小さなドアの前に立っているだけじゃ何も起こりません。アリスはさっきのテーブルに戻って、他の鍵がないか、あるいは望遠鏡のように人間が縮む方法について書かれた本がないか、探してみました。そして、今度は、テーブルの上に小さなビンがあるのに気が付きました(「さっきはこんなの無かったはずだわ」とアリスは言いました)。ビンの口の近くには紙のラベルが貼ってあって、ラベルには「飲んでね」と大きな字で美しく印刷されていました。

 「飲んでね」は良いのですが、かしこいアリスはすぐには飲みませんでした。「とりあえず、よーく見てみなくちゃ」アリスは言いました。「まず、『毒薬』って書いてないか見なきゃね」なぜならアリスは、やけどをしたり、野獣に食べられたり、その他のいやな出来事にあった子供たちのお話を読んだことがあったらからです。子供たちがそういう目にあうのは、せっかく教えてもらったとても単純なルールを思い出さなかったからです。例えば「真っ赤に熱した火かき棒を長いこと持っているとやけどをするよ」とか「ナイフで指を深く傷付けると血が出るよ」とか。だけどアリスは、『毒薬』と書いてあるビンの中身をごくごくと飲み干すと、遅かれ早かれ体がおかしくなることを、決して忘れていなかったのです。

 だけどこのビンには、どこにも『毒薬』と書かれていませんでした。アリスはビンの中身を思い切り飲んでみました。それは、意外にも、とても美味しかったのです。(それは、チェリータルトとカスタードとパイナップルとローストターキーとタフィーとバターつきトーストを混ぜたような味がしました)アリスはすぐにそれを飲み干してしまいました。

 「変なの! なーんて変てこりんな気分なんでしょ!」アリスは言いました。「きっとあたし、望遠鏡みたいに縮んでるんだわ!」

 まさしくその通りでした。アリスは身長が10インチ(約25センチ)になっていました。アリスの顔は喜びにパッと輝きました。だって、今ならあの小さなドアをくぐりぬけて、さっきの素敵な庭園に行けるのですから。

 まずアリスは、自分がどのくらい縮むのかを見るために、何分か待ってみました。アリスはちょっと不安だったのです。「このまま小さくなったら」アリスは言いました。「ロウソクみたいに消えてなくなっちゃうのかなあ。そうしたらどうなっちゃうんだろう」そこでアリスは、ロウソクが消えた後、炎がどう見えるかを一生懸命に考えてみました。だってそんなもの、今まで一度だって見たことがなかったのですから。






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