばなしを読んでたころは、こんなこと起こるわけないって思ってたのに、今はそのお話の中にいるんだもん。あたしのことを書いた本があっても、ちっとも変じゃないわ。あたし、大きくなったら絶対に書くわ。でも、もうこんなに大きくなっちゃったけど」そして悲しげにこう付け加えました。「ここじゃ、もうこれ以上大きくなれないし」

「でも」アリスはまたまた考え始めました。「あたし、もうこれ以上年を取らないのかしら? それなら、ある意味、気が楽だわ....おばあさんにならなくて良いんだもん....でも....そうなったらずーっと勉強しなきゃいけないのかなあ。そんなの、いやだ!」 「アリス、お前は何てお馬鹿さんなの?」アリスは自分にそう答えました。「こんな所でどうやって勉強ができると言うの? この部屋はお前には狭すぎるし、教科書を置く場所だってないじゃない」

 アリスは1人2役でしゃべり続けました。それはとてもきちんとした会話になっていました。だけど、数分後、外から声が聞こえてきたので、アリスは話すのをやめました。

「メアリーアン! メアリーアン! 今すぐ手袋を取って来なさい!」階段の方からぱたぱたという足音が聞こえて来ました。アリスは、白ウサギが自分を探しに来たことが分かったので、家がぐらぐらと揺れるほど身震いをしました。今では自分がウサギの千倍も大きくなっていて、ウサギを怖がる理由なんかどこにもないことを、すっかり忘れてしまっていたのです。

 すぐに白ウサギは部屋の入り口まで駆け上がり、ドアを開けようとしました。だけどドアは内側に開くようになっていたし、しかもアリスの肘がぎゅうぎゅうとドアを押していたので、その試みは失敗に終わりました。ドアの向こうからウサギのひとりごとが聞こえて来ました。「仕方ない。まわって窓から入ろう」

「そんなこと、できっこないわ!」アリスは思いました。ウサギが窓の下に来たころを見計らって、アリスはいきなり腕を伸ばして空中を一つかみしました。アリスは何もつかむことができませんでしたが、小さな悲鳴と何かが落ちる音、それにガラスが割れる音が聞こえて来ました。その音からアリスは、どうやらウサギがキュウリの温室か何かに落ちたらしい、と思いました。






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