第2章 涙の水たまり







「クリビツテンギョー」とアリスは叫びました(この時アリスはとっても驚いていたので、「びっくり仰天」という正しい言葉を忘れて、こんなことを言ってしまったのでした)。「今度はあたし、今まで見たことが無いほど大きな望遠鏡みたいに、背がぐんぐん伸びてるんだわ! あたしの足さん、さようなら!」(だってアリスが自分の足元を見たら、もう見えないほど足が遠くなってしまっていたのです)「あたしのかわいそうな小さな足さん。靴と靴下は誰がはかせてくれるの? あたしにはできないわ。だって面倒を見るには遠すぎるもん。自分で何とかうまくやって。もちろんあたしも親切にしてあげるけど....」アリスは思いました。「でももしかしたら、お前はあたしが行きたい方向に進んでくれないかもしれないわね。だからあたしは毎年クリスマスに新しいブーツをプレゼントすることにするわ」

 そこでアリスは、どうやったら自分で自分の足の面倒を見られるか、真剣に考え始めました。「やっぱり配達人に頼まなきゃ。でも、自分の足にプレゼントを送るなんて、なんか変な感じよね。それに、宛名だってとっても変だわ」

 ストーブ県
  ジュータン村
   アリスの右足様
    (アリスより愛をこめて)

「あら。あたしったら何て馬鹿なことを考えてるんだろう」

 ちょうどその時、頭が広間の天井にぶつかりました。アリスの身長は9フィート(約2メートル75センチ)よりも大きくなっていたのです。アリスはテーブルの上の金色の鍵を手に取ると、庭園へ続くドアへと大急ぎで向かいました。

 ところが、あーあ、アリスは何てかわいそうなんでしょう! 今度は大きくなり過ぎて、とてもドアを通り抜けることなんてできません。せいぜい横になって、片目でドアの向こうの庭園を眺めるのがやっとのようです。アリスはその場にしゃがみこんで、またまた泣き出しました。

 「恥ずかしいと思わないの」アリスは言いました。「あなたみたいに大きい子が」(確かに“大きい”ですよね)「こんなにびーびー泣くなんて! 今すぐ泣きやみなさい!」それでもアリスは泣きやまず、何10リットルもの涙を流しました。涙はアリスの周りで、深さ4インチ(約10センチ)もの大きな大きな水たまりとなって、広間の半分近くにまで広がりました。

 しばらくすると、遠くからぱたぱたという足音が聞こえて来ました。アリスは何が近付いて来るのか見ようと、涙をぬぐいました。






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