最初に、円に近い形のコースを地面に描きます(「きちんとした円形である必要はない」とドードーは言いました)。それから参加者全員がコースのあちこちに立ちます。「1, 2, 3, ドン!」という掛け声もなく、各自、好きなときに走り出して好きなときに走り終えるのです。ですから、いつレースが終わったのかよく分からないのです。

 しかしながら30分ほど走ったころ、みんなの体は元どおりに乾いたのでした。ドードーは突然叫びました。「ゴールイン!」みんなはドードーの周りに集まり、息を切らせながらこう言いました。「で、誰が優勝しんたんだい?」

 さすがのドードーも、この質問にはなかなか答えられませんでした。長い間、人差し指を額に当てて(ほら、肖像画でシェークスピアがこんなポーズをしてたでしょう?)、座って考え込んでしまいました。みんな静かに待っています。ついに、ドードーは言いました。「みんな優勝だ。だからみんながご褒美をもらうのだ」

「でも、誰がご褒美をくれるのさ?」みんな大騒ぎです。「それは、もちろん彼女だ」ドードーはアリスを指差して言いました。みんなはすぐにアリスを取り囲んで、少し戸惑いながらも「ご褒美! ご褒美!」と叫びました。

 アリスはどうしたら良いか分からず、必死になってポケットの中を探し、アメの箱を取り出しました(幸運にも、箱の中には塩水が入っていませんでした)。アリスはご褒美としてみんなにアメをくばりました。ちょうどみんなに1つずつあげることができました。

「でも、この子もご褒美をもらうべきだよね」ネズミが言いました。「もちろんだとも」ドードーは重々しく答えました。「他に何かポケットに入っているかな?」ドードーはアリスに向き直ってききました。
「指貫だけしかないわ」アリスは悲しげに言いました。「どれどれ、貸してごらん」ドードーが言いました。

 もう一度、みんながアリスの周りに集まりました。ドードーは儀式ばった様子で、アリスに指貫を手渡しながら、こう言いました。「我々は、あなたが、この麗しき指貫を受け取らんことを、心より願います」この短いスピーチが終わると、みんな一斉に拍手をしました。

 アリスには、この儀式がとてもばかばかしいことのように思えました。だけど、周りのみんながとても真面目な顔をしていたので、笑うのを我慢しました。アリスは何と言って良いのか分からなかったので、丁寧にお辞儀をして指貫を受け取り、真面目な顔をしていました。






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