アリスはどこもケガをしていませんでしたので、すぐに立ち上がりました。上を見上げてみましたが、やはり真っ暗で何も見えません。アリスの目の前には長い長い通路があって、白ウサギが慌てて駆けて行くのが見えました。ぐずぐずしている暇はありません。アリスは突風のように白ウサギを追いかけました。そして、白ウサギが角を曲がりながら「なんてこった! こんなに遅くなっちゃった!」と言うのが聞こえました。アリスが角を曲がったときには、もう白ウサギに追いつくところだったのです。ところが、すでに白ウサギの姿はどこにも見当たりませんでした。アリスは、細長く天井の低い広間にたどり着きました。広間は天井からぶら下げられた一列のランプに照らし出されていました。

 広間のすべての壁にドアがありましたが、どれも鍵がかかっています。アリスは広間の壁に沿って歩き、別の壁の方も歩いてみて、すべてのドアを開けてみようとしました。しかし、ドアにはすべて鍵がかかっています。アリスは悲しそうに広間の真ん中まで歩いて行って、どうやったらここから出られるか考えました。

 突然、アリスは3本脚のテーブルにぶつかりました。それはかたいガラスだけで作られたものでした。机の上には小さな金色の鍵が乗っていました。アリスはまず、この鍵が広間のドアのどれかに合うんじゃないかな、と思いました。ところが、あーあ、鍵穴が大きすぎるのか、それとも鍵が小さすぎるのか、とにかくこれではどのドアも開きそうにありません。ところが、念のために改めて広間の壁に沿って歩いてみたところ、さっきは気が付かなかった低いカーテンがあることにアリスは気が付きました。そしてそのカーテンの陰には、15インチ(約40センチ)くらいの小さなドアがあったのです。アリスは小さな金色の鍵を鍵穴に入れてみました。やった! ぴったりです。

 アリスがドアを開けてみると、その先には、ネズミの穴ほどの大きさしかない細く小さな廊下がありました。アリスは膝をついてドアの向こうを見てみました。廊下の先には、今まで誰も見たことのないようなきれいなきれいな庭園が広がっているではありませんか。

 アリスは、この暗い広間を抜け出て、色鮮やかな花壇や冷たい噴水の周りをぶらぶら歩きたいと、どんなに願ったことでしょう。だけど、ドアが小さすぎて、頭を通すことさえできません。「もし頭が通ったとしても」かわいそうなアリスは思いました。「肩がひっかかったら、どうにもならないな。あーあ。体を望遠鏡みたく小さくできたらいいのに! もし縮み方の最初の部分が分かれば、できるような気がするんだけど」これまでたくさん変なことが起こっていたため、アリスは、自分にできないことなんかいくつもないんじゃないかな、と考え始めていたのです。








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