---えどめぇるまがじん・コラム---

     読売         

江戸前な言葉たち
 
 

その4 江戸っ子の地口

<文:青木逸平>

     浮かれ芸       
 今回はちょっと趣向を変えて、「地口(じぐち)」というものについて。
 地口は、まあ語呂合わせ・しゃれといったところです。フーテンの寅さんの口上「見上げたもんだよ屋根屋のふんどし」もその一種です。江戸っ子はこうした言葉遊びが大好きで、日常茶飯、のべつまくなし使っていました。これをマスターすれば、あなたのしゃべりはすっかり江戸前。いくつか例をあげてみましょう。
 まず、語呂合わせ・語調的なもの。「驚き桃の木山椒の木」「おっと合点承知之助・承知木かちかち」「平気の孫衛門(平左衛門)」「知らぬ顔の半兵衛」「大きにお世話お茶でも上がれ」「こっちにきなこ餅」等々。
 次はなぞなぞ風。「薬缶のタコで手も出ない」「麻布で気(木)がしれねえ」(六本木というのに木が生えていないことから)「焼けた稲荷で鳥居(とりえ)がない」等。
 掛け詞、これが一番地口らしい。「恐れ入谷(いりや)の鬼子母神」「そうか(草加)越谷千住の先」「その手は桑名(くわな)の焼き蛤」「腹が数寄屋橋」「おお臭え、汗臭(浅草)観音」……。
 言葉というのは相手と共通の土台がないと使えないものですから、今これをやると、ただ怪訝な顔をされるか、ダジャレずきのオヤジと思われるだけかもしれませんが……。

     わりばし        びろ〜ん      んべ〜       
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